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『星の旅人』サンチャゴ巡礼道への憧れ

★「7日間ブックカバーチャレンジ」★ 3冊目
『星の旅人』 黛まどか著

1999年の五月から七月までの約2ヶ月間のサンチャゴ巡礼の旅エッセイ

サンチャゴ巡礼道は、フランスのサン・ジャン・ピエ・ド・ボーからスペインのサンティアゴ・デ・コンポステーラまでの約800キロに亘る聖地巡礼の道

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この聖地巡礼の旅を綴った小説『星の巡礼』を読んだ世界中のカトリック信者が、このサンチャゴ巡礼道に憧れ、最終地点のサンティアゴ・デ・コンポステーラにある大聖堂、聖ヤコブが眠る墓への巡礼の旅を目指している。

俳人の黛まどかさんは、カトリック信者ではないが、同じように『星の巡礼』の小説に憧れ、この小説を追体験するためにサンチャゴ巡礼の旅の記録を綴ったのがこの本だ。
日本での巡礼といえば、お遍路さん(お大師さま、空海への御礼参り)をすぐ思い出すが、これも真言宗の人だけがやっている訳ではない。古くは、松尾芭蕉が行った『奥の細道』も巡礼の旅であったようだ。

俳人の黛まどかさんが、このサンチャゴ巡礼に憧れたのもよく分かる松尾芭蕉とも重ねたことも。僕自身が、黛さんの『星の旅人』を読んで、この遥か彼方の地の巡礼に憧れるように。
まさに、黛まどかさんは、『星の巡礼』の小説を追体験し、自分の体験として『星の旅人』を書き下ろし、私たちを旅に誘ってくれているのだ。

この旅エッセイには、何よりもサンチャゴ巡礼の道が、どれだけ素晴らしいかを彷彿させる景色の描写が出てくる。黄金に輝く一面の小麦畑や、その小麦畑の間を一本真っ直ぐに通る巡礼の道。全ては、サンティアゴに通じている道。

サンチャゴ巡礼道

更に、ピレネー山脈の険しさとそれを乗り越えた頂きからの壮大な風景、巡礼の道の後ろ(東)には太陽が昇り、目指す西には、月が残っている。どんなに素晴らしい景色なのだろうか。一生に一度は体験してみたい。


ただ絶景だけではなく、落雷や雨の中を歩く厳しさや、目的の宿泊地までに体力が持たずに野宿を覚悟して、他の巡礼者に助けれられた話。同じ巡礼者の詩人に声をかけられ、お互いに俳句を交わした話。足の肉刺(マメ)が限界にきて一歩手も進めず立ち止まっていると医者の巡礼者が肉刺の手術をしてくれたり、宿泊先の修道院で一期一会の宴会で楽しんだり、そんなエピソードが、巡礼の旅として記録されている。

約2ヶ月間の巡礼の道の中で、男女が出会い、恋に落ちるが、それぞれに家族がいて巡礼の旅の終わりに、これからの人生を嘆く映画のような二人の場面なども。

最終地のサンティアゴ・デ・コンポステーラで巡礼の旅を終えた旅人は、そこから90キロ先の地の果てと言われる場所で、巡礼を共にした靴や荷物を全て、その海に投げ捨てるのが千年の習わしになっているそうだ。
黛まどかさんも、同じように靴と杖を海に投げ捨て、小枝を集め火を炊き、携えていた『星の巡礼』とずっと旅の間に着ていた服を焼いたと書かれている。

全ての巡礼者にとって、この巡礼の旅の終わりから、新しい旅が始まるのだろう。

いつか、このサンチャゴ巡礼道に行って、小説のようには書けないけど、人生の旅の記録を書いてみたい。


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