移住という欺瞞性マンセー

 全国の市町村が移住・定住促進施策の一環として動画やウェブサイトを製作し、首都圏やオンラインで相談会やセミナーを開催していますが、成功といえる取り組みは少なく、大多数はターゲットとなる人を動かせていないと思われます。河内長野市にとって、住む、働く、食べるの分野でゼロから「選ばれる都市」となるのは本当に難しいというのが実感です。
 そう。ゼロからは難しい。どのようなビジネスでも、新規顧客の獲得より既存顧客のリピート率向上のほうがコストパフォーマンスがよい。実際、ターゲットである「移住者」という言葉の定義は様々ですが、これを「居を移した人」だと定義すれば、その多くが「親や親戚が住んでいる」「土地や家がある」といった血縁や、「友人や知人がいる」「住んでいたことがある」「職場へ通っていた」といった土地勘や地縁など、事前に地域と何らかの関係があった人だと思われます。
 そのような元々から縁を持った人を移住させる(=呼び戻す)には、親や親戚や友人からのお誘い(=情報提供)が最も確実です。なぜなら、そのような移住者は「移住サイト」「空き家バンク」「役場のウェブサイト」などから得た情報よりも、縁から得た情報に基づき行動を決定すると考えられるからです。
 そこで、首都圏在住者を遮二無二ターゲットとするのではなく、現在すでに河内長野市に居住している親・親戚、知人・友人をターゲットとし、彼かに「帰っておいでよ」と言わせる、「帰ってきたほうがいいよ」と思わせる、もしくは「遊びにおいでよ」と言いやすい環境を整備することが、移住・定住促進施策の成功への近道であると思います。
 ターゲットとなる既存顧客は、何を求めているのか、何をお知らせすれば実際の行動(=家族や友人を呼び寄せるまたは呼び込む)に出るのか、どんな働きかけ(=広報・プロモーション)が有効なのかを改めて考え直すことが必要です。打てば響くのですからこんな易いターゲットは他にはありません。
 世の中、何もしなければ「水は低きに流れ、人は易きに流れる」ものです。河内長野市の職員にアイデアや人材がないからといって、広告代理店やプロモーション事業者への発注を誘発するのではなく、住民とのコミュニケーションをより深め、都市の内面や現場を改めて見直し考え直すことで、結果としてひとの流れも変えることができるのではないかと思いますがどうでしょうか。
 いやぁ、そんな甘い話ではないよと言うのであればそうかもしれませんし、私一人でやれることでもありませんし、地域参画総量とかいって数字で測れるものか分かりませんし、全国的な目立った取り組みにはならないし、ここで書いた理念なんて否定はいくらでもできるんですけど、それなら気の利いたオルタナティブもってこいよ!