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マレーシア1人旅で起きたトラブルから「人様に迷惑をかけてはいけない」を考えてみた

マレーシアから帰国して、まだ48時間もたっていない。頭の中はまだマレーシアにいるようで、今日はスーパーで思わず「ソーリ―」が出てきてしまった。せっかく日本に帰ってきたというのに、ランチにインディアンカレーを選択してしまう始末。

今回は4年ぶりの海外、さらに15年ぶりの1人旅だったのでドキドキした感情をまだ楽しみたいのかも。


「旅にはトラブルがつきもの」とは言うけれど、実際今まで15か国の旅行では何もなかった。だから今回も何もなく終わるだろうと思いつつ、でもどこかトラブルを期待する自分もいる。「ネタ的にトラブルっていいな」なんて考えてたら本当にトラブルだらけの旅となった。

ホステルの部屋から閉め出される

マレーシアの首都、クアラルンプールから飛行機で1時間のペナンという街まで足を延ばした。クアラルンプールで贅沢なホテルに泊まったので、ペナンでは安くすませようとホステルに滞在。

ホステルと言っても、私は個室を予約したのでプライベート空間が保たれている。トイレやシャワーだけが共有となっており、キレイに掃除がされていたのでこちらも申し分ない。十分に快適ではあったが、ホステルのつくり自体はとても古かった。部屋のカギは丸ノブについた内カギを手動でぐるっと回して施錠するタイプ。最近ではほとんど見かけないタイプだ。

このカギが私を苦しませることになる。

部屋でホッと一息つき、街の散策に出よう。その前にトイレを済ませておこうと部屋を出た。部屋に戻ってみると、扉が開かない。トイレだけのために部屋を出たので内カギもかけていないわけだが、どういうわけか押しても引いても開かないのだ。そもそもドアノブがピクリとも動かない。理由はわからないが、どうやら内カギが掛かってしまったよう。

実はこのホステル、セルフチェックインの形式で、助けを求められる従業員は常駐していない。他の宿泊者がいる様子もない。自分1人でなんとかするしかない状況。まさにピンチとはこのことだ!

しかし、扉はかなり旧式のタイプ。針金か何か細いものをカギ穴に通して、適当に回せば開くだろう。そう思い、ホステル内の共同キッチンや、共有スペースを漁りまくった。カメラで見られてたら完全アウトな不審行為であったことは間違いない。

偶然にも大量のカギが入ったペン立てを見つけ、そのすべてのカギを自分の部屋の扉で試してみた。まっっったく動きやしない。こんなときにスマホさえあれば、予約サイトを通して従業員に連絡ができるのだが、それも選択肢にはない。トイレに行っただけだもの、スマホも何も手元にはない。

こうなったら助けを探すしかない!というわけで隣の部屋をノックしてみた。すると1人のアジア人女性が出てきてくれた。部屋の中の様子をのぞき込んでみると、2段ベッドが2台あるがどうやら部屋にいたのは彼女だけのよう。

事情を説明し、代わりに従業員へ連絡してもらえないかお願いしてみる。彼女は快く受け入れてくれ、従業員も10分しないうちに来てくれた!

あっけなく解決。必死にもがき、冷や汗がとめどなく流れ出したけれど、書き起こしてみると、なんら大したことはない。必死だった自分からすると実に虚しいが、異国の地で起きるトラブルというのは、些細なことでも不安が倍増するものなのだろう。

日本にいたらこんなにも不安になることもなく、こんなにも人の助けに感謝することも少ない。

タイ人のパンちゃんに心を持って行かれた

無事に部屋の扉は開き、これだけでも私は嬉しくて泣きそうになっていたのだが、さらに先ほどの彼女が話しかけてきてくれた。

「私は1人で来ていて、先ほど到着したばかりなの。もしあなたも1人なら一緒に観光しない?」

なんと嬉しいオファー!!
旅の終盤をむかえていた私は、そろそろ誰かと話しながら旅を楽しみたいと思っていた。二つ返事で彼女のオファーにのり、急いで支度をした。

パンと名乗ったタイ人の彼女は、週末だけ時間が空いたので、初めてのマレーシアを訪れていた。私が自分で自分を閉め出す30分前、ホステルに到着したばかりだった。

「あなたがまだ行ってない場所でどこか行きたいところがあるなら、そこに行こう」

優しい!彼女のオファーすべてが優しすぎる!

割としっかり観光をしてしまった私は、特別行きたい場所を答えるのに困った。すると即座に「もしよければ…」と第2の提案を出してくれる。

もう彼氏にしたい!

結局、彼女が翌日の朝行こうとしていたペナンヒルという丘へ、サンセットと夜景を見に行くことに!

「本当は明日の朝行きたかったんだよね?ごめんね。予定変更させちゃって」と誤りをいれた。私が邪魔してしまったんじゃないかという思いがどこかにあり、なんだか申し訳なくなったから。というのも、すでに時刻は17時を回っており、私たちがペナンヒルに到着する頃には、いくつかのお店が閉店してしまう。隅々楽しみたいのであれば、翌日の朝の方がベストなはず。

しかし彼女は「明日は日曜の朝でしょ?絶対に混んでいたと思うから今日でよかった!それに夜景もキレイだと思うから!」とポジティブレスを返してくれた。

その後も彼女は「1人じゃ写真撮れないよね」と言い、頼んでもないのにパシャパシャ私の写真を撮ってくれる。

まだ20歳の彼女にすっかり心を奪われてしまった。

彼女とはFacebookやInstagramを交換し、「これからもよろしくね」と言い合った。

新たにタイ人の友達が私の人生に加わった瞬間。すべてはトラブルから起きたこと。あのとき、部屋をノックせずに自力で解決してしまっていたら、彼女が私のFacebookに友達として追加されることはなかっただろう。(まあ自力で解決する策なんて思いつかないわけだけど。)

トラブルは悪いことばかりじゃない。

「人様に迷惑をかけてはいけない」は善なのか

このエピソード以外にも、何度となくやらかしており、その度に助けてもらった。そして毎回全力の「サンキュー」を伝えた。

日本に帰ってきて思う。こんなにも全力の「ありがとう」を言っていただろうかと。

日本では「人様に迷惑をかけてはいけない」という風潮が強いように思う。

本当に迷惑なのだろうか?
人に助けを求めることは悪いことなのだろうか?
助けた人は本当に迷惑と感じているんだろうか?

そんな疑問が湧いてくる。
海外でたくさん助けてもらい、友情も生まれた今、私はもっと人に頼りたい気持ちになっている。異国の地でトラブルに遭遇することがどれほど不安かも痛いほどわかり、もっと自然と手を差し伸べる自分になれそうだ。

しかし日本人に対しては時折、助けようとすることをためらってしまう自分がいる。これもまた「人様に迷惑をかけてはいけない」がよぎるから。「手伝ってあげたいけど、迷惑だったらどうしよう」そんな思いが邪魔をする。

手伝おうとしたら断られたこともある。きっとあの人も「人様に迷惑をかけてはいけない」があったのだろう。

日本には「困ったときはお互い様」という美しい文化もあるのに、なぜか最近は「人様に迷惑をかけてはいけない」の方が強いような気がする。

寄付ランキングが低いせいで「世界一冷たい国」なんて言われることもある日本だが、絶対にそんなはずはない!ただ「人様に迷惑をかけてはいけない」が邪魔をしているだけ。本当は「困ったときはお互い様」な日本人なのだから。「世界一あたたかい国」に決まっている。

#やさしさに救われて

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