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美味しいうどんが普通のうどんに変わった日

出社していたとある日、お腹が減ってきたので、ランチへ行くことにした。時計は、15時を過ぎている。

どこに行こうかと迷う。なぜ迷うかと言うと、今春に職場が外苑前に移転したのだ。神宮球場と国立競技場が目の前の場所だ。そんな立地では、気軽に行ける飲食店がたくさんあるわけはない。店は少なく、単価はもちろん高い。

「あ、いちょうを見にいきながら、ランチへ行こう」と思い、最近、銀杏並木が近くにあるのに気付き、青山一丁目駅にある、うどん屋さんに行こうと決めた。

いちょうと言うのは、外苑前の銀杏並木である。


Googleマップを見ながら、神宮のゴルフ場に沿いに歩く。

「あぁ、ここが都内で一番高いと言われる神宮の打ちっぱなしか」「どんな金持ちがここで打ちっぱなすんだろうな」と想像しながら、駐車場を覗くと、車を全く知らない僕でも、「明らかに高そうな車が多いな」と思った。

少し歩くと、目的の銀杏並木に着いた。「おぉ、いちょうが黄色で綺麗だ」と思うも、僕の目的はランチのうどんなのだ。

記念写真を撮っている人たちを、恐らく銀杏並木最速のスピードで歩いて行く。歩きながらも、いちょうと人間観察は忘れない。

どうやら、記念写真を撮っている半分は、外国人の方だ。ほぼ東南アジアの方である。

見分け方は顔でもわかるのだが、東南アジアの方は、マスクを外し完璧なポーズで、相方に写真を撮ってもらっている。

対して日本の方は、落ちた綺麗ないちょうを持ち、スマホのインカメで写真を撮っている。その半分は、いちょうとコーヒーカップで顔を隠しながらポーズをしている。

高速で人をよけながら、「どっちがインスタで映えるのだろうか?」と考えながら歩く。

半分程歩いたところで、あまりにもいちょうの黄色が綺麗なので、写真を撮ってみた。おっさん1人で止まって撮るのは恥ずかしいので、歩きながら撮った。

写真はこちら。全く黄色くない。写真の難しさを痛感する。

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僕の目には、これくらい黄色く見えていた。

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銀杏並木を抜け、左に曲がり、青山一丁目駅に向かう。青山と青山一丁目の違いをよくわかっていないのだが、基本的に歩く全ての人がお洒落に見える。

ちなみに僕は、無印の黒のスキニー、グレーのパーカー、グレーのオニツカタイガーのスニーカーと、毎度のスタイルで、お洒落とは無縁で歩いている。

そして、目的地のうどん屋さんに着いた。

食べログ3.62の店。食べログユーザーの僕としては、疑う余地のない店である。以前に来たことがあり、当日は2回目だった。

15時を過ぎているので、お客さんはほとんどいない。

時間が遅いからか、てんぷらは無く、注文を受けてから揚げるとのこと。

「冷玉にナスとマイタケのてんぷらをお願いします」と注文。

先にお会計をしてから、席で待つ。レシートに書かれたナンバーを呼ばれ、うどんとてんぷらを取りに行く。

ちなみに、会計は920円だ。

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うどんに920円。一般的な感覚であれば、高いと思うだろう。僕も「うどんで920円は高いわ。でも、この土地では仕方ないよな」と思いながら、卓上にある醤油をかけ、うどんをすする。

「冷たっ!コシ強っ!」

2回目であるが、尋常でない冷たさとコシの強さである。これは、氷水でしっかりと丁寧に締めているうどんでないと、ありえない冷たさとコシだ。

僕は、蕎麦が好きで、立ち食いそばレベルであれば、家で安い乾麺のそばを自分で茹でた方が絶対に美味いと思う程、茹で方、締め方にはこだわりを持っている。

さらに、前職時代、香川県の坂出への出張を2年ほど定期的に行っていた為、本場の讃岐うどんのコシも知っている。

そんな僕でも親指を立てる程のうどんであり、そして、てんぷらが熱い!「お、ほふほふ、あちっ」「衣も薄くてサクサクだ」と思いながらてんぷらを食べるのである。もう、ビールを持ち込みたいくらいのクオリティーだ。

そんな、うどんとてんぷらなのだが、所詮はランチのうどんだ。うどんに920円は高いと思ってしまう。食べ終えた後に、僕は食べログに3.50と記入し、下書きボタンを押した。

これは、食べログの下書きを活用し、自分しか見ることの出来ない、通称てるログである。てるログ3.50のうどんを食べ、また銀杏並木を通り戻った。


そして、翌日。たまたまランチで、はなまるうどんに行った。たまたまと書いたが、「昨日高いうどん食ったから比較してみると面白いかもな」と思い、近くにあったので行ったのだ。

12時前に行き、温玉ぶっかけの冷やに、マイタケのてんぷらと唐揚げを注文した。昨日と同じナスのてんぷらにしようと思ったのだが、はなまるが唐揚げを押していたので、試しに食べてみることにした。会計は620円。

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1.5倍の価格差がある。「うどんで620円が安いとは思わないけど、都内でこれは安いよな」と思い、席に着きうどんをすする。

「ん、ぬるい、コシがない...」

いままで、はなまるうどんをまずいと思って食べたことはない。毎回「はなまるは安定して、うまいなー」と思って食べていたのだが、僕のベロは昨日の、青山一丁目うどんのベロになっていたのだ。

「え?はなまるってこんなクオリティーだったっけ?ということは、昨日のうどんがとんでもないクオリティーだったということか」と頭がパニックになる。

一旦落ち着こうと思い、マイタケのてんぷらを食べる。「ん、衣が分厚くてもモサモサしてるし、熱々ではないな」と、うどんと同じような感想を持つ。

うどんとてんぷらを食べ気付く。「昨日のうどん屋は圧倒的に美味かったんだな」「それが、はなまるの1.5倍の値段?感覚的には2倍でもおかしくないクオリティーの差があるわ」と考えた。

そう思い、昨日のてるログ3.50を、すぐに3.80へ変更した。さらに「ラーメンと同じと考えると、900円台のうどんはおかしくないよな」と、年々高騰しているラーメンと比較したりしてみた。


はなまるうどんがマズいわけではない。もちろん店ごとに、スタッフの技術差があり、提供するうどんのクオリティーも違う。(本当は違ってはいけないのだが)

それでも、圧倒的なうどんのクオリティーの差にびっくりした。

滝二時代に王会元さんが来てくれて、見本を見せてくれた時くらいびっくりした。「このデカいおっさん、めちゃくちゃ上手いやんけ!とんでもないおっさんだな!」と。

まさか、ランチのうどんを食っただけで、今までの価値観がひっくり返されると思わず、びっくりしたのだった。



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