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2021年入院日記(回復期:7日目)

これは、脳梗塞を発症した自分の記録を思考が明確なうちに残しておこうというのが目的である。

7月7日(水)、曇。今日は夕方に嚥下造影検査がある。前回は6月17日に杏林大学で行った。前回は、顔を横向きにしないと嚥下できない状況での検査だったのでとても辛かった。検査中に咽せて吸引しながらの検査であった。今日は朝食後に経管栄養を行った後、一旦経管チューブを抜去する(すでに昼食後の経管栄養は行っていないため)。経管チューブが検査の邪魔になるからである。検査結果次第で、再度経管チューブを入れるのか、今後の食事形態をどのようにするかが判断される。できればここで経管チューブを卒業したいというのが本音である…。

さて朝食後、予定通り、経管栄養を行い、終了後、看護師さんに経管チューブを抜いてもらった。ものすごいスッキリ感。喉の違和感もなくなり、嚥下もスムーズにできる気がする。入院した6月5日から33日間、よくこんなチューブを鼻から胃に入れていたものだ。途中、6月21日細い径のチューブに交換したが、抜去したチューブの先端の方の胃に入っていた部分は、胃酸の影響で黒く変色していた。でもこのチューブがなければ、嚥下のできなかった自分は栄養補給も水分補給もできず死んでしまう訳で、まさに命綱であった。経管チューブよ、ありがとう。顔がスッキリしたところで、洗顔料でゴシゴシ顔を洗い、ヒゲを剃った。なんと気持ちのいいことか…。あとは午後の嚥下造影検査の結果次第で経管栄養チューブに逆戻りということもあるので、まだぬか喜びの状況ではある。

今日は七夕ということで、通常の病院食のランチはそうめんであった。今の自分にとって、周りで麺類を食べられるのは拷問である。絶対、自分は我慢強くなっていると感じる…。そのような中、七夕ということです特別にゼリーが供されたというだけで、なぜこんなにうれしいのだろうか…。

午後のリハビリでは、リハビリテーション室のテラスでOTのお姉さんとキャッチボールをした。最初はうまくボールが取れず失調の影響かと思ったが、続けるに従い慣れてきた。ボールが自分の右側に飛んできた時に、右脚を踏み出してキャッチするのだが、この時右脚の踏ん張りが今一つ効かないのは、右半身の麻痺の影響であると思われる。

入浴後、嚥下造影検査に呼ばれた。嚥下造影検査を受ける人は5人いて、自分は5番目であった。医師、放射線技師、看護師、言語聴覚士らで7〜8人いたので、緊張してしまった。前回杏林大学で受けた時は甘苦い味のする造影剤を使用していたが、今回はバリウムを使用した。

まずは現在、食事の時に飲んでいる(スプーンで掬っている)お茶と同じとろみ段階Ⅲ(病院ではとろみの設定がⅠからⅢあって、Ⅲが最もとろみが付いている)のバリウム3ml、続いて5ml嚥下した。5mlは今の自分にとっては量が多かったが、なんとか嚥下できた。ここでわかったのは、顔は正面を向いて嚥下できているが、喉の真ん中ではなく左側を通過しているということであった。次いでとろみ段階Ⅱのバリウムを3ml、5mlの順で嚥下した。とろみ段階Ⅲよりも少しサラサラなので不安だったが、咽せることなく嚥下できた。さらにバリウム入りのゼリー、バリウム入りのツナと続く。ゼリーは比較的すんなり嚥下できたが、X線画像を見ると喉に少し残っており、自分でもそういう自覚があるので、数回嚥下を繰り返して食道に流れていくという感じであった。一方、ツナはパサパサなので嚥下はできたものの、画像上も自覚的にも結構喉に残っており、何度も何度も嚥下を繰り返して、さらにとろみ段階Ⅱのバリウムを少し飲んで流し込むことができた。

嚥下食をほぼ正面を向いて食べることができているので、発症直後の状況から考えればかなり進歩しているつもりでいたのだが、喉の左側を通過していたこと(右側が使えていない)、ツナ程度のもので飲み込むことに苦労したことを考えると、これはある程度普通の生活に戻るのにはかなり時間がかかるのではないかという気がして、少しショックであった。まあ脳梗塞で嚥下中枢がやられたのだから、そう簡単に機能が戻る訳ないのだが…。

病室に戻ってしばらくすると担当のSTのお姉さんが来てくれて、今日の結果と今後についてお話をした。今日の検査結果から、①明日の昼食から、全粥ペーストを全粥(米粒のある粥)に変更、②明日の昼食から、お茶のとろみをⅢからⅡに変更、③経管栄養チューブは再挿入しない、ということが決まった。主食以外は引き続きペースト食が続くが、少しは進歩したと言ってもいいだろう。ただし、3食の全粥の量を今の1.5倍に増やしても1日に必要なカロリーが足りないということで、経管栄養で入れていた栄養剤にとろみを付けて飲まなければならなくなった。

夕方、院内で会う看護師さんの多くが、「鼻の経管チューブ外れてよかったね」と声をかけてくれる。みんな患者が少しでも良くなることを喜んでくれる。有難いことだ…。


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