40年前の超望遠レンズ
5月26日に皆既月食がある。今回は久しぶりに撮影をしようと考えたのだが、月や太陽は35mm版のカメラで撮影する場合、使用するレンズの焦点距離の約1/100の直径で撮像面上に結像する。すなわちかなりの長焦点レンズで撮影しないと、それなりの拡大された画像は得られない。
自分が初めて皆既月食を撮影したのは、1982年1月10日未明の皆既月食であった。初めて観た皆既月食で、満月が欠けていき皆既になった時、それまで月の明かりで見えていなかった星々が良く見えたのを思い出す。真冬の未明で春の星空だったので、かみのけ座が異様によく見えたことを思い出す。友人2人と町田市の戦車道路で観たのだった。中学2年生であった。ちなみに一緒に観た友人は、不慮の事故で二人ともすでに故人となっている。
この時は、天体望遠鏡を使って撮影した。当時使用していたVixenのポラリス80Mという8cm屈折赤道儀で、焦点距離が910mm、明るさはF11.4、直焦点で撮影した。ISO100のフィルムを使うと皆既中は30秒ほどの露出時間が必要となり、ガイド撮影をしたのたが、赤道儀に極軸望遠鏡もモータードライブも付いておらず、うまく撮影できなかった。
同じ年の12月30日にも皆既月食があったが、この時は曇りで見ることができなかった。
その後、高校時代の1985年10月29日の皆既月食も天体望遠鏡で撮影した。この時は高橋製作所のFC-76という蛍石を使用した口径76mmの屈折望遠鏡を使用した。当時話題となっていたフローライトアポクロマートを使用した光学系で、焦点距離は600mmで明るさはF8、素晴らしい性能であった。ガイド撮影でうまく撮影できたが、焦点距離が600mmの直焦点だとフィルム面上の月の直径は6mmなので、やや物足りない感じがした。
その後、天文からは離れ、大人になって天体現象もあまり見なくなってしまったが、2018年1月31日の皆既月食は撮影した。この時は娘のオリンパスペンデジタルに75-150mmのズームを使用した。マイクロフォーサーズなので換算で300mm相当、拡大率には不満はあるが遊び気分で撮影した。
カメラを三脚に固定していとも簡単に撮影することができた。最近のデジタルカメラは感度を上げてもそれほど荒れないので、中学生や高校生の頃の苦労は何だったのだろうと悲しくなってしまった。
そして今回の5月26日、EOS Rで撮影しようと思ったのだが、長い玉がない。手持ちのレンズで一番長いのは200mmだ。高校時代使用していたFC-76を引っ張り出してもいいのだが、何しろ何十年もほぼ仕舞ったままである。レンズはどうなっているのだろう…。そこで思いついたのが後輩Af氏が持っているNewFD500m F4.5Lを借りるという案であった。これも1981年発売なので今となっては相当のオールドレンズであるが、当時の価格で46万円、蛍石とUDレンズを使用した超高性能レンズであったはずだ。それに2015年の8月にこのレンズを借りて新宿で撮影をしたことがあり、その時のファインダー像が素晴らしかった。500mmは月を撮影するのには少し短めなのだが、快く貸してもらえることなった。
この時は、キヤノンF-1を使用した。ちなみにこのF-1は、冒頭の1982年1月10日に一緒に月食を観た友人のうちの一人の遺品である。そしてその時彼が月食を撮影していたカメラが何とこのF-1である。
↑ 2015年8月22日 新宿南口 キヤノンF-1, NewFD500mm F4.5L, RVP100
新宿の南口で500mmで撮影するものはあまりなく困ったのだが、これは新宿駅に入ってくる小田急線を撮影したものだ。オートフォーカスなどないので置きピンで撮影した。鉄道撮影の技術などないので、写真のレベルは別にして、その画質はさすがLレンズと思ったものだ。
そして今回再度このレンズを貸してもらった。手元に来るととりあえず何か撮影したくなるので、夕方の月を撮影してみた。
500mmでもやはり像としては小さめだ。やや薄曇りなので、ちょっとボンヤリか…。
でも拡大してみるとクレーターもきちんと写っている。もう少しテスト撮影して慣れておこう。
当日曇ったら元も子もないのだが…。