白杖の課題と未来

視覚障害者の使う白い杖、白杖(はくじょう)は、使っている当事者からすると課題のある道具です。

ときどき折れる

僕は年に一度あるかないかぐらいですが、人にぶつかったり、自転車に踏まれたりすると、白杖が折れることがあります。例えば混雑している商店街の中とか混雑しチエル新宿駅の構内とか、振っている白杖と他の人との当たりどころが悪いとパキッと折れてしまいます。混雑していなくても、角から曲がってきた自転車に白杖の先の方に乗っかられて折れたこともあります。

白杖が折れたとき、相手に弁償してほしいと頼むのが何とも居心地が悪くてイヤです。「目が見えている人がちゃんと見て欲しい!」という気持ちがめちゃくちゃ高まるんですけど、感情的になるのはあまりよろしくないなと。相手からしてみれば、普段から白杖を警戒して出歩いているわけではないでしょうから、青天の霹靂という側面もあるでしょうし。白杖が折れて悲しいのに、弁償をお願いするのは悪いなという気持ちが出てくるのがツラいんです。書いていて気付きました。

危険を防ぎきれない

白杖で障害物から体を守れる範囲は、せいぜい太ももから下までです。白杖を握っている手さえも無防備です。例えば、放置自転車のハンドルが腕に当たることがあります。肩や顔はよくぶつけます。特に顔に何かがぶつかったときは大抵打ち身や切り傷になるので、痛いです。顔に何かがぶつかるのが怖くて、顔が緊張していたり、体がのけ反って顎が上がって歩いたりすることがあります。

つまり、白杖そのもので守れる安全はそんなに広く有りません。そのため、視覚障害者の安全は五感に依存しています。目が見えないのだから、四感かもしれませんが。五感と言っても、個人差があるでしょうし、経験値の違いもあります。本人のコンディションにも影響されます。例えばホームから線路に転落する事故についても、白杖は視覚障害者の安全を守ってくれていません。視覚障害者の五感で安全を確認しなければならないから、線路に転落してしまうのです。視覚を失った四感ではいかに安全を確保することが難しいかがわかります。

声をかけてもらえるとは限らない

これは白杖の課題としては少しずれるかもしれません。白杖が人の目に留まるとは限らない上に、人の目に留まっても声をかけてもらえるとは限りません。むしろ避けられることさえあります。どんなに白杖を使っての移動に慣れても、人に助けてもらうことほど安心感のあるものはありません。助けを必要としない人がいるのは事実ですが、せっかく白杖を持っているなら誰かに助けて欲しいというのが本心です。少なくとも僕は。

視覚障害者が外出しやすい未来へ

白杖には大きく2つの機能があります。現実に則した言い方をするなら、足元の障害物を認識することと周囲へ自分の存在をアピールすることです。しかし、これでは不十分です。僕が求める2つの機能は、視覚障害者の安全を守ることと周囲のサポートを得ることです。

安全を守るという意味では、体全体が何かにぶつからないように守ってくれる白杖が必要です。そして、周囲のサポートを適宜お願いできれば、安全も担保できますし、白杖の「持ちがい」があります。

白杖を持つことをマイナスに感じる人がいます。これからは、「白杖ってすごく便利な道具なんですね!」となって欲しい。白杖そのものが革新されること、周囲の人がもっと声をかけやすくなることを願います。

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