スマート白杖「WeWalk」に期待しています

視覚障害者が外出する際に使用する白杖(はくじょう)について、こんな記事が話題になっています。

視覚障害の当事者である僕がこのニュースを読んで感じたことを書いてみました。

なぜか白杖はアップデートされてこなかった

記事中に、世界で5,000万人が白杖を使っていると書かれています。すごい人数だなと驚きました。これだけの人が使っているのなら、充分なマーケットがありそうです。しかし、なぜかこれまで白杖はただの棒でした。すでにハイテクな白杖がいろいろと開発されているのは知っていますが、それらは視覚障害者の間で広まっていません。結局、ただの棒としての白杖を上回る白杖が存在しないのだと思います。

視覚障害者が外出する際の一番の悩みは、「どうやって目的地に到着するか」です。知らない場所に初めて行く場合の主な手段は、ざっくり言うと、人に頼るかタクシーに乗るかのどちらかです。タクシーに乗る場合は、目的地の住所を伝えれば良いのでわかりやすいです。人に頼る場合は、単純なようで難しいです。助けてくれる人を見つける必要がある、その人が目的地までサポートしてくれるとは限らない、案内してもらった場所が間違っている場合がある、といった課題があります。

この「WeWalk」があれば、視覚障害者が単独で目的地にたどり着ける可能性が高まります。健常者の中には、「ためらわずにどんどん人に頼っていけばいいのでは?」と思う方がいるかもしれません。しかし、助けてもらうというのは、とても助かると同時に結構疲れます。人は、自分で自分の生活をマネジメントできる領域が増えるほど、生活のストレスは少なくなります。この「WeWalk」はその一助になると思います。

通常の白杖だけでは安全を担保できない事実

白杖は、視覚障害者が外出する際、目の前の障害物の有無を確認するために使用します。しかし、守られるのは足元だけです。腰から上の障害物に対しては、白杖では安全を確保できません。これは結構な問題で、僕自身、腕や体、顔をぶつけたことが何度もあります。

具体的には、駅の上り階段の裏側に突っ込んでしまって顔をぶつけたり、自転車のハンドルや車のサイドミラーが腕にぶつかったり、街路樹などの植物が顔に当たったり、といったようなことがありました。

また、白杖が足元の障害物に当たることが、必ずしも良いとは限らない場合があります。例えば、人の足の間に絡まってその人をつまずかせてしまったり、スーパーで商品を倒してしまったり、自転車の車輪に挟まってしまったり、といったようなことです。

そのような事情があるので、「WeWalk」が足元だけでなく体の前の障害物の存在を振動で知らせてくれるのであれば、非常にありがたいです。便利さだけでなく、安全や命を守るツールとしても「WeWalk」が実用化されることを期待します。

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