もし、いつか失明しますと診断されたら、あなたはどう生きますか?

僕の目の病気は、網膜色素変性症というものです。人により、発症する年齡や進行の速度が違いますが、視野が徐々に狭くなっていくことで多くの人が最終的に失明します。僕の場合、14歳のときにこの病気の診断を受け、医師から「いつか失明するかもしれません。」と伝えられました。それから20余年、僕の場合も例に漏れず症状が進行してきました。現在は左目が失明している状態で、右目の視野は残すところあと1%程度です。

こんな状況の中、今こうして右目で画面を見ながら文章を書いています。自分としては、結構普通に見えているなぁと思っています。僕の見え方が他の人にとってよくわからないのと同様に、僕にとって一般の方がどのくらいよく見えているのかがあまりわかりません。其の結果、自分も結構見えているという感覚でいます。

ちなみに、この網膜色素変性症という病気は、今のところ現代医学では治療法がありません。紫外線をあまり浴びない方がいいとは言われていますが、それは進行を遅らせることはできても止めることはできません。iPS細胞の研究が進んでいるので、もしかしたら死ぬまでには治療法が確立するのではないかと思っています。

では、もし明日眼科に行って、「将来失明するかもしれません。」と申告されたら、あなたはどう生きますか?恋人やパートナー、妻、夫、家族との関係はどうなるでしょうか。仕事はこのまま同じ仕事を続けていきますか。それとも新しい仕事にしますか。白杖を持って歩いたり、障害者手帳を持つことに抵抗はありませんか。現代医学以外の治療法をいろいろと試すでしょうか。そのための資金は充分でしょうか。

僕の知っているケースでは、網膜色素変性症だとわかったことで婚約相手に自ら別れを告げた方がいました。症状が進行してきたことで、仕事を変えざるをえなくなった方もいました。田舎では暮らしづらいので、東京へ引っ越しした方もいました。白杖を持たないと危ないのに、白杖を持ちたくなくて無理をしている方もいました。鍼治療に効果があるかもしれないと思い、中国まで行った方もいました。同じ病気の人達の助けになればと思い、ホームページを立ち上げて、交流の場を作った方もいました。

何が良い悪いではありません。でも、人生を見つめ直すきっかけになると思います。これからどうしようかと思うだろうし、自分は一体どうしたいのだろうかとも考えると思います。見えなくなるのは怖いなとか、どうして自分だけがとも思うかもしれません。

僕の最終目標は、目のことについて気に留めることなく生活していることです。気に留めることのないぐらい、他に考えたいことがいろいろあったり、人生に幸せを感じられていたりしている状態でいたいと思います。ありがたいことに、それが少しずつ実現しています。もしかしたら目のことばかりを考えることに飽きてきたのかもしれませんが。



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