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夢は口に出せば叶う【エッセイ】

はじまりはアカデミックライティング

 「テーマは自由」この一言に何度も翻弄された。そう、TOU 名物のアカデミックライティングを私は受講していた。この科目にはレポート提出があった。形式さえ守れば、あとは自由で評価も甘いと聞いていた。しかしここまで自由すぎると、かえって不自由だった。10 回近くテーマを変え、行きついたのは、「地域包括ケアシステムにおける連携を視点とした、社会福祉士の現状と課題」をメインとしたテーマだった。
どうせなら、国家試験の勉強になればいいやという安易な考えで決定した。

 M田先生の「社会と福祉」の講義資料を読み漁り、数々の論文を読み漁った。そこで自身で深く考えたのは、「医療介護福祉における課題」であった。その中で、特に気になったのはチーム連携や、アナログ業務の非効率さであった。この 1 年 2 学期になってやっと、在学中医療福祉について初めて真剣に、そしてじっくりと向き合うことができたことは言うまでもない。

 さらに、このアカデミックライティングからの学びが、自身の夢のはじまりとなる。
 

やりたいことはプレゼンテーションの課題で見えた

 時は廻り、1 年 3 学期。紅葉色づく実りの季節、プレゼンテーションの講義を受けていた。まさかの講義配信中のプレゼンテーション課題の提出・発表に焦る私。テーマに悩んでいる暇はない。
 またもや、どうせなら、国家試験の勉強になればいいやという安易な考えで決定した。
 アカデミックライティングでは介護医療福祉業界の課題を学んだので、その課題に対して自身は何をするか、どんなソーシャルワークをしたいかを真剣に (10 分くらい)考えた。そこで見えたのが、

「 IT × 福祉で医療介護福祉業界の業務改善をしたい」

ということだった。このプレゼンテーションのおかげで、自身の目指すべくソーシャルワークが確立した。

就労支援員から痛感した医療福祉機関の課題

 フルタイム勤務を機に転職し、前から気になっていた精神障害者施設の就労支援員として働くことになった。支援自体は面談や他機関連絡調整や支援計画等、支援員にしては珍しく幅広くさせて頂いた。とてもやりがいがあった。

 しかしそこで目の当たりにしたのは、非効率かつセキュリティ脆弱なシステム管理実態であった。
 医療福祉業界は、たしかにシステムの IOT 導入は進んでいた。だが、使用するスタッフは IT に弱く、まさに豚に真珠状態であった。

「うち、今求人でてまして。」

 その他にも、パワハラ、サービス残業、持ち帰り残業等課題山積の実態を目の当たりにし、なんとかして自身で変えることはできないかと、当時折り合いを見計らっては、有識者でもある学友に相談という名の愚痴をこぼしていた。(その学友とは、今年 4 月より何かとよく連絡を取り合っていた。)
 その夜、私はその学友にサービス残業等の業務実態と今後の自身のボトムアップについて相談をしていた。
「労基に駆け込みましょう。」から始まった解決策は、私の身の振り方にまで話は進んだ。そして、学友の口からまさかの言葉がとびだした。

「うち、今求人出てまして。」

 学友の勤める企業は、業務代行や IT 関連、業務改善等色々されており、以前一緒に別件でお仕事をさせて頂いたことがあるよく知った会社だった。

「結果が出てから、迷って下さってもいいです。」

 まさかの一言に、度肝を抜かれ開いた口がふさがらなかった。確かに、いつかは IT にかかわっている企業に入って、業務改善に携わりたいとは思っていたが、まさかこのタイミングで !?!?
  正直とても迷った。とても興味がある、だが自身は未経験で事前知識も乏しい。支援員としての経験も半年程である。ここでもう、その足を踏み入れて良いのだろうか。時期尚早ではないのか。冷たい汗が背中を伝った。

「結果が出てから、迷って下さってもいいです。」

 その一言で、先ほどまでの迷いは一瞬で消えた。そうだ、受けるだけ受けてみよう。受かる保証は微塵もない。自信もない。失うものは少ない。当たって砕けろ。そしてその場で、求人募集サイトへアクセスしエントリーシートを一晩で書き上げ、白と水色モチーフの四角い送信ボタンをクリックした。その日は冷えた体と高揚感でなかなか眠れなかった。

諦めと決心

 「結果には関与できないので、お力になれず申し訳ありません。」
と学友は言った。本当に、とても丁寧な方だと改めて感じた。むしろその方がかえってやりやすいのでありがたかった。正規ルートで他の方と同じ土俵で戦った方が、自分としても気持ちが楽だ。
 
 問題は、知識面・スキル面が欠乏しているという点だ。しかし、頂いた縁は大切にしたい。運試しだ。ここでダメなら、それは致し方がない。潔く諦め、ブラック企業の支援員として馬車馬の如く働こう。

 迎えた面接当日。緊張の汗が透き通った素材のブラウスを滲ませた。クーラーのよく効いた部屋とは思えなかった。今まで経験したことないような面接課題達。すべてを終えた時、これからも支援員として働く自分の姿がみえた。色んな意味で終わったと、安堵のため息をついた。

そして

 数時間後、スマートフォンが揺れた。早くも結果の通知がきた。この速さはそういうことだなと、気乗りしない手で画面をタップした。「採用が決まりました。」何度も瞬きをし、ほっぺをつねって鈍い痛みを感じてようやく事実を飲み込んだ。受かったんだ・・・・・・・。
 嬉しさで頭が真っ白になり、震える手で返信を打った。

新たな門出

 今私は、初めて見聞きするカタカナ文字や英文字を毎日浴びながら必死に画面に向かって格闘している。業務内容は機密だが、これだけは言える。「今までで働いてきた企業の中で、一番ホワイトだ。」
 尊敬する上司、尊敬する同僚に囲まれ、去年掲げた自身の夢に向かって邁進している。

 また、講義を受けていく中で自身のなりたいソーシャルワーク像が確立しつつある。フリーランスで活動しよう。

本職でなくていい。ボランティアでいい。

名称独占の特権だ。どんなことをしたいかもかたまってきた。変わるかもしれないがそれでいい。組織や既存の枠にとらわれていては課題は解決しない。ゼロベースだ。

できるところまで、やってみよう。

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