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ロード・オブ・カオス

死(にまつわるエトセトラ)に取り憑かれた歯止めの効かない青春残酷物語。

原題『Lords of Chaos』は、2018年の作品。
「ノンフィクション『ロード・オブ・カオス ブラック・メタルの血塗られた歴史』原作、ブラックメタル・バンド、メイヘム(Mayhem)のメンバー刺殺事件もしっかり扱っている」という触れ込みから、とても楽しみにしていた作品ですが、3年越しで日本でもようやく公開されました。
観る前は、ドキュメンタリーっぽくなるのかなぁと想像していましたが、監督が『SPUN/スパン』(大好き!)のジョナス・アカーランドと知り、期待は高まります。

この映画を観る時に、ブラック・メタルを含めたこの界隈のジャンルを知っているか/知らないか、好きか/嫌いか、によって捉え方が大きく変わると思います。
実際、映画はブラック・メタル黎明期の描写もあり、登場するバンド名、メンバーが着ているTシャツ、溜まり場で観ているビデオ等、知っていた方がより楽しめるのは勿論ですが、それよりもそこの世界(溜まり場のレコード屋「ヘルヴェテ」とそこに屯ろする「インナーサークル」)で形成された人間関係、そして最後に暴走せざるを得なかった青年たちの心情描写が強く印象に残ります。
小さい頃から将来の夢がサラリーマン、公務員、だった人には理解しがたい世界。たまたま好きになった、興味を持ったものがエクストリームなもので、多感な時期に理解し合える友人ができ、一人ではない、自分たちにはこれしかない! と世界が完成されていく時の感覚。
僕の場合は「ビートたけし(これは大メジャーですが)」と「パンク」と「ホラー」と「プロレス」で、特に「パンク」と「ホラー」に関しては、自分(たち)の特権のような気がしていました。(野球部やサッカー部、休み時間のクラスの人気者になんか、わかってたまるか!)

その世界はとても大切で、故に他者を寄せ付けなかったり、ポジションの取り合いになることも多々あります。
初対面で、主人公ユーロニモスに、ポーザー(初心者)扱いされたヴァーグ。自分の価値観が小馬鹿にされたけれど、そのヴァーグの背伸びがいつしかユーロニモスに追いつき追い越し、取り込む方と取り込まれる方のお互いの引くに引けない陣取り合戦、どっちが邪悪かのチキンレース。
歯止めの効かなくなった両者(というかヴァーグ)は、ついに…

「死」に取り憑かれ、それを伝染させた初期メンバー、デッドの自殺、ユーロニモスに襲いかかるフラッシュバックなど、描写としても強烈なシーンがあります。R18+にもなった理由でしょうが、そこだけを取り上げて「悪趣味」と判子を押すには切なすぎる、正しく青春残酷物語なのです。

ちなみにシネマート心斎橋では、上映回すべてboidによる音響調整凄音<スゴオト>上映。
ただ音量が大きいだけでなく、前半のライブシーンよりも、中盤以降の効果音でより効果が発揮されています。

#ネタバレ (というほどでも)
ユーロニモス、ファウストらが、レコード屋「ヘルヴェテ」や自宅で観ている映画は『死霊のはらわた』『ブレインデッド』
ユーロニモスが自宅で聴くのが『ニューヨーク・コマンドー/セントラルパーク市街戦(原題:The Park Is Mine)』のサントラ。
これも事実かどうかは判りませんが、90年代の初めを象徴するアイテムです。

『ロード・オブ・カオス』原題:Lords of Chaos(2018)
監督:ジョナス・アカーランド
出演:ロリー・カルキン、ジャック・キルマー、スカイ・フェレイラ
音楽:シガー・ロス

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