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金は中国、銀はインド、銅は投機?!

今年に入ってからの金価格の高騰は、中国勢の爆買いに牽引された面が大きい。銀に関してはインド勢の買い主導となり、銅に関しては、投機筋の買いによる部分が多く、三者三様の需給状況となっている。今後の展開を予測する。


1.金価格高騰の背景

金は、外貨準備における米国債からの受け皿となっている。今年に入ると、米中対立の深刻化から、中国人民銀行は、外貨準備に占める米国債の比率を下げ、金の比率を更に高める操作を行っている。また、中国の個人投資家も、国内不動産市況の低迷や国内株式市場の先行き不透明感から、投資対象としての金買い意欲を高めた。しかし、足元では、中国政府が国内不動産市況てこ入れ策を発表しており、株式市場も反転上昇していることで、金への資産シフトの動きは弱まっている可能性がある。

2.銀価格高騰の背景

銀は、金の高騰に後れを取ったことで割安感が高まっていたが、インドの分厚い中間層からの宝飾品需要が割安感のある銀に殺到し、今月に入り、金銀比価(金価格÷銀価格)が、図表1の通り75倍程度まで低下している。『貧者の金』と言われる銀について、過去50年平均の金銀比価の平均が60程度であることを勘案すると依然割安感がある。

3.銅価格高騰の背景

銅は、EVや太陽光発電、風力発電向けの発電ケーブル需要や、生成AI開発のためのデータセンター向け高圧送電ケーブル需要など、新時代の産業用途需要の拡大が見込まれる一方、短期的には中国経済の減速懸念などで、投機筋の積み上がった空売りポジションの買い戻しが上昇を牽引した側面がある。

4.インドが銀価格を押し上げるか

今年に入り、宝飾品需要大国インドの銀輸入が急増しており、2024年1-3月期の輸入額が2023年通年の輸入量3,625トンを上回り、4,000トンに達した。インドの2023年の銀の宝飾品需要2,603トンは世界需要の4割超を占めており、2019年比21%増加している。
金以上に銀への宝飾品需要が急増した理由として、銀は金よりも単価が安いことが挙げられる。銀は最近まで金に対し出遅れ感が目立ち、図表1の通り、金銀比価で、2024年1月には、金が銀の90倍以上の高値を付けていた。現在は、インドの宝飾品需要もあり金銀比価は下落傾向にあるが、太陽光パネルなどの工業用途での需要増も考えると更なる低下余地があろう。
インドは、2023年人口が14億2,000万人を超え、中国を抜いて世界第1位となり、2025年名目GDPが4兆3,398億ドルと日本を上回り世界4位に浮上する可能性がある。高い経済成長率と可処分所得の増加が、今後も継続的に銀の宝飾品需要を支えていくことで、銀価格は、2011年以来の1トロイオンス当たり40ドルまで騰勢を強める公算が大きい。(図表2ご参照)

(図表1 金銀比価推移チャート Trading View提供のチャート)
(図表2 銀価格推移チャート 右軸:単位 ドル/トロイオンス Trading View提供のチャート)

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2024年5月29日執筆 チーフストラテジスト 林 哲久



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