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アール・ド・ヴィーヴルの世界を通して、美しい暮らしを〜DISTILLERIE DE PARIS、ボンジュール・フランス出展の現場から〜

「フランス文化」と聞いて、思い浮かべるもの。ワイン、チーズなどの食文化、数多くの高級ブランドを生み出しているファッション、美しい街並みやアート…。様々なものがあるかと思います。そんなフランス文化の根底に流れる哲学、アール・ド・ヴィーヴル(暮らしの芸術)をご存じでしょうか。この哲学に象徴されるフランス流の暮らしの美学を日本に伝えるため、ショッピング、ガストロ、カルチャー、ライフスタイルの4本柱を軸に開催される特別なイベント「ソワレ・ボンジュール・フランス」が5年ぶりに復活。フランス大使館支援のもと、在日フランス商工会議所主催により2024年5月17日にフランス大使公邸にて開催され、100年ぶりにパリ市内に誕生した「ディスティレリ・ド・パリ」が出展しました。多くの来場者に楽しんでいただいた様子を交えて、「ディスティレリ・ド・パリ」の哲学や考え方をご紹介いたします。

取材・文:大島 有貴
撮影:唐 瑞鸿(plana inc.)

DISTILLERIE DE PARIS(ディスティレリ・ド・パリ)とは
2015年、ニコラ・ジュレス氏(以下:ニコラ)によって、フランス・パリ10区に設立された蒸留所。1914年にパリ市内で蒸留所開設が禁止されて以来、100年ぶりにパリに開設された蒸留所となる。ニコラの独創的なインスピレーションにより、香りと素材への飽くなき探求を続け、オートクチュールスピリッツを生み出している。

写真:河野さんご提供@kayokono
今回、お話を伺った河野 佳代さん。
酒類専門商社にてヨーロッパのワインを買い付けてきたワインバイヤー。
2017年にニコラ・ジュレス氏に出会い日本にディスティレリ・ド・パリを紹介。
「ディスティレリ・ド・パリ」のクリエイティブ・ディレクターを務める。

フランスに根付く文化そのものを体現した
ディスティレリ・ド・パリ

──今回の「ボンジュール・フランス」への参加の経緯をお教えください。

ディスティレリ・ド・パリは、パリそのものを体現しているお酒だと私は考えます。フランスの街は、美しくて、クリエイティブ。今回の「ボンジュール・フランス」のテーマでもあるアール・ド・ヴィーヴル(暮らしの芸術)を街全体が体現しているんです。蒸留家であるニコラはパリで生まれ育ち、高級エピスリー(食料品店)「ジュレス」を家族と経営する生粋のパリジャンです。その彼のイマジネーションで創られるジンは、スピリッツの枠を越えたアート作品のようなものだと私は捉えています。形としてはもちろんお酒なのですが、味わう人間の気持ちを揺さぶる世界観は他のお酒にはないものだと感じています。今まで私は、この世界観を単なるスピリッツの一つではなく、ディスティレリ・ド・パリそのものとして伝えるにはどうしたらいいかを模索してきました。そこで、アール・ド・ヴィーヴルを日本に伝えるという趣旨の「ボンジュール・フランス」はとてもいい機会だと思い、参加をさせていただきました。今回、このような形でお酒というものがそんなに身近ではない、お酒業界の外の方たちにもこの世界観が伝わっていくことは、とても素晴らしいことだと思っています。

グラスに蓋をして香りを閉じ込めることで、
来場者が自身で蓋を開ける際に香りの世界観を堪能できる試みが行われていた。

感覚を開放してほしい。美しい暮らしの提案

──アール・ド・ヴィーヴル(暮らしの芸術)とは、どのようなものなのでしょうか。

アール・ド・ヴィーヴル (Art de Vivre)は、”生活美学” や”暮らしの芸術”という意味です。「Art」という言葉が入っているので、絵を描くことや飾るなど、日常生活に芸術を取り入れることだと思われがちなのですが、それはアール・ド・ヴィーヴルの具体例の一つに過ぎません。この言葉は、日常の暮らしの中に、自分らしい芸術や美しいものを取り入れていこうという生き方そのものを指します。つまり、スタイルのお仕着せではないアール(Art)、芸術なのだと思います。それにはまず、皆さまそれぞれが「自分が何を美しく思うのか」を認識する必要。そんなことを急に言われても分からないと思われてしまうかもしれませんね。私は、それにはまず、自分の感覚(視覚、触覚、味覚、嗅覚など)を研ぎ澄ましていくことが重要だと考えています。いろんなものを試して、自分が何を感じるか。その練習のようなものが現代の日本人には少し足りていないと思うのです。自分の中に眠っているその感覚をディスティレリ・ド・パリの香りや味わいを通して開放してほしい。蒸留家のニコラは、自分は蒸留をしているのではなく「美の提案」をしていると話しています。心のうちを表現すること。自分の作品をきっかけに人々と何かを分かち合い、何かを感じてほしいと望んでいるのです。

会場の声を聞くと、「普段はワインを飲むことが多いのですが、こんなにも香りや複雑味があることが衝撃でした」。「香りにリラックス効果を感じ、アルコール感が前面に出ていないので、どんな場面でも楽しめるお酒だと感じました」といった声が聞かれ、多くの方々に好評でした。

美への探究が、香りや味わいを形作る

──会場には、たくさんの方々がいらっしゃっていますね。

そうですね。実は、今回初めてやってみたことが「ペアリング」の世界をお客様に楽しんでいただくことです。ディスティレリ・ド・パリは、理論的なペアリングができるスピリッツで、もちろんチーズやパンなど、フランスの食材とも相性がいいのです。今回、会場ではお隣にブーランジェリー「ドンク(DONQ)」のフランスパンや、チーズ専門店「ル・コントワール(Le Comptoir)」がセレクトしたチーズの出展があります。それらと一緒に楽しんでいただくことで、従来のスピリッツにはない、食材との相性の良さを感じていただけるのではないかと思っています。蒸留家のニコラは、家族が営む高級食料品店で本物に触れて育ったこともあり、「味」に対する興味は尋常ではありません。世界各地どこに行っても、新しい食材や植物などあらゆるたくさんの素材をテイスティングします。作曲家が音に表現を落とし込むように、お酒は味覚や嗅覚を刺激してくれる媒体の一つという認識でいるのです。彼は、お酒や食べ物、あらゆる素材を地続きで捉え、豊かに美しく暮らすために必要な一つのエッセンスとしているのだと思います。まさしくアール・ド・ヴィーヴルですね。これからも、このようなディスティレリ・ド・パリの世界観そのものを伝える試みをしていきたいと思います。

「OLIVER &CO」のフランス産エキストラバージンオイル フランセーズと、
「DONQ」のフランスパン、チーズ専門店「Le Comptoi」のチーズと合わせて
ディスティレリ・ド・パリを楽しみました。

河野さん、お話ありがとうございました。

取材協力:在日フランス商工会議所様、DONQ様、Le Comptoi様、OLIVER &CO様、高野 順子様、日塔 絵理様、為房 拓真様(敬称略、順不同)

DISTILLERIE DE PARISの情報はこちら
https://www.distilleriedeparis.com/
ボンジュール・フランスの情報はこちら
https://bonjourfranceccifj.com/
Instagram: @bonjourfrancejp