見出し画像

“神イベント”は可能か?という話

「へっぽこマーケターの日々」第22回(前回は2/12更新)。

ファンマーケティングの仕事をやる中で、自分と似た課題や興味関心のある人と、共通の話題にできたらうれしい本について書こうと思う。

今回は『最高の集い方――記憶に残る体験をデザインする』(プリヤ・パーカー, 関 美和 著)について。本書は下記のような本だ。

誕生パーティから大規模フェス、ダボス会議まで「盛り上げる」ための全秘訣が一冊に
これを知っていればあなたも「神イベント」が開ける!
Amazonより抜粋)

要約ではなく、個人的に刺さった内容の紹介

このnoteでは、一冊まるまるの要約ではなく、ここが(実際に行動に移したくなったくらい)おもしろいという視点でまとめた。

いわば、自分が一緒におもしろいことをやっていきたい人のために書いたブッグガイドのようなものだ。

***

ファンマーケティングといえば、ファンと企業との交流の場としてイベントが欠かせないだろう。大小さまざまな規模のものがあると思う。

コルクも例によって作品の読書会などのファンイベントを開催している。

イベントの狙いは、その場でよい時間を過ごすことで作品や作者への愛着を高めてもらい、それまで以上に熱いファンになってもらうことだ。

もちろん熱さにもグラデーションがある。「原作を1回読んだ→アニメも観るように」「全巻紙で持ってる→グッズを買う」など、さまざまな段階のファンを、イベント参加によって一段上に引き上げるのだ。

ではそもそも「よい時間」とは何か?ということになる。そこでヒントにしたいと思っているのが、この『最高の集い方――記憶に残る体験をデザインする』(プリヤ・パーカー, 関 美和 著)だ。

個人的におもしろかったポイント

作者の論理展開の中で、各章で特にハッとしたのは以下にまとめてみた。目次の内容とは微妙に違う。

1章 慣習よりも集まる目的を考える
2章 門戸を閉して安心感を作る
3章 偽ホストから会を守れ
4章 別世界を作るにはルールが必要
5章 会の初めからゲストをエンジン全開に
6章 上っ面の議論を止めさせる方法
7章 対立を利用して議論を活性化
8章 クロージングは現実世界へのブリッジ

どれも大小さまざまな意外性がある。そして丁寧に説明が付されているので納得感が持てるのが本書のよいところ。

具体例にも富んでいるので作者の理論をよりイメージしやすい構成になっている。

以下で上記1〜8章ごとに列挙した事柄に少し触れてみる。

1章 慣習よりも集まる目的を考える

なぜ集まるのかを考えることが、会の成功を左右するという主張の下、作者は慣例化してしまった集まりに警鐘を鳴らす。

「なぜ」が共有されている集まりは、すなわち参加者が各々「意味」を見いだせており、一体感が生まれるからだ。この一体感こそがイベントの成功を左右すると言う。

たとえば、ベビーシャワーになぜ父親が参加できないのか?など、慣習に疑問を呈し再設計することで皆にとってのよい時間が生まれる。

2章 門戸を閉して安心感を作る

誰を招くかということも極めて重要だと作者は言う。参加者の安心感のためだ。招待者をホストが指定した、クローズドな集まりこそ、真の多様性を尊重してくれる。

3章 偽ホストから会を守れ

ホストが裏方に徹しては、会が台無しになると主張しつつも、かと言って自然体も無責任であるとする。ちゃんとしきらないとだめなのだ。

ホストがしきらないと、他の人が場をしきりだす。その人物が当初の集まりの目的やひいては一体感を壊すリスクがあるからだ。

また、無用な上下関係を生まないためにも、ホストがゲストが気持ちよく過ごせるルールを皆に強いる必要がある。

4章 別世界を作るにはルールが必要

「マナーよりルール」だ、と作者は言う。前者は不文律で、不明確なため破ってしまうリスクがつきまとう。そこでこの場限りの明文ルールを用意すれば、ゲストはマナー違反がないか気にせずこの場に集中できる。

5章 会の初めからゲストをエンジン全開に

作者自身、イベントの準備に心血を注いでいる。成功の9割を担うからだ。

ここでの準備とは、ゲストをイベント前からまきこむ仕掛けのことだ。たとえば、イベント当日よりも前に内容を伝え、了解を得ることもこれだ。これにより心の準備をしてもらう。これが集まりの序盤からゲストを熱くする。

6章 上っ面の議論を止めさせる方法

国際会議でも活躍する作者は、エグゼクティブたちが本音で話すような方法論すらも持っている。

地位や名声のある人々は、イベントに集まっても、「最高の自分」を演じてばかりだ。こんな調子では深い議論なんてできない。そのために作者は、ゲストにアドリブで話してもらうことや。弱みをさらけ出してもらうことに注力した。お互いに敢えて暗いテーマを皆が語ることでゲストたちはグッと距離が縮まるのだ。

7章 対立を利用して議論を活性化

会社の会議などで、熱い議論をするにはどうすればいいか?作者はこのために、普段避けている話題を工夫して慎重に話し合えばいいと主張する。いわゆるプロレスのケージマッチ(檻の中で戦う形式の試合)だ。

工夫のひとつは、その場限りのルールにより、何を言ってもよい環境を作ること。これにより、対立を見える化する。そうして賛否の分かれる議論を生めば、現状の改善にも繋がる。

8章 クロージングは現実世界へのブリッジ

あらゆる方法で会に皆が深く入り込んでも、終わりは必ずくる。よい集まりはクロージングも素晴らしいと作者は言う。ここでの作者の意見により、よくある挨拶や事務連絡がいかに的外れなものかがわかるだろう。

たとえば、よくある悪いクロージングは、別れを惜しんで終わりの時間を引き延ばすことだ。せっかくいい感じに熱狂したゲストたちが、飽きてしまいかねない。

ゲストには心の準備をしてもらい、終わりを受け入れてもらわなくてはならない。そのためには、レストランのラストオーダーのようなものが必要だ。

ではどんなクロージングが最適なのだろう。それはゲストのニーズに沿った下記を促すべきだと言う。

①内側に向ける(何が起きたか内省)
②外側に向ける(外にある自分の居場所を取り戻す)
※本書の内容を意訳

たとえば、何が起きたかふりかえり、最後にもう一度仲間と繋がり合う(会の目的に一瞬立ち戻るチャンス)、ゲストが元の世界に何を持ち帰ればよいか(振舞い、伝え方)ことだ。

理想の流れは…

ラストオーダー

事務連絡

ドラマチックな締め。

※感情ではなく、相手を称える
(担当紹介もだめ)

***

長くなってしまったが『最高の集い方』は既に個人でやっている勉強会などでも実践している。今後は実際のファンイベントの設計にも活かせたらと思う。

わたしをサポートしたつもりになって、自分を甘やかしてください。