読者はなぜ離れるのか、という話
「へっぽこマーケターの日々」第53回(前回は4/6更新)。
今回は、コルクの所属作家のマンガの読者を増やすためには、という議論をしていたときの話を書く。
具体的には、ドが付く新規読者を獲得するのも大事だが、途中まで読んだ読者にアプローチすることもポテンシャルを秘めているのではないか、という話である。
なぜなら後者は作品の認知と興味のハードルを一度は越えている。作品を知ってもらうところからスタートとなるド新規な読者予備軍よりもコミュニケーションコストを抑えることができると考えたからだ。
なぜ離脱するのか?
しかし、一度離れた人を呼び戻すには、なぜ離れたのかを知らなくてはならない。
(恋人とよりを戻すのを想像してみてほしい)
自分たちが読者の側だったときの体験をベースに考えると、離脱する理由はいくつかある。
①新刊に気づかない
②なんとなく「気が済む」
③次巻に期待が持てない(おもしろくない)
この3パターンについて考えてみた。
パターン別・離脱の背景と対処法
①
情報をいかに届けるかが肝心となる。SNSアカウントやメルマガを購読してもらうことや、非フォロワーに届くように情報が拡散される必要がある。
②
「おもしろかった(けど次が読みたくなるほどではない)」というモチベーション不足な状態に近い。
なんせ世間には他にもコンテンツは山ほどあるのだ。こうなってもおかしくはない。
しかも半年以上も刊行のタイミングが空けば、読んだ当初に感じていた熱量も冷めている。となると次巻を読みたくなるようなフックがないと厳しい。「そうそう!この作品はこういうところがおもしろいんだよなぁ」という気持ちを呼び起こすコミュニケーションが必要だ。
ただ、個人的にもあるこの②というのは、まだ対処の難易度を掴み切れていない。自分の場合はたとえば2巻まで楽しく読んだのに、やはり読んだとき(半年〜1年前)のことなんて覚えていないのだ。
しかし、「続きが気になって仕方ない」「どうしてもこの物語を最後まで見届けたい」というモチベーションさえあれば、これは杞憂に終わるはずなのだ。
今の時点で彼らに対してできるアクションとは、「いかにおもしろい作品か」を思い出してもらうことに尽きる。その手段は既に彼らと繋がりがあるならそれを生かすべきだし、繋がりがなければ、情報が彼らにまで届く努力が必要だ。これは①とも近いアプローチだろう。
そのためには、発信側がファンと同等かそれ以上に作品の魅力を理解している必要がある。
(そしてコルクの作家担当スタッフとは、そういう存在である)
③
②とは似てるが、「おもしろくない」というネガティブな理由で読む気が失せるパターンだ。
もちろん好みの問題もある。でも単なる好き好きで片付けては対処を見誤る気がする。
好き嫌いというのは、要するに読み手の期待に応えているかどうか、なのではないか。これがおもしろく感じるかどうかを左右するのだろう。
たとえば、「推しキャラがずっと登場しない」「展開がつらすぎる、好転する気がしない」と言った感情などだろう。これが要するに「好み(の展開)ではない」となるのではないか。
彼らが戻ってくるにはどうしたらよいか。それは、読者が望む展開であることを知ってもらえるのが一番だ。しかし、一度興味を失った人を「公式」が呼び戻すのは難しい。そこで、残っている読者の盛り上がりが可視化されることが重要となってくる。
現に、『宇宙兄弟』の37巻は、1巻や直近の30〜36巻の数を遥かに超えたれAmazonレビュー数だ。
これはつまり、それまでずっとファンが待っていた展開を迎えたからこそではないか。そして、この盛り上がりを見て読みたくなった既刊読者も少なくないと考えている。
***
こういうことを考えるとき、いつもベースとなるのは自分の読者としての作品体験だ。
読みたくなったとき、読んでいるとき、読み終わったとき、またしばらく経ったとき。作品と自分の距離感をふと確かめて、この体験を記憶に留めようと思う。
わたしをサポートしたつもりになって、自分を甘やかしてください。