お写ん歩

 前世か僕のご先祖様が徳を積んだのか、あるいは知らず知らずのうちに現世で徳を積んでいたのか僕はよく道端で声をかけられていた。
「お金ヲ願イシマス。貧シイコゥドォモタチニィ」「我々はこういった形で神の教えを皆様に説いていまして」「今アンケートに答えていただいた方にこういったプレゼントの方をしていまして」
 といった感じでろくでもない方々ばかりに声をかけられていた。こと横浜で声をかけてきたアンケートお兄さんに関しては新卒1年目の初々しい社会人のようなキラキラした瞳でカモってやろうという魂胆が見え隠れしていたので恐ろしい。

 さてカメラで僕は動物や神社だけでなくTwitterにはあんまり載せてないけどスナップも撮る。まあ俗に言うお写ん歩ってやつだ。そうするとやっぱり声をかけられる。
「どんなの撮ってるんですか?」「もしかしてプロの方ですか?」「あ、あそこにカワセミいますよ!」「よければインスタなんかにジャンジャン載せて下さい(これは小さいお寺の坊さんから)」
 こんな何気ない一言からちょっとした会話が生まれて、そのたびに何というか素直に心が洗われる。ああ、僕に今まで話しかけてきたのはたまたまよろしくない人たちばかりだったんだなと。そしてカメラというものはコミュニケーションツールになるのだなと。
 現世で徳は積めそうにはないがこれからも暇なときはカメラを片手に出かける。もしかしたら見知らぬ誰かとちょっと楽しい話が出来るかもしれない。

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