関空を探検するもうまくいかず一青窈の「もらい泣き」を聞いてもらい泣きしそうになった話
生きるのが下手だ。レンタルビデオを最長2ヶ月延滞したことがあるくらいに生きるのが下手だ。
同時に、旅も下手だ。旅に出るとだいたい何かしらやらかす。
この夏に行ったマレーシア旅でも、つくづく旅下手を実感した。
なんなら0日目。旅がはじまる前ですら、旅下手だった。
何も下調べせずに出向いた空港で、やることがなさすぎた結果、もらい泣きしそうになった。
マレーシア旅の前日、関西国際空港に滞在した。
出発時間が朝早く、チェックインに間に合う時間に空港へ行ける気がしなかったのだ。
過去には、パスポートの有効期限が切れていることに旅の当日に気づき中国行きをキャンセルしたこともある。いわゆる私は生粋の旅下手なのだ。当日の朝に向かって、飛行機に乗れるはずがないのだ。ひよったわけではない。
空港泊はさすがにつらいので、関空に併設する「ファーストキャビン」というホテルをとった。
飛行機のファーストクラスをイメージした客室がコンセプトといういわゆるカプセルホテルだ。ファーストクラスも陸におりれば、カプセルホテルなのだ。そう考えると、クラスで大人気のあのイケメンも家では常に下痢気味だったりするのかもしれない。
関空前のりと聞いて、私の頭に「関空を満喫できるチャンス!探検しよ」という気持がゴリゴリによぎった。先ほどのひよったは半分嘘で、関空探検したさすぎて、前のりしたといっても過言ではない。
ホテルへのチェックインを済ませ、いざ関空探検へ。
空港にいるだけで、興奮する。旅が下手でも旅は好きなのだ。旅が好きな人は、空港にわくわくするこの感覚をわかってもらえるはずだ。
そんな悟空テンション(おら、ワクワクすっぞ)で始めた空港探検だが、始まってすぐに何かがおかしいことに気づいた。
1階が到着フロア。2階は国内線への出発ゲート。4階は国際線。ここまでは昔と変わらない。ただ、3階の様子がおかしい。
関空で一番楽しいフロアは3階だったはずだ。
かつてはここに、レストランがあって、お土産が売っていて、スタバでフライト前のビジネスマン気分を味わうこともできたはず。
しかし、この日の3階には宗教関連の祈祷ルームしかない。
おかしいぞ。もしかして、コロナでこないうちに3階だけ隠し扉とかになったのかな。たまにインスタとかで紹介されてる、オシャレな高級バーの入り口は書庫の本棚に模した隠し扉みたいなあれか。
スマホで調べてみると、大規模工事中のため関空のレストランは、そのほとんどが閉店していた。
空港のスタバでパソコンをかちゃかちゃして、今から海外出張に出るが、その前にプレゼン資料を仕上げておかないといけないできるビジネスマン気分を満喫し、明日から日本食が食べられないという大義名分をかざして回転寿司でお腹いっぱいになるつもりだったのに。
関空に残っていたのは、2階のマクドとローソンとフードコートだけ。
マクドは結構な混雑具合で、パソコンで悠長に作業という雰囲気ではない。ビジネスマン気分は諦めるしかない。
仕方なく、フードコートに出向く。
入ってすぐ、カレー屋の前に空席があるのをスルーして奥へ進む。今日は日本ぽいものを食べたいんだ。寿司でなくとも、日本でしか食べられないものが。明日からマレーシアだ。カレーは大量にあるだろう。
そう思ってカレー屋前を華麗にスルーした。ルイコスタもびっくりなスルーパスである。
ところが、奥へ進むとフードコートは異様な混み具合であった。今や関空のレストランはここにしかない。そりゃ混むはずだ。
結果的に、席が全然見つからない。
先ほどスルーした空席に戻るが、あとの祭り。おじさんがラーメンを食べていた。
諦めてフードコートを後にして、関空併設のホテルに戻る。ここに来るとき、ホテルのビルになか卯があったのを目にしていたのだ。
その時は「なんで、関空まできてなか卯やねん。アホか。」と思ったわけだが、今となってはそんな2時間ほど前の自分を呪いたい。なか卯さんごめんなさい。日ごろお世話になっておきながら、関空にきたというだけで、本当に大切なものを見失いかけていました。失いかけて気づくものってあるよね。
なか卯でご飯を食べよう!
なか卯にこそ、日本があるはずだ。なか卯こそ、日本でしか味わえないジャパニーズカルチャーじゃないか。えぐいほどの手のひら返し。手がちげれてもおかしくないくらいの、手のひら返し。
親子丼を食べよう。親子丼こそ、ジャパニーズフード。寿司はメジャーになりすぎた。今や世界中に「SUSHI」はある。でも「OYAKODON」はあるか?ないだろう?そうだ、これこそ本当のジャパニーズフード。
両手がちぎれた状態で、僕はなか卯へ突入した。すると、入った店内には、一青窈の「もらい泣き」を和風バージョンにしたインストロメンタルが流れていた。
音楽は佳境、ちょうど「ええいああ」の部分であった。
この店内が一番日本っぽいじゃないか。一青窈のもらい泣きなんて、ただですら日本ぽい曲なのに、それを三味線インストロメンタルにするなんて、最も日本っぽい。日本はここにあった。関空にはなかった。
日本 is なか卯。
なか卯 is ジャパニーズカルチャー。
旅が始まる前に、旅が下手すぎるということが露呈してしまう結果となり、少し自信を失った僕は、『もらい泣き』にもらい泣きしそうになりながら、なんだかいつもより少ししょっぱい親子丼を平らげ、ホテルへ戻った。
ええいああ、君からもらい泣き、ほろりほろりひとりぼっち。ええいああ、僕にももらい泣き。優しいのは誰です?
なか卯です。
関空からは以上でした。
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