ボロブドゥール遺跡で女子中学生と一緒に写真を撮って泣いた
誰かと写真が撮れて嬉しかった経験はありますか?
芸能人?スポーツ選手?
先にいっておくと、僕は変態ではない。断じて誓う。信じてほしい。
ただ、そんな変態でない僕が、女子中学生と一緒に写真が撮れて、久しぶりに泣いた。
「タイタニック」以来泣いてこなかった全米が「アルマゲドン」をみたときくらい泣いた。(それは少し言い過ぎかもしれないが)
事件はボロブドゥール遺跡で起きた
ボロブドゥール遺跡。
いわずと知れた「世界三大仏教遺跡」の1つ。
8世紀とか9世紀に建てられたにしては、立派すぎるその佇まいは、千年もの間、火山灰に埋もれていたが、1800年代にイギリスのラッフルズ提督たちによって発見された。
「ラッフルズ提督ナイス!」
ラッフルズ提督って、ヒゲは生えてそうだなくらいのイメージしか思い浮かばないけれど。
ちなみに、画像検索してみたら、ラッフルズ提督にはヒゲはなく、なかなかのイケメンだった。
そんなボロブドゥール遺跡を訪れた時に事件は起きた。
現地の修学旅行生がたくさんいた
開門と同時に、ボロブドゥール遺跡に足を踏み入れると、そこには僕たち以外にもたくさんの観光客がいた。
そんな中、ひときわ目立つ観光客御一行様がいた。
正確なことはわからないけれど、おそらく現地(インドネシア)の修学旅行生だろう。
旗をもった人が先頭に立ち、多くの子どもたち(おそらく中学生)がその後に続く。
修学旅行生のやりたいことは・・・
そんな、修学旅行生たちがボロブドゥール遺跡でやりたいことは、観光ではなく、「海外の観光客と一緒に写真を撮る」ことだった。
彼女たちはボロブドゥール遺跡の観光もそこそこに、観光客に声をかけて次々と記念撮影をしていく。
白人のカップル。インド人の男性などなど。
次からつぎへと、海外からきた観光客のもとに子どもたちが押し寄せ、恥ずかしそうにジェスチャーで、一緒に写真を撮ってくれるように頼んでいる。
その人気ぶりは、まるでパイレーツオブカリビアン直後に来日した時のジョニーデップばりだ。
こうなったら、僕も神対応をしてあげよう。明石家さんまさんがファンに神対応するように。箸袋にでもサインしてあげるくらいの勢いで写真撮影に応じよう。(知らない人は、「明石家さんま 箸袋 サイン」で検索)
そう決意して、子どもたちに声をかけられるのを待った。
彼らの目的がボロブドゥールの観光でなくなったように、僕の目的も観光から「神対応」にシフトしつつあった。
いよいよ中学生たちが、僕たち日本人夫婦に気づき、群がってきた。彼らはみんな一緒に写真を撮ってくれるように妻にだけせがんでくる。
そう、妻にだけ。
おかしい。誰一人、僕に写真をせがんでこない。なんなら彼らは僕にカメラを手渡し、妻とのツーショットを撮るように要求してくるではないか。
いや、待て。ここは神対応だ。
そう思いつつシャッターを押し、いよいよ次は僕の番かと待ちかまえていると、彼らはカメラを受け取り、妻にお礼をいってその場をそそくさと去っていく。
さすがに僕も我慢の限界だ。写真を一緒に撮る部分での神対応は覚悟したが、まさかカメラマンとしての神対応をさせられるとは予想外だ。
お前らぁぁぁぁぁ!!俺との写真はええんかぁごらぁぁぁ?!と発狂しかけたところで、妻が気づいた。
「あーわかった。そういうことか。あんた、現地のガイドかなんかやと思われてるんやわ」
妻が笑顔で現地の修学旅行生と写真を撮りながら、つぶやいたその一言で僕は我にかえった。
僕の顔は圧倒的に○○寄りだった
何を隠そう。僕は、圧倒的に東南アジアよりの顔だ。
インドネシアのバリの食堂では
「お前は、バリ出身じゃないのか?!あぁ顔が濃いからバリ人じゃなくてジャワ人なのか?!」と謎の質問を繰り出されることもあるほどの、東南アジア顔。
バリ人とジャワ人を比べると、ジャワ人の方が顔が濃いらしい。
つまり、修学旅行生たちはみんな、僕と妻を見てこう思っていたわけだ。
「日本人女性の一人旅と雇われた現地ガイド。」
これこそ、修学旅行生たちの認識だった。そりゃ遠慮なくカメラも渡してくるわけだ。
その後も、至るところで修学旅行生から声をかけられる妻。カメラを手渡される現地ガイドじゃなくて僕。誰ひとり、僕に見向きもしない。
修学旅行生だけじゃなく、小さい子どもづれの家族にも声をかけられる妻。
小さな子どもたちと一緒に写真を撮って、お礼を言われる妻。
その写真に入ろうとしたら、母親からけげんな顔をされて、子どもに泣き出される僕。
そうやって何度も写真を撮り続けるうちに、僕の中に自然とある欲求が生まれた。
「現地の人と写真が撮りたい」
おそらくその時の僕は、修学旅行生たちが外国人観光客と一緒に写真を撮りたい気持ちの倍くらい、現地の中学生と写真が撮りたかったと思う。
一応いっておくと、自分が東南アジア顔であることは全く嫌じゃない。むしろ光栄だ。
ただ、ここまでみんなが写真をせがまれる中、僕だけ何のファンサもさせてもらえないことに、とてつもない寂しさを感じてきたのだ。
夢、叶う
そんな夢を抱きつつ、なんとかボロブドゥール遺跡のてっぺんまで登りつめた僕。
そこでは、たくさんの仏像がストゥーパの中に鎮座していた。
そんな仏像パワーも手伝ってだろうか。
突然、夢は叶った。
ヒジャブを被った3人組の女子中学生が、妻に写真を撮ってくれるようせがんできたので、いつもどうりカメラを受け取ろうとした時だった。
女子中学生は、ジェスチャーで「あなたも入って欲しい」と意思表示してくれたのだ。
ようやく、インドネシアの女子中学生と一緒に写真が撮れる。
あぁ、嬉しい。ようやく願いが叶った。
その嬉しさは、僕がまだ小学生のころ、地元の公衆トイレから出てきた池谷直樹さんと握手をしたときに匹敵する嬉しさであった。
なぜ、そこに池谷直樹さんがいたのかは謎だが、今はそれは本題じゃないのでそっとしておこうと思う。
ようやく写真を撮ったあと、女の子の1人に撮った写真を見せてもらったところ、照れ笑いを浮かべる女子中学生の横に、テンションが上がりすぎて満面の笑みの僕がいた。
写真を見た感想は、
「満面の笑顔の僕って、無表情の時より東南アジア顔だな」だった。
そんなボロブドゥールの思い出。
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