ヘッドスパに行ったら、いびきが気になりすぎて眠れない(前編)
モデルに憧れている。
モデルがしそうなことは、基本的に一度はやってみようと思っている。
水を毎日2リットル飲んだり、16時間断食をしてみたり。
ただ、勇気がでないものが一つあった。
「ヘッドスパ」だ。
万年、肩こりに悩まされているので、頭よりも先に肩周りをほぐして欲しいという願望が強く、頭は後回しだった。
「頭は後回し」という表現は、完全にバカのそれだが、今はそっとしておいて欲しい。
そんな中、ヘッドスパを決心する出来事が起きた。
それは、いつもの美容院での出来事。
その日、シャンプーとマッサージを担当してくれた初対面のアシスタントが、僕の頭をマッサージしている途中に声をあげて笑い始めたのだ。
ちょうどその時
「あー美容室というところはやっぱりいいところだな。シャンプーどころかマッサージまでしてもらって、まるで俺はどこかの戦国大名じゃないか」
と、ふざけた感想を頭の中に思い浮かべたところだったので、急に自分がサトラレにでもなって、全てが思念として伝わってしまったか。
と心配したが、そういうわけではなかった。というか、大名ではアシスタントは笑わない。
ちなみに、サトラレを知らない人は「サトラレ オダギリジョー」で検索してみて欲しい。
アシスタントの人が言うには
「こんなに頭が固い人、初めて。」
とのことだった。
このセリフは、教授と不倫関係に陥った愛人が、結婚をせがむものの、それに対し、教授が自分の博識を披露しながら自分が今の奥さんと離婚して、愛人と結婚することが、いかにデメリットだらけかを語った際、その愛人が放つセリフであり、初めて出会ったアシスタントに言われるセリフではない。
まして、私はその時「美容室の客はまるで大名だ」というとんでもなく頭ふにゃふにゃなことを思想していたのだ。
どうして、頭が固いということになるのか。
だが、よく聞くと、そのアシスタントのいう「頭の固さ」は、決して思考が偏っているとか、人の意見を素直に受け入れないという意味のものではなく、「頭皮がカチカチ」という意味のものだったらしい。
「頭痛とかないですか?」「ボーッとしてしまったりとか?」
と立て続けに聞くアシスタントの言葉に
「日々ボーッと生きていますが、頭痛はないです」
と頭すっからかんの回答を披露して、ドン引きされたところで、僕は決意した。
「そうだ、ヘッドスパに行こう」
もしかしたら、僕が今ひとつ物事を真面目に考えられないことも。毎日ボーッと生きていることも。頭皮の固さが原因なのかもしれない。
ありがとう、美容院の初対面アシスタント。初めはゲラゲラ笑うあなたに対して、「なんだこの失礼な奴は」と頭の固いおじさん上司みたいなことを考えてしまったりもしたけれど
あなたのおかげで僕は長年その一歩を踏み出せずにいた「ヘッドスパに行く」という願望に対して正直になれました。
ただ、そこは美容室。でも、そこですぐに「じゃあヘッドスパしてよ」と言えないのが、僕です。やはり頭が固いのかもしれません。
というわけで、美容院の帰りにヘッドスパを予約するという、なんだかわけのわからない展開に陥り、後日ヘッドスパにいくことになったわけですが、ヘッドスパには新たな葛藤が待っていたのでした。
その話は、また次回。
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