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監査チーム内の不正ディスカッションの方法【監査ガチ勢向け】

監基報240で必須とされている監査チーム内での不正ディスカッション、楽しいですよね! 楽しくない? どうせやるなら、楽しくやりましょう!


監査法人で30年強、うち17年をパートナーとして勤めた「てりたま」です。
このnoteを開いていただき、ありがとうございます。

監査チーム内の不正ディスカッション、こんなことになっていませんか?

  • パートナーとマネジャーだけしゃべっている

  • 最初から決まっている結論を確認するだけ

  • 不正と関係ない話ばかりしている

  • 主要メンバーが欠席したり、出入りするメンバーが多かったり

そんなことで要求事項を充足しているのか!という堅い話は抜きにしても、大勢参加してムダな時間を費やすのは避けたいですね。



監査チーム内不正ディスカッションの効果

やれと言われるからやるだけ、と思われているかもしれませんが、こんな効果が期待できます。

各メンバーの知識を共有する

パートナーやマネジャーが感じているリスクをシニアスタッフやスタッフに伝えることはもちろん重要。
それだけでなく、第一線で監査現場を担っている若手メンバーも、貴重な情報や気づきを持っていることがよくあります。

各メンバーの職業的懐疑心を高める

「職業的懐疑心を高めよう!」「おー!」と掛け声で高められるほど簡単なことではなく、手を変え品を変え働きかけないといけません。
不正ディスカッションはそのための貴重な機会になります。

監査チーム内にまじめに監査する雰囲気を醸成する

不正ディスカッションが盛り上がると、チーム一丸となって同じ目標を共有する意識が芽生えます。
普段は的外れなことばかり言ってくるパートナーも、いいかげんに見えたマネジャーも、まじめに監査を語る姿を見ると見直すことになるかもしれません。


監査チーム内不正ディスカッションの進め方

みんなでアイデアを出すタイプのミーティングでは、拡散と収束という二つのフェーズに明確に分けることが重要です。
拡散フェーズはアイデアの量で勝負。思いつくまま出し散らかします。
そのアイデアを収束フェーズで吟味し、今後検討していくものを選別します。

不正ディスカッションもこれに準じて、拡散、収束というフェーズで取り組むのが有効です。

拡散フェーズ

いわゆるブレーンストーミング(BS)ですね。BSのルールはご存知ですか?

  • 質より量

  • どんなアイデアも歓迎する

  • 人が出したアイデアを批判しない

  • 人が出したアイデアに節操なく乗っかってOK

次のような手順で進めるのがよいと思います。
対面で実施することを前提としています。

  1. 最初に大きめの付箋を配り、10分~15分使って各自でできるだけたくさんの不正リスクを付箋に書く(一つのリスクについて付箋1枚)

  2. 一人ずつ、自分の書いた付箋から一つを選んで説明しながらホワイトボードに貼る

  3. ほかの人も似たリスクを書いていれば、自分の順番を待たずに2.の付箋の近くに貼る

  4. 新しく思いついたリスクがあれば、新たに付箋に書いてOK

  5. 全員の付箋がなくなれば終わり

何十人もいる大きな監査チームであれば、グループに分かれて実施するのが効率的でしょう。

私の経験では、拡散フェーズはかなり盛り上がります。

収束フェーズ

拡散フェーズでたくさん出てきたリスクから絞り込んで、当期の監査での不正リスクの候補を決定します。

絞り込みは、発生可能性と影響額の2軸から行います。
発生可能性は、不正のトライアングルが参考になります。
影響額は、十分に小さければ重要な虚偽表示のリスクに該当しないこともあります。もし影響額ゼロのものがあれば、監査に関連するリスクではない、と言えるでしょう。

参加者全員で収束フェーズまでできればよいのですが、実際には時間がないことが多いと思います。
その場合は、少数のメンバーで選別作業を続けます。


不正ディスカッションを成功させるポイント

コツというか、留意事項を数点。

❶ 若い人たちにいかに発言してもらうか

パートナーやマネジャーは放っておくと自分たちでしゃべってしまいます。シニアスタッフとスタッフは、なかなか口がはさめず、結局発言しないまま終わりかねません。

パートナーやマネジャーがリスクに気づけば、不正ディスカッションの場でなくても監査計画の変更を随時検討できます。
ところが若手メンバーは、よほどでなければ期中に声を上げづらいと思います。

発散フェーズを上記のように進めることで、シニアスタッフやスタッフの発言も促すことができ、またディスカッション終了後も気づいたことを伝えやすくなります。

❷ 拡散フェーズでは先々のことを心配しない

ブレーンストーミングで「これを出してしまうと、あとで負担が増えるなあ」と考えると、議論できなくなってしまいます。

収束フェーズで絞り込めばよいので、拡散フェーズでは無邪気に発言しましょう。
文書化では全部を書かなくてもよいと思います。

❸ 早めに日程の確保を

主要メンバーが参加しないと最初から参加者のモチベーションが下がってしまいます。

わざわざ書くまでもないですが、日程は早めに調整し、できるだけほかの予定を入れないように全員の努力が必要です。


おわりに

監基報に書いてあるとおりに実施する方が、結局監査は楽しくなると思っています。
(品管方面からは「当たり前のことを書くな」、監査現場からは「書いてあるとおりにできれば苦労しない」と両方からお叱りをいただきそうで、ちょっとドキドキしています)

不正ディスカッションでも、ぜひ盛り上がってください。


最後までお読みいただき、ありがとうございます。
この投稿へのご意見を下のコメント欄またはTwitter(@teritamadozo)でいただけると幸いです。
これからもおつきあいのほど、よろしくお願いいたします。

てりたま

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