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正しいワインの始め方5

キャリア20年のソムリエが友達に話していた、自然にワインに親しめる5つの話  その4

ワインの注ぎ方・まわし方

ワインを飲むのに作法やルールはいらないと思っています。

でも、マナーは知っていても良いかなぁ とも思っています。

ワインオタクや蘊蓄を語りたがる人の中に、「ワインはこうじゃないといけない!」的なことをいう人がいます。特にワイン初心者やあまりワインに興味がない人の前でいろいろ言われると、とても残念に感じます。せっかくワインに親しもうとするきっかけの時に、面倒くさい事を聞かされてしまったら入口を閉ざされてしまうように思います。

ああだこうだというのはごく一部の人で、大半の人は何も言いません。しかし、マナーを知らない人の行為で不快に感じたりする人もいるかもしれません。なので、知っておいても損が無い程度のマナーについてお話します。ルールや作法ではなく、身だしなみ的なことですのでご参考までに。


お店で困ることがあるのですが、ワインをお注ぎする時にグラスを持たれる方がいらっしゃいます。ビールや日本酒をお酌する時には当たり前の事ですが、ワインでそれをやるとソムリエとしてとても困ります。とくにスパークリングワインのグラスは口が小さいので、グラスを持たれるととても注ぎ辛いのです。また、ビールグラスと比べるとグラスが非常に薄いので、重厚なシャンパーニュの瓶などがリムと呼ばれる飲み口の部分に触れるとそれだけで欠けてしまう恐れがあります。お願いですので、注がれる時はワイングラスは置いたままにしてください。どうしてもグラスを持たないと失礼じゃないかと思う時は、写真のように指2本でグラスを抑えるように添えてください。



次に、自ら注ぐ時のことですが、自分のグラスでも他人のグラスでも注ぎづらいなぁ、こぼしそうだなぁと思ったら、迷わずグラスを持って注ぎましょう。その時はグラスの脚を持つとスマートです。人のグラスの場合、自分の指紋を付けずにすみます。公の場でもこぼしてしまうことを考えばこれの方が良いことは間違いありません。


さて、グラスにワインが注がれたら次は飲むわけですが、飲むのにはグラスを持たなければなりません。

どこを持つか?

ワインスクールに行けば、「ステム(脚)を持ちましょう」と教えてくれます。恐らく90%以上の人が言われずともそうしていると思います。

しかし、絶対に脚を持たなければだめなのでしょうか?

そんなことはありません。グーグルの画像検索で「天皇陛下 乾杯」でググってみてください。平成天皇(現上皇様)は常にボウルと呼ばれるグラスの膨らんだところをお持ちになって乾杯をされていらっしゃいます。エリザベス女王もボウルをお持ちになります。しかし、上皇后美智子様は脚をお持ちになります。現在(令和)の天皇皇后両陛下も脚をお持ちになります。

結論は、「どちらでもいい」です。脚を持つ理由をワインスクールでは  ①ワインの温度を上げないため ②グラスに指紋を付けないため  ③スワリング(回すやつ)がしやすい為  等と教えてくれると思います。でも、どっちでもいいんです。上皇陛下や多くの国家元首の方々がボウルの部分をお持ちになるのは、ご自分が持ちやすい持ち方で持って、グラスを落としたりこぼしたりというリスク回避の意味も大きいと思います。国家を代表して出席する晩餐会では絶対に失敗できませんから。

ちなみに、天皇陛下と乾杯する方々は、必ず陛下と同じ持ち方をしてます。絶対に合わせますね。これは暗黙の決まり事なのでしょうか。


さて、飲みましょう。

グラスを持っていきなりグルングルンぶん回す人がいますが、あれはやめましょう。回すのが良くないのではなく、いきなりはやめましょう。まずは、グラスを揺らさないで回さないで香りをかぎます。次に、10回くらい回して香りをかぎます。その時の香りの差が一つの楽しみなんです。物にもよりますが、ほとんどのワインは10回くらい回すと香りがワッと出てきます。これを「香りが開く」と言いますが、どれだけ開くかを楽しみましょう。だから、回す前と後での香りの違いを見るために、いきなりぶん回しちゃだめですよってことです。

まわし方は

ただちゃぷんちゃぷん揺らせばいいわけではありません。回し方によっては他人に迷惑をかけてしまうので、これはマナーとして覚えておくとよいですよ。

必ず「反時計回り」に回します。もし時計回りにぶん回して、ミスってワインが飛び出した時に、右隣の人にかかってしまいます。反時計回りであればそのようなことは防げます。なので、必ず反時計回りに回しましょう。

上手く回せない人は、上の写真のようにテーブルに置いたままの状態で回してみてください。どれくらいの強さでどうなるか、感覚を掴んでから持ち上げてまわしてみましょう。香りの開き方を楽しんでください。


余談 : シャンパングラスのお話

この写真は、両方ともシャンパングラスと呼ばれるものですが、なぜ、こんなに形が違うのでしょうか。正確には、左側がクープグラス、右側がフルートグラスと言います。この2つ、目的が違うからこんなに形が違います。シャンパンの美味しさは、香りと繊細な泡の刺激、立ち上るきめ細かい泡の美しさ、そして味です。これらを楽しむにはフルートグラスの方が適した形なんです。なので、美味しく楽しむためにはフルートグラスがベターです。  

では、クープグラスはというと、パーティー用のグラスです。パーティー用と言っても、シャンパンタワー用という事ではありません。クープグラスの歴史は18世紀のヨーロッパの社交界までさかのぼります。諸説あります。

①パーティーでおつまみのビスケットを浸して食べることがあったので、浸しやすい形にした説 

②マリーアントワネットやポンパドール婦人の乳房のイメージ(当時の貴族のノリみたいな)説 

③リムが広い分、ワインと共に空気を飲む量が減り、ゲップが出にくいという説  

④フルートグラスと違い、飲む時に顎を上げないで飲める為、会話しながら飲める。と共にご婦人が気になる首のしわを見せずに済むという説。等々

私的には、④の説を信じていますが、①も少しありかなぁと。フランス人って、カフェオレにクロワッサン浸して食べますから信憑性ややありかな。③のゲップ説は、シャンパンですからどう飲んだって出るでしょ? ②の乳房説は、説自体がノリで作った感じにも思えますからね。





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