すさんだ夜とフライドチキン

今日は、無性にむしゃくしゃしていた。

証明写真が必要な用事があったため、約束の時間ぎりぎりにコンビニのネットワークプリントで証明写真を印刷しようとしたら、150円しか持っていないことに気が付いた。ディスプレイに表示された金額は200円。50円足りなくて、その予定ごとふっとんだ。

私が悪いのはわかっている。

わかっている。私が悪い。でも、200円の表示と手元にある150円が同時に目に入った瞬間、なんかあらゆることがどうでもよくなってしまった。その、どうでもよくなってしまったという気持ちで、私はアルバイトの面接の機会を逃し、アルバイトで手に入るはずだった金額も逃した。

私が悪いのはわかっている。いや、ドタキャンして本当にごめんなさい。

でも、なんだか自分の悪さを認めたくなくって、無性にむしゃくしゃな気分が止まらなくなって、むしゃくしゃしてる自分に気が付いたら、これまたなぜだか肉が食べたくなって、近くのフライドチキンのお店に行った。

初めて頼む、バリューボックス890円。手持ちはなかったから、恥ずかしいけどクレジットカードをきった。お姉さんが差し出したかごの中には、チキンフィレオサンドに、骨なしチキンに、ポテトフライ、アップルパイ、さらにはコーラが付いてくる。日本でここまで茶色づくしの食事は、そうそうお目にかかれない。でも、なんかそのジャンキーさが自分の中のむしゃくしゃ心を満たしてくれた。

夜には、よくフライドチキンを食べていた気がする。留学先のフィリピンでは、フライドチキンは国民食。産業が乏しい国で、国内随一といってもいい有名国産企業はフライドチキンのファストフード店だった。1週間に2回はフライドチキンを食べていたけれど、帰国してから1年、ほとんど口にすることはなくなった。

久しぶりに食べるフライドチキンはフィリピンも日本も変わらずぱさぱさで、それをコーラで押し込んで食べた。懐かしかった。泣かないけれど、すさんだ気持ちが少し戻った。笑っちゃうぐらい単純だ。

店の前に飾られた白いスーツのおじさんに、女の子がHelloと話しかけていた。それを見ていたらにこにこしていた自分に気が付いて、わたしはわたしを少しだけ取り戻せた気持ちになった。かごが空っぽになったころには、私のむしゃくしゃは収まっていた。心を満たすには、まずはおなかからって誰が言ったっけな。簡単な人間が私だ。

むしゃくしゃする夜には、フライドチキンを。むしゃくしゃしないように、まずはおなかをいっぱいに。ね、そうすれば少しはいろんなことがましになる。

サポートしていただけるとうれしいです。サポートは読みものか、おいしいものに使わせていただきます。