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「こわい」とうまく付き合っていく

卒業後の進路を決めた。
念願の一番働きたかった場所で仕事ができることが決まった。

これであとは卒業までにきちんと単位を取り切って、論文を提出すればおしまいだ。ずっと欲しかった、就活の終わりを迎えてほっとしている。

はずだったけど。
なんだか、ちょっとだけ、もやもやしている。なんだか、私の進路はこれでいいのかな、なんて思っている。
贅沢なのはわかっている。一番私が望んだ場所だ。私が選んでこの結果にしたんだ。だから、えーっと、それでも。

一番もやもやしたのは、ご縁があったほかの会社にお断りのお電話をしたときだった。少し引き留めてくれて、それでも近い業界だから頑張っていきましょうと言ってくれて、うれしさとほんのひとさじの寂しさで電話を切った。

さみしかったのは、もしもの未来を切ってしまったからだと思う。
これでもう、「もしもあの場所を選んでいたら・・・」などという無責任で甘やかな未来を想像することができないからだ。

正直に告白すると、私はいま、未来のことがちょっとだけこわいのだ。

今まで、どことなく望んでいたけれど、決して口に出したりかなえようとはしてこなかった願いが叶う場所に、手が届きそうになった。想いが、現実に対処すべき事柄となって私に対峙しようとしている。急に、私なんかで大丈夫だろうかと不安になった。こんなことを言ったら怒られてしまうのかもしれないけれど。

未来のことを怖がっている。
そう気が付いた時に思い出したことがる。
留学先での奨学金の援助が決まった日のことだった。
ぼんやりとあこがれだった留学が、確かな資金源ができたことによって一気に目の前の現実になった。高揚感とともに、私で大丈夫か、と思わなかったわけではない。

でも、結局はそのこわさの先に私の新しい世界が待っていた。

踏み出すことをやめなくてよかった。今の私だったらそう笑って言えるけれど。それでも、自分の全く知らない新しい世界に行くことを、私はうれしさやたのしみだけでは語れない。そこにあるドキドキや不安を隠し通して生きていくことは、まだ難しい。

あの時感じた気持ちに似たものを、いま私は感じている。
残念なことに、あのときから何も成長せずに、新しい世界にまた怖がりながら足を突っ込もうとしている。

うまく消せないけれど、心がゆらゆらとしてしまうけれど、だからこそ、今の私の中に「こわい」がある、このことを確かに覚えておこうと思う。こいつを打ち消すことはできないけれど、うまく付き合っていくことは、きっとできる。

そう、信じて。いつかまた、この気持ちのことを笑って話せる日が来ることを信じて、私はきちんとこわがっていきたい。

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