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まず、私ができることを考える

15年くらい前、入塾してきた高校2年生くんの教科書を借りたら、燻されたようなにおいがした。そう伝えると、彼は「タバコは空腹を紛らわせる」と言っていた。

それを聞いて、私はお弁当を1つ余分に作ることにした。それで、タバコの本数が減ったかどうかは知らないし、それで、彼のお腹がいつも満たされるわけではなかったけれど、それが、そのときの「私にできること」だった。

次に、そのお弁当を一緒に食べる時間を作った。その時間に、その日に彼がしたこと、彼に起こったことを聞き、私が日頃していることや思っていることを語った。

入塾前の面談は学校の担任の先生とともに、手続きは、遠くに住むお母さんと連絡をとり行われた異例の入塾。結局、ご両親には一度も会えなかった。彼は、いろんなことがある意味、破天荒だった。話を聞けば、様々な問題を抱えていることは明らかだったけれど、私のできることは多くはなかった。

でも、なくはなかった。

今、大人の事情に振り回される子どもがたくさんいる。そして、そんな子どもたちが何か事を起こす度、家庭の問題、親が悪いという人がいる。おそらくそれは正しい意見なのだろう。それでも、どれだけそんなことを言ったって、子どもたちの問題はなくならない。そして、その言葉が子どもたちを追い込み、状況をますます悪くしているとすれば、それはもはや、家庭の問題でも、親の問題でも、学校の問題でもなく、私たちの問題となる。

私は、そう考えている。

だから、どんなにおせっかいに見えたとしても、関わることを辞めない。どんなに非効率にみえても、自分のできることを探し、大人としてするべきことをしたいと思っている。

あれから15年経った今、当時の高校2年生は31歳になり、今でも節目節目はもちろんのこと、何かというと遊びにきてくれたり、連絡をくれたり、私だけではなく後輩たちへの心遣いを送ってくれたりする。

先生という仕事は、何年か経ったあと、かつての子どもたちが見せてくれる笑顔で報われる仕事だと、昔、何かのテレビドラマで言っていたけれど、本当にそうだと感じている。

#仕事の心がけ

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