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露天風呂

年末年始休暇を終え、島に戻ってきて数日が経つ。島暮らし9年目の自分にとっては、日常の景色が島の景色に塗り変わってきて、大阪の実家に帰った時よりも島に帰った方が「あぁ、日常に帰ってきたな」と思うようになってきた。

実家の二階から

大阪の実家に帰ると、お盆休み以来に会う甥っ子姪っ子たちの成長を感じる。身長もぐんぐん伸びているし、ついこないだまで高校受験の話をしていた甥っ子は大学受験の話をし始め、姪っ子は数か月後に迫った高校受験に向けて勉強をしている。受験する子供は、3年に1回は正念場を迎えて忙しいもんだなと思いつつ、成長期を迎えている人間独特のエネルギーを羨ましくも思う。

祇園花月

実家の中にいるだけでも変化の嵐だけど、外に出れば更なる刺激に出会う。お金を払えば映画館なり劇場で娯楽を楽しませてもらえるし、観光地に赴けば数多あるお店やメニューの中から食べたいものに迷う。近頃は歳を重ねたせいか、新しい場所での新しい刺激は嬉しい一方で、新しい場所の中でも居心地のいい場所を探し気味なところもある。

神勝寺の庭園

今回の旅先で印象的だった場所は、島の元同僚に教えてもらった神勝寺(広島県・福山市)である。お寺とミュージアムが綺麗に同居していて、広めの敷地といえどひとつの場所に色んなものが詰まっている場所だった。
年が明けてすぐだったこともあって、できる体験が限られていたけれども、お昼に一種類しかないうどんをゆっくりと頂き、一頭だけ飼われているロバを観察して、ぐるっと庭園を周って最後は露天風呂に入る。

露天風呂は貸切状態で、このうえない贅沢だった。ぽかぽかと温もりながら、目の前の竹林を眺める。ただただぼんやりしているだけでも、風に揺れる竹の音を聴きながら贅沢な気持ちになるのに、光がぱっと差した瞬間に目の前の光景が一気に変わることにいちいち感動していた。
いつも島でも自然に囲まれているのに、わざわざ外でもこんなことを感じるのは不思議。当たり前のものに、静寂の中で向き合うということも大事なんだろう。

神勝寺の露天風呂

帰省中は落ち着いて初詣も出来なかったので、島に戻ってから近くにある小さな神社にお参りした。お参りのあとに裏道から抜けると、いつも見ている海が見える。そういえば、ここの海の魚をいつも食べているんだったなと、当たり前のことを思い出す。少しドライブをすると梅が白い花を咲かせていた。小さな変化ではあるけれども、嬉しい変化がいつもある。

三穂神社の裏道から

(文:島食の寺子屋・受入コーディネーター 恒光)