第2章 規制(レジ袋有料化)で環境問題は解決しない
海洋プラごみ問題解決手段としてはじまった、富山県方式
富山県方式とはなにかというと、今回のレジ袋有料化のモデルとなった、富山県にて先行して行われていた、海洋プラスチックごみ対策のことです。
原田さんは何度も、レジ袋有料化は富山県方式を参考にした、と言っておりますので、間違いないです。
では、富山県がいかなる理由でレジ袋削減に至ったのか。富山県がレジ袋有料化検討小委員会にて提出した資料を見ていきましょう。
この富山県提出資料によれば、レジ袋削減の目的は、「環境負荷の低減」、そして「海岸漂着物」である「プラスチック対策として有効」としてはじめられたことが説明されている。
つまり、現在のレジ袋有料化のモデルである富山県は、「海洋プラスチックごみ問題解決手段として有効な手段」としてレジ袋有料化がスタートさせたということです。
また、この会議の委員として出席なさっていた、富山県生活環境文化部長の須河弘美さんは、会議冒頭に同様のことをご説明されていた。
レジ袋削減によってごみの削減も期待できるというふうに考えました。当時、富山県内での1年間のレジ袋の使用枚数を3億枚とまず推計をしまして、この使用を全て止めれば約3,000トンのごみを削減できることになります。これは当時の県内一般廃棄物の約1%に相当するという推計です。
さらに本県の場合、海岸漂着物の8割は県内由来でございます。かつ、このうち人工物の9割がプラスチックでございます。海洋プラスチック対策としても、レジ袋削減に取り組むことが有効であると考えました。
レジ袋有料化検討小委員会(第2回)議事録
富山県生活環境文化部長須河委員
レジ袋有料化が決定した際、現地メディアでは、海洋プラスチックごみ問題解決手段として、富山県方式のレジ袋削減が採用されたことが報道されていた。
(補足情報:富山県の漂流ゴミ(ペットボトル)の多くは日本から)
富山県は漂着するプラスチック9割を解決のために、プラスチックでできているレジ袋削減に取り組んだわけですが、ここで疑問に思うのは、レジ袋削減が果たして漂着ごみ削減に効果のあるごみ対策なのかということです。
確かにレジ袋はプラスチックですが、漂着ごみとして大半を占めていないのだから、使い方処理がうまくいっている無害のプラスチックではないでしょうか。
現に、富山県提出資料は、レジ袋が海洋プラスチックごみの直接的な原因と断定もせず、いかに汚染しているかの説明すらしていない。レジ袋消費量を説明しているだけにとどめています。
申し訳ありませんが、富山県方式とは、「プラスチック漂着ごみ解決のために、レジ袋を削減すれば解決」するとした、トンデモ飛躍方程式だと言わざるを得ません。
レジ袋だけ減らしても意味がないんじゃないのかと、こういった批判については、今までも繰り返し申し上げているとおり、このレジ袋の有料化はそれ自身がなくなることでプラスチックの問題が解決をするとはそもそも考えてもいませんし、それは解決はしません。この目的は、レジ袋の有料化をレジ袋に限らず、プラスチック全体について持続可能な循環経済の在り方を考えるきっかけにしていただきたいと、それが我々の思いです。
小泉大臣記者会見録 令和2年7月3日(金)
小泉さんは以上のように記者会見にて語りましたが、レジ袋有料化のモデルとなった富山県方式が、海洋プラスチックごみ問題解決手段としてはじまった事実に関しては、いかようにお考えなのだろうか。
仮にレジ袋が海岸ごみの大きな割合で占めていても、全国に漂着したレジ袋(ごみ)は0.3%に過ぎないことを踏まえれば、全国レベルに適用すべき環境対策ではありません。
それに陸上から海洋に流出したプラスチックごみ発生量ランキングを見れば、海洋プラスチックごみの大部分が、日本ではなく小規模地域から流出していることが確認できる。
日本の58倍、21倍と海にごみを垂れ流している国々がアジアに集中しています。トップは中国。2位と大きく離してのランクインですので、海洋ごみ問題の元凶ともいえる国です。海洋に流入するプラスチックごみは年間800万トン(ジャンボジェット5万機)。
そして驚くべきことに、この上位の国々にアクションを求めることで、10年後世界の約45%のプラスチックごみ流出を防げるという。
またマイクロプラスチックに至っては、なんと日本周辺の(東アジア)海域では、北太平洋の16倍、世界の海の27倍。
海洋プラスチックごみの内訳
ここに列挙した海洋プラスチックごみを考える上で必要な統計の中で、レジ袋が海洋プラスチックごみ問題の原因と考えられる資料は見当たらない。
郵便学者内藤陽介さんは、海洋プラスチックごみ問題を解決するなら、レジ袋削減よりやるべきこととして次のようなことを提案されていた。
そもそも、プラスチックごみの削減を主張するのであれば、買い物をした後のレジ袋の中に入っている弁当や菓子など、個々の商品の包装等(もちろん、その中には一般人には過剰包装のように見えても、製品の品質保持のために必要なものも少なからずあるのだろうが…)を簡素化したほうがはるかに効果的なのではないのか。
内藤さんのご指摘通り、そもそも海洋プラスチックごみの大半を占めているのは、レジ袋などではなく、包装です。
こうした海洋プラスチックごみ問題の実態を知れば、いかに富山県の環境対策が間違った認識の下進められているかがわかります。
富山県はレジ袋チャレンジキャンペーンを盛り上げてくれているサポーターとしても名を連ね、「全県単位では最も早く、2008年4月からレジ袋無料配布廃止をスタート」「マイバッグ持参率は95%と全国トップの水準」と誇示されていますが、
不思議なことに海洋プラスチックごみの解決手段としてはじめたことには触れていません。
なぜでしょうか?
(以下のブログも参照してください)
称賛されていた「日本国民のエコ意識」
国連環境計画がプラスチック汚染に対する政府の措置を世界で最初に評価し、使い捨てプラスチック用品の問題と対策をまとめた報告書「Single-use Plastics: A roadmap for Sustainability」。(以後「報告書」)
この報告書は環境省・経済産業省運の名の下に運営されている「レジ袋チャレンジ」の参考資料としても使用されており、今回のレジ袋有料化問題を考える上で、重要な指摘がされているので、紹介させていただきたい。
経済産業省と環境省は、「レジ袋チャレンジ」で報告書を引用しており、主に「日本はプラスチックの廃棄量が多い」「世界はレジ袋規制してる」の2点をあげて、レジ袋有料化への「空気」作りに積極的な印象が受ける。
そしてこの報告書をもとにレジ袋有料化を進め、レジ袋有料化推進企業(イオンさん)も追随している。
報告書を参考したであろう小泉さんが、インタビューにて次のように言った。
規制、有料化したり、課税をしたり、もしくは使うことすらも禁止をする。レジ袋廃止、これって世界中で60カ国以上が取り組んでいて、日本は後発組です。
多くの外国がレジ袋を規制、有料化、課税、禁止しているのに、日本はしてない。統制派小泉さんはこれをもってして「日本は後発組」と批判した。
原田義昭前環境相は、プラごみ問題は国際的な常識とし、「本当に必要なものとそうでないものがあまり意識」してこなかった"エコを考えない日本人"に考えさせるきっかけとして、レジ袋有料化をはじめないといけない、とインタビューで答えた。
統制派だけの話を聞けば、日本は世界の潮流に乗り遅れて、エコ意識がないように聞こえる。そして統制派によって引用されている報告書が、日本批判の先鋒を担っているかのような印象を受ける。
しかし中身を確認すれば、その逆。
むしろ報告書では日本社会を下記のように高く評価していた。
つまり、報告書は「日本社会は規制なくとも、エコ社会を国民レベルで実現している」と評価していたんです。
しかし、小泉さんはじめとする統制派は、左派の典型的な捨象論法のように、こうした評価を意図的に無視し「日本は後発組」と批判。日本人の意識を変えるきっかけとして、レジ袋有料化を進めたわけです。
『税金下げろ、規制をなくせ 日本経済復活の処方箋 』(光文社新書) の著者、渡瀬裕哉さんはこの報告書を引用し、厳しく小泉さんを批判した。
統制派の認識では、レジ袋を規制、禁止しているからこそ、世界は日本より脱炭素社会に近づきつつあるとしているが、炭素税導入後の世界の実態は、日本と違い、エコ社会が全く根づいていないことが資料からわかる。
統制派の共通認識として、「欧米と日本では、消費者の意識がだいぶ違う」らしいが、いかに統計に基づかないご発言かがわかる。
(無断転載は禁止されているので以下のサイトからPDFをダウンロードし、付録部分を読んでいただきたい)
小泉さんは、多くの外国がレジ袋を規制、有料化、課税、禁止に舵を切る中、日本はしてない。これをもってして「日本は後発組」と批判したが、事の本質はレジ袋を禁止、規制しているかでなく、レジ袋有料化はプラスチックごみ解決に有効なのか。
有料化後の欧米では、エコ社会が本当に実現できているかといった常識が必要だったが、それを抜きにしたレジ袋有料化に終始こだわった。
小泉さん「国民の皆さんに認識してほしいのは(レジ袋有料化について)日本は遅れているということ。海洋プラスチックごみを少しでも減らすため、前向きなことをやりたい」
エコ実績が芳しくない欧米の体たらくから判断して、当然のことながら、レジ袋、プラスチック禁止等の環境規制は、果たして効果のあるものなのか疑問が残る。
この疑問については、「開発途上国および経済移行国に対して、環境上適正な技術の移転の促進やその実施に貢献してい」る、国連環境計画国際環境技術センター所長キースさんが報告書を踏え、興味深いご指摘をされていた。
キースさんによれば、
「特定の製品の禁止がプラスの効果をもたらすこともありますが、実証的な効果は見られない」。
「有効性を評価する十分なデータがないケースがほとんど」。
「製品を禁止するだけでは、プラスチック汚染の根本原因の解決にはなりません。」
「プラスチックは極めて用途が広く有用な材料であり、それを使用することが問題なのではなく、使い過ぎる、再利用やリサイクルをしない、そして、総合的に固形廃棄物を管理する制度の不備などが問題」だという。
統制派は、プラスチックごみ抑制目的にレジ袋有料化を計画したわけだが、一向に効果についての報告がない。
海洋プラスチックごみ問題解決とは関係のない「レジ袋辞退率」ぐらいです。
それもそのはず。
規制(レジ袋有料化)をしたところで、環境への効果はないからです。
規制は国民生活への干渉、制限を基本としますが、実効性のない、国民負担を強いる。こうした無意味な規制を環境省が推進するのは、動機として"愚かな国民"を啓蒙する、という考えが根底にあるからです。
環境省の広告活動からは、そうした露骨に国民を見下している意図が読み取れる。
(環境省が多額の血税で作成したであろう、国民に見立てた3Dアニメキャラは、「ぐうたらで不摂生」とバカにしている)(評判は低評価多 もこうさんも取り上げる)
(間違いがございましたら、資料と共にご連絡ください。文書校正もご教授お願いいたします。m(_ _)m)
今回のnote画像(GIF)デザインにいくつか質問がございましたので、ココナラを開設しました。
パワポや資料、広告、GIF等の作成ならお役に立てるかもしれません。これからも有益な情報を提供していきたく思っておりますので、よかったらお付き合いのほどお願いいたします。
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