第8話 内装の床、壁、天井は瞬発力で決める?
【結論】理想と現実との往復
つまらない結論を言えば予算の中から選択していくしありません。予算、実用性、イメージの鬩ぎ合いです。しかし、縛りがあるからこそ、あの手この手でなんとかイメージ(理想)に近づけようと考えるわけで、困難があるからこそ一層イメージを意識せざるを得なくなり、自分(造り手)が譲れないものを確認することができます。
イメージ に立ち戻り
内装作りは、いつでもイメージに立ち戻っては現実の仕事に戻りと、往復を繰り返し作業を進めていきます。
塩ビ、天然素材、塗装
ご存知の方も多いと思いますが、塩ビタイルとは、ポリ塩化ビニルと呼ばれる素材から作られたタイル状の床材です。安価で実用性に優れていますが、天然素材に比べれる人工的になってしまうのはいうまでもありません。
今回は、塩ビ、天然素材、塗装を選択して店内の雰囲気を作り上げます。
【床】 家の外か内か
・ホール
想定としては、ホール(菌屋客席)は「家外」なので、「土」を想定した肌感にしました。また、温かみのある色味にすることで、なんだか歩きたくなる感じ、人が右往左往する感じ、太陽に照らされた風の通しの良い乾いた地面を想像して選びました。
・小上がり
そして、小上がりに入ると「家に入った」という想定になります。床は本物の木を使い、ゴロゴロ寝そべっても気持ちの良い感じにしました。そして、第6話の写真の円卓をおきます。ここで、茶道、書道、生花の教室をやりますので、簡素で質素な濃い目の色味にしました。4畳ほどの小さい空間ですが、大きい窓もあり、呼吸感のある落ち着いた小間となります。
・防音室
ここも「室内」想定です。冷静に練習したいところですが、ちょっとホッとして欲しい気持ちも込めて少しピンクよりの色味の木目調にしました。コーヒーやお茶でも飲みたくなる雰囲気です。(練習後は菌屋へどうぞ。笑)
・トイレ
とっても狭いんです〜。なので、ちょっと楽しい感じにしてみました。
乞うご期待🎶
・厨房
実は「土間」っぽくしたかったのですが、実際には配管の関係で客席よりも25cmほど上がるため、室内想定です。なんといってもスタッフがすべらにように、掃除しやすいような材質のものを選び、ここは実用性重視ですね。(10/17現在、サンプル取り寄せ中〜)
【壁】
カウンター下は、血の色
カウンター下の腰壁は血の色です。カウンターは料理を受け渡す神聖な場、エネルギー交換の場です。ここは、静かな血の色、静脈をイメージしていました。
塗り方は色々ある
壁は、主にジョリパットを使います。ジョリパット塗りとは漆喰やモルタルのように粘性があり、仕上げ材としてモルタルの下地に塗って外壁を形成していきます。
色の選択もさることながら、塗り方によって雰囲気が変わりますね。新宿にショールームがありますので、ご興味ある方は行ってみてください。サンプルたくさん、壁だらけで楽しいですよ。(フラッと行くと叱られるので、予約してね。)
【天井】 障害物競争?
主に塗装ですが、それだけでは何かつまらない。かといって何か施そうにも、空調やライトなどの障害物が有りなかなか雰囲気が出しずらいところで、現在(10/17)苦戦中です。この店舗は、冒頭の図面をご覧になってお分かりのように細長〜い空間なので、何か長〜い "線" を通したいのです。
う〜ん。これも乞うご期待!(自分に乞う期待…泣汗)
塗装の色味は主に、日本塗装工業会の塗装用標準色見本調から選び出します。これもみてるとキリなく、楽しいな。
【決め手】 瞬発力を鍛えるために重要な2点
とにかくスピーディー、迅速に決めていかなければならないので、瞬発力が求められます。これは、文字通り「力」なので鍛えることができます。とはいっても普段から決め事をたくさんこなす、ということではないような気がします。重要なのはこの2つです。
① イメージ(理想)をなるべく具体的にはっきり持つこと。
② ①に向かって突き進む意欲を強く持つこと。
これは、何にも共通することだと思います。経営も、芸術も、教育もです。いつでも理想を持ち続け行動することが、人が人らしくいられることだと思っています。
内装作り、勉強になるな〜。
【御礼】
最後に、様々な仕上げ材のサンプル取り寄せに快く応じてくださった、株式会社TOAStの田畑さんにお礼申し上げます。「いつもバタバタですみません!」と謙虚で、愛称 "田畑バタバタ" さんは、将来有望な若き建築家です。