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交通事故のケガで賠償してもらえるものは?

交通事故でケガをすると「相手の自動車保険」で賠償してもらう、または「自分の自動車保険」で対応する方法があります。
治療費の他にどのような項目があるのか見ていきましょう。

損害賠償とは?

停車中に追突される(被追突)など100:0の事故でケガをした場合には、相手に賠償してもらうのが当然と言えます。100:0だけでなく70:30ぐらいまでなら相手の保険会社が対応してくれると思われます。

交通事故の損害賠償は、事故でケガをされた方の気持ちの問題が絡むので、保険会社の担当も状況を総合的に考えながら金額を提示します。

損害賠償とは「損害を受けた人に対して、その原因を作った人が損害の埋め合わせをすること」です。
例えば、平らな道路をイメージしていただき、ここに穴をあけてしまったとします。穴をあけてしまった場所に土を入れて埋めたり、アスファルトを入れて平らにならすことが「賠償」です。
凹んだままであったり、埋めすぎて凸になっていてもいけません。
特に自賠責保険では、このあたりを全ての被害者に対して「公平」に賠償するために細かに規定をして、賠償できる項目を決めています。
また、賠償範囲も保険会社とは別の「損害保険料率算出機構」で「誰でも均質で適正な補償を受けられること」ために調査され決められています。
では、どのような項目で賠償してもらえるのでしょう。

どんなものが賠償されるのか?

ケガの賠償は、すべての車についている「自賠責保険」が基本になり、自賠責保険の限度額(120万円)を超えたり、自賠責保険では支払えないものがある場合に任意保険(対人賠償保険)が使われます。
しかし、賠償項目は自賠責保険と同じと思って間違いはありません。

大きく分けると「治療費」「通院交通費」「休業損害」「慰謝料」です。
その他、入院した場合の諸雑費や12歳以下の子供の場合の看護料などもありますが、一番多い「捻挫・打撲」のケガをされた方を念頭に置いて、基本的な上の4つをみていきます。

治療費

病院での治療費です。
総合病院へ救急搬送される場合もありますし、その後近隣の整形外科へ通院することもあります。処方箋がでて薬局で薬ももらうと思います。
また事故状況にもよりますが、柔道整復師が施術という対処療法を行う「整骨院」への通院が認められる場合もあります。これらを治療とし、治療費が支払われます。
任意保険会社が直接医療機関から請求をもらい支払う場合は、窓口で立て替えることは無いので、賠償してもらった感はないと思いますが、自賠責保険の限度額である120万円にこの治療費は含まれます。
治療費は「自賠責料金」で支払われるので、通常健康保険で窓口支払いしている金額より高額となります。

治療費は必ず窓口支払いが無くなるわけではありません。状況によっては健康保険証を使用したり、労災保険を使ったり、窓口での立替払いが必要になったりします。このあたりは状況によって担当者と打ち合わせすることで変わりますので、ご注意ください。
立替払いをした場合も治療費として保険から返金されます。

眼鏡の損傷も治療費の一部となる

意外な点として、ファッションのための眼鏡・サングラスは対象外ですが、視力矯正用の眼鏡を交通事故で破損した場合には「治療費」として50,000円まで賠償されます。眼鏡にはコンタクトレンズも含まれます。
眼鏡は身体を補完するものとして扱われているわけです。
もし事故で損傷した場合には、ケガの担当に伝えれば対応してもらえます。

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通院交通費

治療のために通院をする際の交通費もケガの賠償として支払い対象となります。「必要かつ妥当な実費」とされています。
公共交通機関や自家用車による通院の他、タクシーの利用も「必要かつ妥当」と認められれば利用は可能です。

自家用車による通院は、ガソリン代として「15円/km」と算定されます。地方では自家用車による通院が大半ですし、最近はインターネットで検索でき、保険会社が通院日は把握しているため頼めば明細書を書いてもらえます。

公共交通機関の交通費も毎回同じルートの場合がほとんどなので、ルートと金額を明細書に書けば計算は保険会社がしてくれます。

注意したいのは「通勤経路上に医療機関がある場合」です。
基本的に勤務先から交通費を支給され定期券を持っているはずなので、経路上の途中下車も可能で交通費がかからないと思われます。これは「必要かつ妥当な実費」とは認定されません。

損害賠償は「損害の埋め合わせをすること」と書きましたし、道路にあけてしまった穴の話も書きました。事故が原因で治療することになっても、交通費は損害を受けていません。この状態で交通費をもらうことは、穴を平らにするのではなく、上に盛ってしまうことです。これは公平ではなくなってしまうのでご注意ください。

休業損害

ケガが原因で仕事を休んだ場合には「休業損害」として保険から賠償されます。ここでは細かな規定に従って説明はしませんが、会社から給与をもらっている人だけでなく、自営業者も対象になります。さらに家事従事者と言っていますが「主婦」も休業損害を支払ってもらえます。
自分が対象になるかどうかは、保険会社の担当に確認すると必要書類の提出を依頼されるので、それで判断がされます。

給与所得者は自分で記入するのではなく、会社に「休業損害証明書」を書いてもらいます。欠勤や遅刻・早退だけでなく、有給休暇(半日休暇・時間有給休暇を含む)も対象になります。有給休暇は給料が支払われるので損害にならないのではないか?と思われるかもしれませんが、事故でケガをしなければ有給休暇を消費する必要はなかったとして「損害」となります。

ご注意いただきたいのは「傷病休暇」という休暇がある勤務先です。これは病気やケガのための休みなので、これを使って休んだ場合には休業損害は対象外となります。

慰謝料

損害賠償の項目で一番思い浮かぶのは、この「慰謝料」だと思います。
他の賠償項目は、損害賠償の原則である「損害を受けた人に対して、その原因を作った人が損害の埋め合わせをすること」にイメージが合致しますが、慰謝料はそもそも損害ではないわけです。

車や自転車などのモノは損害が明確で、埋め合わせもわかりやすいので、それ以外の「慰謝料」というものはありません。
しかしケガの場合には、目に見えない損害というものは存在します。
治療でケガは治っても、まだ痛い気がするとか、今までつらい思いをした、治療中は生活に不便が生じたとかの「目に見えない損害」を金額にしたものが「慰謝料」となるわけです。

ただ目に見えないものだけに基準が無いと不公平になります。
そこで自賠責保険では慰謝料の規定があります。
2020年4月以降の事故では以下の計算式となります。
 日額 4,300円×実治療日数×2倍
実治療日数とは医療機関へ通院した日数です。
例えば2か月間で30日通院した場合には、
 4,300円×30日×2倍=258,000円
の慰謝料となるわけです。

この計算式を見ると「じゃあ2ヶ月毎日通院すれば
 4,300円×60日×2倍=516,000円
になるのか?」と思われるかもしれませんが違います。

実治療日数は治療期間の範囲内」という規定があります。
要するに 「実治療日数は『通院日数の2倍』と『治療期間』を比べてどちらか少ないほうを採用する」という意味です。
上記の例で計算すると
2ヶ月毎日通院ということは、
 60日(通院日数の2倍) = 60日(治療期間)
となり、4,300円×60日=258,000円となります。この例だと金額は変わりません。

毎日通院しても慰謝料は増えないということにご注意下さい。

まとめ

損害賠償とは「穴埋めをすること」であって、損害以上のものをもらえるわけではないのですが、ケガの賠償には「慰謝料」という目に見えない賠償があることがわかりました。
しかし公平性を保つために慰謝料も規定があるということです。

目に見えない損害を賠償してもらえるとなると、極わずかですが困った人たちもでてきます。交通事故の損害賠償で「もうけてやろう」という人たちもいるわけですが、そんな体験談もお話しできるかと思います。

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