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「減資で税金は安くなるのか」 <第2回> 税メリットまとめ 資本金と資本金等の額

ここ数年、中小企業のみならず大企業まで減資をして税制のメリットを受けようとする会社が増えました。会社の実態は変わらないのに節税効果がある「減資」とは一体なんなのか、税メリットが出るための要件があるのか、について書てみたいと思います。

第2回は税メリットまとめですが、「資本金」と「資本金等の額」に分けて税メリット記載しています。この2つの言葉を理解することが重要になるので、第1回を一読されてから見ていただけると嬉しいです。


1.資本金の減少(資本金が1億円以下になること)による主な税メリット

①外形標準課税の適用がなくなる

 外形標準課税は資本金1億円の法人に課税される事業税の一つです。人件費・地代家賃・支払利息・単年度損益(利益)をベースに課税される付加価値割と資本金等の額をベースに課税される資本割で構成されます。付加価値割の単年度損益はマイナスの時はゼロでカウントするので、赤字でも課税が発生します

ちなみに、福岡県で資本割の税率は0.5% 付加価値割の税率は1.2%
例えば資本金・資本金等の額2億円の会社で赤字の場合、資本割だけで

2億円 × 0.5% = 100万円 かかってしましまいます。

実際には、資本金等の額がもっと大きい会社が多いですし、これに付加価値割も乗ってくるので、かなりの納税額になるわけですね。

②法人税率
 本来23.2%の税率が、年800万円の所得まで15%で課税されます。

これは最大で
800万円 × (23.2% - 15%) = 656,000円
の影響になります。

※ちなみに「所得」とは、法人税を計算する上での利益のような概念です。決算書上の利益に法人税の申告書で③の交際費やら調整すべき項目を足したり引いたりして、法人税を課税する利益(所得)を計算します。


③交際費課税
年800万円まで交際費が損金算入できます。

一般的に勘違いされがちなことですが、決算書の中では「交際費」はもちろん費用として計上されてるのですが、資本金1億円超の会社においては、法人税を計算する過程で交際費は経費から除外されます。

交際費が多い大企業は、交際費で資金流出するのに加えて、税金計算上経費にもならず、その分税金もかかるわけで、たくさん資金流出するわけです。。

一方で資本金1億円以下の会社では、年間800万円までの交際費は法人税を計算する際も費用としてそのまま認められます。

ちなみに、よく居酒屋の飲み放題付きコースって5000円以下の設定になってますよね。これは現在の交際費の規定で、「一人5,000円以下の飲食で一定のものは交際費から除く」という規定が少なからず影響してると思われます。
交際費から除く=税金計算上、経費から除外しない ということで、そのまま費用として認められるということですね。

さらに興味ある方はこちら ↓

④少額資産
 一つが30万円未満の固定資産の取得について、年300万円まで一時の経費とすることができます。

ここでいう「一つ」は一つで利用単位として成立するものです。複数のもので構成しないと利用できない資産はその複数の合計額が30万円未満かどうかで判定することに注意が必要です。


⑤欠損金の繰越控除
 前期から繰越してきた欠損金(過去のマイナス所得)について、当期の所得(利益)と全額相殺できます。(資本金1億円超の法人は、所得の50%までしか相殺できない)

たとえば、資本金1億円以下の会社で(ざっくりの説明です)
〇前期 所得△1,000万円 → 10年間繰り越して、翌期以後の利益と相殺できる
〇当期 所得+1,200万円
この場合、当期の所得1,200万円は前期の赤字と相殺できるので、
1,200万円 - 1,000万円 = 200万円 → 課税される 
となります。

一方、資本金1億円超の会社では、現在の法律では、同じ状況であっても、
1,200万円 - (1,200万円×50%) = 600万円 → 課税される
ということで、当期の所得の50%までしか相殺不可能なんです。

ただし前期の△1,000万円は、当期600万円使った残り400万円が来期以後に繰り越していくので、トータルの税金は変わらない可能性が高いです。将来の所得と相殺しきれないくらいのマイナスがある場合には、話が別になりますが。。。


⑥その他 税額控除
 特に資本金が3000万円以下の会社(青色申告)については、一定の資産を取得した場合に、取得価額の数パーセントの税金が控除できる制度などの税額控除の制度が複数あります。


2.資本金等の額から欠損填補の額をマイナスして計算するものによる主な税メリット

①外形標準課税 資本割
 外形標準課税の適用がある会社の場合、資本割の税額が減少します。
そもそも資本金1億円以下にすれば外形標準課税の適用がないので、資本割はかからないです。しかし、何らかの事情で資本金を1億円超にしておかないといけない会社であれば、欠損填補して税メリットを出すことができます。影響額は上記の1①をご参照ください。

②法人県民税・市民税
 法人県民税・市民税の均等割の額が減少します。

「なんだ均等割かよ」と、経営者の方は思うかもしれません。福岡では資本金等の額1000万円以下・従業員50人以下であれば均等割は、県税21,000円、市民税50,000円です。

しかしながら、均等割は所得に関係なく、人的・物的設備がある事業所があれば課税される税で、その額は都道府県・市町村ごとに異なります(一定の範囲内)。全国に事業所があるような会社の負担額は相当な金額になります。

例)資本金等の額2億円の場合 福岡市本社50人超
 ・福岡県の均等割 136,500円
 ・福岡市の均等割 480,000円
ざっくり、全国に10拠点同じように支店があるとすると、
 136,500円 + 480,000円 = 616,500円
 616,500円 × 10 = 6,165,000円
とかなりの負担になります。

こちらの税額は「資本金等の額」と「従業者数」で変わるため、資本金等の額を一定額以下にすることで税メリットが発生します。
参考までに、興味ある方は福岡県・福岡市の下記サイトをご確認ください。

ということで、第2回は具体的な税メリットについて書いてみました。
第3回はスタートアップと大企業の減資による税メリットへのアプローチの違いについて触れていきます。

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