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「仕事が長続きせず、自分が情けない。不眠気味でつらい」との悩みにお応えしました(後編)

このnoteの相談室は、僧侶で、自死相談のNPO代表であり、テラエナジーの代表取締役であるぼく(竹本)が、皆さまの些細な悩みや、誰にも言えないような苦しみにお応えできればと思っています。

というのも、ぼく自身、かなりこじらせながら、道に迷い続けてきました。そんなこじらせ系の先輩として、考えてきたことや救われた経験のサンプルをもとに、皆さまの苦悩が少しでも和らぐような、モノの見方や考え方をお話できれば!と願っています。

今回は、前回お寄せいただいた相談について、回答の続きです。お悩みの内容はこちらです。

大学卒業して就職はしたものの長続きせず仕事を転々としています。4年前からは派遣を転々としています。もう10社は超えました。今年に入って意気揚々と就いた派遣仕事ですが、どうにもうまくいかず、半年間での契約が終われば、それで更新しないつもりです。

自分が情けないです。最近は不眠気味です。

IT系の仕事を転々としてきました。一般的にうつ病になる方が多い業界と言われています。元々心身の弱い私には向いていなかったのかなと今さら思ったりします。他に興味ある仕事もないですし経験もないですが。

悩みすぎてどうにかなりそうです。路頭に迷いそうです。自分に失望しています。ただただ、心身の安定と平穏な生活を送りたいだけです。

前回、はじめて寄せられた相談は匿名希望とのことでしたのでAさんと呼ばせていただき、不眠気味とのことでしたので、その対策として心身を整える方法について提案させていただきました。まずは心身を整えることが最重要です!体勢が整わないと好ましい循環も起こりませんから。

前回の記事はこちら。

今回は、以下の点についてお伝えしたいと思います。
*前回の予告では「考え方のクセ」としましたが「認識の傾向」という表現がピッタリくるなと思い直し変更しました。

Aさん自身の認識の傾向を知る

お仕事が長続きしない背景について想像してみます。今のお仕事は「意気揚々と就いた」と仰っていますから、就く時点で認識していた仕事内容は、Aさんにとって納得のいくものだったと思います。それが「どうにもうまくいかず」ということですから、実際に業務をしていく中で、最初にイメージしていた仕事内容や自分自身の働きぶりから、徐々にズレていったのではないでしょうか。そして「自分が情けないです」と仰っていますから、うまくいっていない原因は自分にあるとご自身を責めておられるのでしょう。

一度、今のお仕事を受けた時から今に至るまで、どの様な認識と気持ちの変化があったのかを振り返ってみることで、ご自身の認識の傾向を見つめてみてはいかがでしょうか。もしかすると、うまくいかなくなったきっかけが見つかるかも知れません。ここを自分なりに見つける事ができれば、しんどくならない働き方が見えてきたり、嫌なことや苦手なことをかわすことができるようになります。振り返ってみるポイントをあげてみますので、良かったら一緒に思い返してみてください。

まず、半年前に就業した時から今に至るまで、仕事内容はどうでしたか?

最初に提示された内容と実際の業務とにズレはなかったでしょうか。もしかすると途中から追加の仕事を指示されたり、就業時に説明された以上に負荷の大きい仕事を任せられたりしなかったでしょうか。ここがズレていると、だんだんときつくなってきます。最初は新たに頑張ろうと意気込んでいますので、少々の無理はききます。ところが予想以上に負荷のかかる仕事が続くとだんだんと体力を奪われ、集中力も落ちてきます。そして作業効率が落ちてきて、同じ業務でも余計に時間もかかってしまい、さらに仕事の負荷が上がってしまいます。疲れがたまった状態で、また次の仕事をこなさねばならず、自転車操業の状態になりいよいよ追いつめられてしまいます。

また、就労の条件や報酬はいかがでしたか?

どれだけ望んだ仕事であっても、就労の条件に納得がいかない、自分のはたらきに報酬が見合っていないと感じると前向きに仕事をすることができなくなってしまいます。

お仕事の人間関係はいかがだったでしょうか?

みんなすべからく、周囲の人と環境に大なり小なり影響を受けます。元気な時であれば、少々嫌なことがあってもいなすことができます。しかし、疲れがたまってくるとちょっとした言葉や態度に傷付けられてしまいます。また、職場の人間関係が希薄だと、成果に対するリアクションが薄くて不安になったり、相談相手がおらず孤独を感じてしまいます。反対に濃すぎても、プライベートまで浸食されたり、価値観を押し付けられたように感じてしまいます。多くの場合、人間関係により苦しくなる様に思います。

IT系の仕事ということですから、リモートワークが中心なのでしょうか。先日、IT企業の経営者とお話しする機会がありました。その際、一つのプロジェクトをすると平均して10%ほどのスタッフがうつ病を患うので、何とかしなければならないと仰っていて、割合の高さに驚きました。IT系のお仕事は、特にリモートワークだと、部屋に籠って独りでの作業が多いため孤独になり易く、集中して長時間の作業になるので夜中まで業務をすることが多いとの事でした。Aさんが「一般的にうつ病になる方が多い業界」と仰る通りですね。そもそも、追い込まれやすい職種なのですから、よけいに働く環境への工夫が必要ですね。

認識の仕方をコントロールする

認識の仕方をコントロールするためのポイントは二つあると思います。

一つ目は、Aさんがいま苦しんでいることは、けっしてAさんだけのせいではない、という認識です。

今の状況になっている背景には、Aさんが積み重ねてきた生き方の傾向に加えて、周囲を取り巻く様々な人やものとの関係性が必ず影響しています。前回にも触れましたが、仏教ではこのことを因縁生起といいます。この世界のありとあらゆる物事は、因と縁によって生じ起こっているのだという真理です。

二つ目は、自分や他者に対する期待値を下げ、なる様にしかならない、という認識です。

仏教では苦しみの原因を分析して大きく八つに分け四苦八苦と表現します。その中の一つに「求不得苦」といわれる苦しみがあります。「求める事や物を得ることが出来ない苦しみ」という意味です。「~して欲しい」「~であるべき」という思いが強いと、裏切られる事が多くなり、それだけ「求不得苦」が生じてきます。

特に「自分に失望しています」という状態はとても苦しいですね。自分で自分を責める状態からはなかなか抜け出しにくいものです。「自分→自分」と攻撃の矢印を自分で自分に向けていると、自分の頭の中でぐるぐると責め続ける事ができてしまいます。一度、自分への期待値を「環境が整えばうまくできるし、環境が悪ければうまくやれない」といった程度に調整していただくことをお勧めします。そうして、自分の能力ではなく、今の環境に課題があるのだと矢印の方向を外に向けるようにクセ付けてください。

これからへの希望

結局のところ、自分の人生を生きるのは自分でしかありません。他人の考え方や振る舞いを変えようと思っても、それぞれの思いで生きていますから、コントロールしたり変化させることはとても難しいものです。反対に、すぐにでも変える事ができるのは、やはり自分自身です。だからこそ、まずは日々のちょっとした生活と認識の習慣づけに取り組んでみていただきたいと思います。

少しでも具体的に動けば、必ず、変化が訪れます。まずは呼吸法や入浴などで心身の状態を整えて、頭の中に余白を作るようにしてください。そして、余裕が出てきたら、次に認識の仕方をコントロールしていただきたいと思います。

兎にも角にも、まずはAさんご自身の心と身体を労わっていただきたいと思います。たとえば、毎日、夜寝る時と朝目が覚めた時に「ほんま自分、よう頑張ってるわ」(もちろん、関西弁でなくとも、ご自分の話し言葉でOKです)と声に出して言ってみるだけでも、ずいぶんと気が楽になるはずです。自分を責める気持ちがでてきたら、両腕で自分をぎゅっと抱きしめてあげてください。自分で自分の頭を撫でてあげてください。

少しでもAさんのおかれている状況が好転して、心身の安定と平穏な生活ができることを心より願っています。

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それでは、ご相談をお待ちしております。

竹本 了悟(たけもと りょうご)
奈良県西照寺住職。生きる意味を求め、防衛大学校を卒業後、海上自衛隊に入隊するが、道に迷い退官。改めて、生きる意味を求め、龍谷大学大学院で救済論(救いとは何か、どうすれば救われるか)について研究。その際に浄土真宗本願寺派の僧侶となる。その後、浄土真宗本願寺派総合研究所の研究員として、宗教者の役割をテーマとして実践的に研究し、2010年に「自死の苦悩を抱える方の心の居場所づくり」をする京都自死・自殺相談センター(愛称:Sotto)を設立、代表を務めている。2018年、研究所を退職、電力事業で「温かなつながりをつむぐ」TERA Energy株式会社を4人の僧侶で起業、代表取締役に就任。

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