53歳教習所日記 その6

リバース編

*路上教習も8コマ終わり、やっと折り返しに来た。今日は路上ではなく教習所内で方向変換と縦列駐車を2時間かけて教わる。
*レバーを初めてリバースに入れるまで足掛け4か月、実に長い時間がかかった。
*配車券に教官の名前が書いており、合わせて教官に番号がふってある。その番号の棚に自分の教習原簿を入れ待機するのだが、いつもは80番台の教官がほとんどだった、しかしなんと1時限目はNO.1、2時限目はNO.2とふってある。4か月でとうとうボスキャラと出会えるのだなと少しワクワクする
*始業の合図が鳴り、教官たちがゾロゾロ出てきたのだが、NO.1は予想通りおじい様であった。
*ボスキャラに会ったのに何故か私は脱力し、急におじい(敬称略)に甘える孫のように小走りで教習車へと向かった。
*まず後部座席に乗り、おじいの見事な車庫入れの教授を受ける。
おじいの後頭部を眺めていたら幼少の記憶が蘇り、AMラジオからあのねのねの番組が聞こえてきた。気がした。
*「さあ、ゆっくりでいいからやってごらん。」と言われ「うん!」と答えそうになる。
*「はい、いいよー。」と言われたとき、この緊急事態宣言のなか、変異株だの言われている真っ只中で、自分の孫くらいの生徒達と密室で向き合っているおじいの身体が心配になった。
*終業のチャイムが鳴り、おじいに深々とお辞儀をして校舎に戻ると4.5人の生徒達が私を睨んでそそくさと携帯に目を戻した。「なんだ?」と思いながらも、無事ハンコを貰ったので気にもせず原簿をNO.2の棚に納めて2時限目の待機に入る。
*NO.2は浅井慎平似の軽やかなおじさまで、教え方も軽やかで、ついこちらも口がほころび、「縦列は難しかですねー」と笑いながら返してルームミラー見たら己に武田鉄矢が宿っていた。
*やはり自分53歳になっても現役の大先輩に会うとつい甘えたくなってしまうものなんだと苦笑いで2時限目も無事終わった。
*さあ帰ろうと校舎に戻るとまた何人かの生徒がジロジロ私をみてそそくさと携帯に目を戻した。「そんなにおっさんが珍しいか」と気にもせず用足しにトイレに入って鏡を見て理解した。
*バックや幅寄せで何度も何度も横後ろを見ていたせいで、車内天井に何度も頭をこすって静電気で頭頂部が威嚇する孔雀のように見事に反り立っていた。サリーちゃんのパパが宿った。
*サリーちゃんのパパがおじいや浅井慎平に甘えていたのかと思うと誰もいないトイレで私は声を上げて笑った。

一句
ワイシャツの 背に点々の あおっぱな

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