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53歳教習所日記その5

路上編
*歩行者も自転車も後続車も一つのチームなんだと願い、闘将リーチマイケルを己に宿す。

*初めての路上が17:00からで、この季節を恨むほど真っ暗であった

*一様に教習車の点検を教示頂いたあと、教官の運転で離れた民家の駐車場に連れていかれる。

*そこでこれから大海原に乗り込む心得を説かれたのだが、脱走するなら今しかないと桜のジャージを脱ぎかける

*しかしグレる暇もないほど教官が何か一生懸命話しかけている
ので桜の胸章を握りしめ、ピッチにもどる。

*さあ!いざ路上へ!という駐車場の出口で犬を連れた婆さんとしばしにらみ合う。

*「前輪でその犬巻き込むぞ!」とつい暴力的になるが、ウインカー音と己の鼓動がシンクロするほど冷静にブレーキを傾ける。

*「大丈夫そうですね、行きましょう!」という教官の声に促され、処女航海の船出の瞬間を婆さんと犬に見送ってもらう

*とにかく前を行く車の尾灯を頼りに付いていく。

*予想以上に対向車のライトが眩しく、目を細め、車線を注視する

*いつしかリーチマイケルから五木ひろしが己に宿る。

*優先道路進入時も目を細め、冷静に無灯火のチャリを五木ひろしで見定め、見送る。

*路駐してる車に思わず「死ね!」と暴言を吐きたくなるが、五木ひろしでこらえる。

*後ろに張り付いている原チャリのおっさんをいつ左側からすり抜けてくるかルームミラー越しに五木ひろしで注視する。

*なんでもない直進でふいにビブラートの効いた大声を出したくなる

*教習所に帰ると飛行場の夜のターミナルのようで帰ってきた感が溢れ出す。

*「はい、お疲れ様でした!」という教官の言葉に、五木ひろしで深々とお辞儀をする。

*やはり路上になるといくら闘将を呼び寄せても無駄であることを知った

*路上では願ってもオールフォーワン、ワンフォーオールが現実的には難しく、情もあれば裏切りもある演歌の世界であった。

一句
ハンドルに 赤青黄色 月明り

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