ジョージア工科大のCS修士に合格するまで(動機編)
2023年8月よりジョージア工科大学のコンピューターサイエンス(以下CS)修士に進学する。どのような経緯で進学を志し、入学後何を学びたいのかについて書きたい。入学後、大変な時期が訪れたり、入学を後悔してしまった時などに、初心を思い出すためにも、記憶が新鮮なうちに書き留めておきたい。
アメリカ大学院への進学の動機
より高度な技術を求めて
現在の仕事では、大量のデータを処理する際のパフォーマンス低下、メモリリーク、ネットワークの通信障害など、技術的な問題に日常的に直面する。技術的な理解が不十分であっても、時間をかけて試行錯誤を繰り返すことで問題を解決できることが多い。しかし、根本原因や解決方法をより直接的に特定したり、さらには課題を未然に防ぐ設計をするためには、体系的で深い知識が必要だと感じている。
また、これまで約3年半のソフトウェアエンジニアとしてのキャリアを積んできたが、現時点ではこれといった専門分野がない。今後の、特に海外就職を想定したキャリアを考えると、自分を差別化できる専門分野が必要だと感じている。大学院でのカリキュラムを通じて、深掘りしたい分野を見つけ、深いレベルまで知識と技術を習得していきたい。
アメリカの就労ビザのため
大学院に進学しなくても、資格試験やMOOCなど、技術的知識を習得し、その知識を証明するための手段は多く存在する。それでも、色々と負担の大きい大学院を選択した理由は、将来申請予定のアメリカの就労ビザの申請で有利な状況を作るためだ。
私は将来的にアメリカで働くことを希望しているが、そのためにはH1Bビザなどの就労ビザが必要だ。このビザ申請においては、自分の専門職と学位が一致していることが重要な要素となる。また、アメリカの大学院の修士号を持っている場合、抽選の当選確率を上げることができる。私はCSの学位を一切持っていないため、アメリカの大学院のCS修士号を取得することでビザ申請に有利な状況を作りたいと考えている。
なぜオンラインコースなのか
アメリカの大学院で修士号を取るためには、アメリカ現地の大学にフルタイムで通う方法もある。また、現地の大学に通った場合、OPTという制度で労働が許可される。その制度を活用して現地の企業でインターンシップをし、卒業後に就職する企業を見つけることが比較的再現性高くアメリカで職を見つけるルートと耳にすることが多い。一方で、オンラインコースの場合、OPTを利用することができないというデメリットがある。
ただし、アメリカでの生活費とフルタイムの学費を賄える貯金は当然なく、働きつつ通えて、比較的費用も安いオンラインの大学院に絞って検討した。
また、少なくともジョージア工科大学に関しては、オンラインの学位とオンキャンパスの学位に違いはない。学位に「オンライン」などの表記もないという説明もあり、そのことで不都合になる可能性は極めて低いと判断した。
ジョージア工科大学を選んだ理由
次に述べるような理由で、ジョージア工科大学は非常に魅力的であった。あまりに魅力的であったため、他に迷うことなく出願校をジョージア工科大学に絞った。仮に入学が許可されなければ再度出願する予定で考えていた。
充実したカリキュラム
ジョージア工科大学は、以下の5つの幅広い分野のSpecializationを提供している。
Computational Perception & Robotics
Computing Systems
Human-Computer Interaction
Interactive Intelligence
Machine Learning
ちなみに、Human-Computer Interactionは最近オンライン向けに解放されたようで、状況に合わせて日々内容が改善されているように感じる。
また、個人的に興味がある分野の授業を一覧化し、学びたい内容の授業がカバーされていることが確認できた。(全授業の一覧はこちら)
オペレーティングシステムと分散システム:
CS 6200: Introduction to Operating Systems
CS 6210: Advanced Operating Systems
CS 6211: System Design for Cloud Computing
CS 7210: Distributed Computing
ネットワークとセキュリティ:
CS 6035: Introduction to Information Security
CS 6250: Computer Networks
CS 6260: Applied Cryptography
CS 6262: Network Security
CS 6263: Intro to Cyber Physical Systems Security
CS 6264: Information Security Lab - System and Network Defenses
CS 6265: Information Security Lab
CS 6238: Secure Computer Systems
AIと機械学習:
CS 6601: Artificial Intelligence
CS 6603: AI, Ethics, and Society
CS 7632: Game AI
CS 7637: Knowledge-Based Artificial Intelligence - Cognitive Systems
CS 7638: Artificial Intelligence for Robotics
CS 7641: Machine Learning
CS 7642: Reinforcement Learning
CS 7643: Deep Learning
CS 7646: Machine Learning for Trading
CS 7650: Natural Language Processing
大学のレベル
海外でビザ取得を目指す者にとって、世界大学ランキングで順位の高い大学を卒業していることは何かと有利に働くことが多いように思う。アメリカではないが、例えばイギリスには世界ランキング50位以内の大学の卒業生向けの「High Potential Individual」というビザが存在する。
そのため、可能な限り順位の高い大学を目指したいと思っていたが、ジョージア工科大学はその点でも評価が高い。(イギリスのHigh Potential Visaは今年の順位では対象外のようだが、オランダのResidence permit for orientation yearは利用できるように見える。)
THE世界大学ランキング2023では38位
QS World University Rankings by Subject 2023: Computer Science and Information Systemsでは28位
学費の安さ
ジョージア工科大学のOMSCSは、破格の安さだ。ほとんどの学生のプログラムの総費用は$6,500未満と言われている。授業料だけで計算すると$5,400($180 * 30 credit hours)だ。
この費用を、例えば、10 Best Online Master’s in Computer Scienceという記事に紹介されているプログラム5位までの費用と比較した場合、圧倒的にジョージア工科大学が安い。
イリノイ大学: $21,440 (授業料のみ)
スタンフォード大学: $1,400 * 45 units = $63,000 (授業料のみ)
ボストン大学: $33,460–$35,140 (授業料とその他の諸費用の範囲)
ミネソタ大学: $1,539 * 31 units = $47,709 (授業料のみ)
日本の国立大学院と比較したとしても、まだ安い。
文部科学省から出されている国立大学等の授業料その他の費用に関する省令によると、以下の費用を標準として国立大学法人が定めると記載されている。
授業料の年額: 520,800円
入学料: 282,000円
検定料: 3,000円
標準に定められた金額を前提に2年で卒業する場合、1,353,600円(2023年5月6日のレート、1ドル134.84 円で換算すると約$10,038)必要になる。日本の中でも安いイメージのあった国立大学院より大幅に安いことにはとても驚いたし、ジョージア工科大学を選ぶ大きな決め手となった。
入学後の意気込み
入学後はCSのどちらかというと基礎的?(Network, OS, Algorithm, Securityなど)な分野から学び直したいと考えている。そのため、現時点ではその辺りの科目が必修および選択科目である、Computing Systemsを専攻する予定だ。また、自由科目を活用して、AIや機械学習の講座も履修していきたい。
もう一つの目標として、他の生徒とのコネクションを作りたいと考えている。特に北米圏はリファラル文化と言われており、リファラルをもらえるような関係性を築けた場合、今後アメリカで転職活動をする際に有益なことは言うまでもない。積極的に日本人以外の人も所属するグループに飛び込み、その中で周囲から認められるぐらいの貢献をする。この辺りにもチャレンジしていきたい。
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