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「ハイキュー!!ニッポン」イヤーになりそうな🏐VNL2024からパリ五輪へ

(写真FIVB)

オリンピック・イヤーとなる今年、パリ五輪直前のVNL(バレーボール・ネーションズ・リーグ)が終わりました。そして、一刻と夏のパリ・オリンピックが迫ってきています。その前哨戦とも言えるのでしょうか、代表チーム事情によっては、探り合いやデーター収集、調整、セレクション・・・などそのねらいや目的は様々だと思いますが、結果、今大会のネーションズ・リーグでは、日本代表が男女そろって銀メダル(第2位)となりました。とても嬉しい結果ですよね!これで、世界のバレーボールでは一番のビッグ・タイトルである、オリンピックでの日本代表チームの活躍がますます楽しみです!


「6.22」ニッポンバレーのサタデー・ナイト・フィーバー🏐

 まずは、6月22日(土)、23日(日)は、両日ともテレビ中継(BS放送ですが)も男子→女子と連続して行われ、存分にバレーボール中継を楽しんだ人も多かったのではないでしょうか?
 特に、22日(土)には、まず日本代表男子チームが、東京五輪金メダルのフランス代表と対戦。セットカウント3-2、しかも先に2セット先取されてからの逆転で勝利しました。そのあとに続いて、今度は日本代表女子が、世界ランク1位のブラジル代表と対戦。これまたフルセットで勝利し、こちらはVNL初の決勝進出を決めました。

(男子)強豪国と互角に戦い世界ランク2位に

 いつしか、日本の男子バレーは、「チャレンジャーから強豪へ」と階段を駆け上がっていきました。現在の日本代表男子は、ポーランド、フランス、イタリア、アメリカ、スロベニア、アルゼンチン・・・数年前には圧倒されていたどのチームにも互角な戦いからさらに上の強いバレーを実現しつつあるように思います。
 特に注目しているのが、①ゲーム展開、と ②選手起用です。

 まず、ゲーム展開についてですが、日本代表男子チームは、終始リードをキープする展開だけではなく、フルセットになっても最後は勝ち切る展開や、相手に数点のリードを許しても追いつき逆転する展開など、多様なゲームシナリオを見せていることが、強さの表れだと思っています。

 もう一つは、選手起用。数年前まではどうしても石川選手や西田選手ばかりに注目と期待が集中していましたが、今は選手層が厚いというか、選手が入れかわっても世界を相手に堂々たる戦いぶりを見せています。
 選手個人の能力が上がっているというだけではなく、今年のネーションズ・リーグのようにオリンピック前哨戦でもあり調整のタームでもある長丁場の中では、選手起用によって、コンディション調整や選手個々の経験値の底上げなど・・・様々な仕掛けを設定することがとても重要であることが明らかになったと思います。
 この「誰がコートに立っても戦えるバレー」というものの実現も、日本代表男子の今日の強さの象徴の一つではないでしょうか?


(女子)準決勝でブラジル代表を破って決勝進出を決めた日本代表女子

  バレーボール女子日本代表は、2012年のロンドン五輪で銅メダル(3位)や2023年のワールドカップで銅メダル(3位)などがありましたが、国際大会の決勝に進出したのは、本当に久しぶりのことではないでしょうか?特に、対戦する機会が多いブラジル代表とは、時には圧倒されることもあり、時には接戦を惜しくも逃したりと、悔しい試合運びが多かったですが、今年のネーションズ・リーグでは見事に撃破。「決勝」という舞台に進むことができました。私は、個人的には、戦術や技術といったポイント以上に「決勝に進んだ」ということや「決勝で戦った」という事実や経験を得たことが、何よりも大きな収穫だったと思います。


「頂の景色」を見た日本代表男女

 4年に一度やってくるオリンピックイヤー。特にバレーボール競技では、世界では一番のビッグタイトルがオリンピックになります。そのような中、2024年の今年、バレーボール日本代表は、男女ともに、大会初の決勝進出とともに銀メダルを獲得。日本代表男子にいたっては、1977年W杯バレー以来47年ぶりの主要国際大会の銀メダル(2位)となったわけです。

 男女にかかわらず、「バレーボールというものが選手たちのもの」になったとき、つまりは極限まで選手たちの主体性と創造性が発揮される状態になるとチーム力は最大になるんだということを改めて感じました。
 指導者の言葉に過度に依存せず、数字などのデーターに過度に縛られることなく、与えられたパターンの遂行だけに捕らわれることなく、コート上に立つ選手たちが、自分(たち)のセンスを最大限に発揮し、チームとしてシナジーを起こして戦うバレーボール。今年のネーションズ・リーグで観たエキサイティングな試合展開や、ため息の出るような強いバレーは、極限の主体性の発揮、創意工夫の集積、拮抗した神経戦・・・そういったところからきているのだと思います。


日本代表女子チームへの期待

 個人的には、これまではどうしても日本代表女子の活躍に注目が集まり、日本の男子バレーへの期待を込めた発信が多かったわけですが、今や男子が世界を席巻するようになっています。
 個人的には、日本の女子バレーにはまだまだ伸びしろがたくさんあって、もっともっと戦えるようになってほしいという期待をもっています。
 古賀選手は、言うまでもなく、世界のトッププレイヤー。得点数の多さだけではない、バックアタックの破壊力やリーダーシップ面でもチームの精神的支柱となる存在です。
 宮部選手は、セット終盤でも1stテンポのクイックで得点をたたき出せるし、世界の強豪チームのミドルからの攻撃を使わせないサーブ力もあります。
 チームとしては、ブロックが以前よりも改善されてきた兆しが感じられ、効果的なブロックタッチから攻め返す局面が増えてきたように思えました。

 女子のバレーボールは、男子バレーの戦術などを後追いするプロセスがあると言われることもありますが、現状、なかなか女子バレーボールは男子のような戦術的な変遷の流れに乗り切っていないあたりが興味深いです。
 女子は、男子にくらべてアタックのシンクロ度合が低くて、レフト偏重傾向があるということもあり、日本も戦えている状況になりやすい側面があるものの、そんな女子バレーであっても、
・サーブを起点としたマルチターン的な展開
・ゾーンマークとリードブロックを導入したブロックの組織化
・ブロックを起点としたトータルディフェンス

などというものはその導入の如何は、チームの強さと相関があるように思えます。
 そうなってくると、やはり男子バレーのエッセンスをさらに取り入れていくことで優位に立てる余地が生まれると思います。
・MBの得点力アップ
・バックアタックの得点力アップ
・シンクロした数的優位を発揮するオフェンス
・対中央攻撃におけるブロック(簡単に1枚にしない)
 
そして以前から言われている、日本のバレーボールの「大型化」もテーマの一つに挙げられると思います。この昔から言われている課題は、日本の中に大型(高身長)選手が数的にいないというより、大きい選手にオールラウンドなスキルの育成をしていないのが原因だと確信的に考えています。
 もはや時代は、「大型の選手は真ん中にどーんと構えて、クイックとブロックをがんばれば、あとは守備ではリベロが代わってくれる・・・」そんな時代はとっくに終わっているわけです。ブロックは当然のこと、スパイクもクイックも高いセットも打てる、守備もできる、サーブも得点源となり得る。それらを実現するためには、長身選手を集めて集中的な指導をするよりも、「オールラウンドな育成指導」をすべての子どもたち・選手たちに植え付けていくことが、実は大型化を実現していくことにつながると考えます。


バレーボール男子日本代表の躍進は、それでも急速なものだったと思う

 かくして、日本のバレーボールが大きな注目を浴びるようになり、今やオリンピックの注目の的になっているまでに盛り上がっています。

 特に男子バレーボールの活躍が注目を集めているわけですが、その立役者のひとりが、監督であるフィリップ・ブランであり、日本代表のコーチに就任してからオリンピック2大会目、彼が日本のバレーボールに関わって8年間の間に、大躍進を果たしたことになり、メディアでもこの8年間を「長い時間をかけて」と評するわけですが、私は8年間でバレーボールというものが大きくイノベートされたというのは、決して「長い間」「時間をかけて」とは思っていなくて、極めて急速に、短期間で成しているものだと考えています。このことに、私はむしろ日本のバレーボールの潜在能力を感じざるを得ません。
 ですから、ブランの手腕はもちろんのこととして、彼一人だけではない様々な要因が、それこそシンクロし、シナジーを起こして今日に至っていると思います。
 一方で、この「短期間で成している」という視点に立ったとき、若干の懸念があるのは、まずはみんなで諸手を挙げてのブラン賞賛で沸き過ぎてはいないかということ。ともすると、これは依存になってはいないかということ。これまでの強化成功の本質を見失ってはいけないように思います。加えて、ブランが退任したあとに、また「逆戻り」する可能性も否定できないということも言えると思います。
 ブラン氏だけではなく、その流れを決断し日本の各方面に働きかけた中垣内氏もいて、そんな中垣内氏にインスピレーションを与えた柳田選手などのパイオニア的な選手がいて・・・そして表には出にくいアナリストやコーチやトレーナーがいたりと、やはり大事なのは、「記録」と「分析」。日本のバレーボール界としての「テクニカルレポート」を本気で取り組まないと、「三日天下」がいつ起きてもおかしくないと思います。


バレーボール男子は、紙一重の戦いの領域へ・・・

 どうしても応援する我らが日本代表のバレーボールの強さに注目と期待が集まるわけですが、気が付けば他にも新興勢力として台頭してきたチームがいくつもあります。特に男子バレーは混沌としていて、日本代表男子はメダル獲得の期待だけで盛り上がれる状況でもありません。きっと、今年のパリ五輪のバレーボール競技は、どの試合を観てもエキサイティングでハイレベルな試合になるだろうと予測できます。

 とにかく、バレーボールのゲームチェンジャーは「サーブとブロックとその因果関係」。
 きっとパリ五輪で観ることができるであろう数々の熱戦のターニングポイントの多くが、あの場面のサーブ、あの局面でのブロック・・・というものがキーポイントになること間違いなしです。注目していきましょう!

今年2024年はニッポン・バレーボール・イヤーに

 というわけで、大注目のパリ五輪のバレーボールの試合が間もなく始まります。
 今や、バレーボール日本代表は、世界の強豪チームから一目置かれる存在となっています。

 日本代表チームが、オリンピックでメダルを獲得できるのでしょうか?または私たちの知る由もない、何かすごい展開やドラマが待っているのでしょうか?
 日本はバレーボールがもともとさかんな国です。
 そして、今や世界中の人々から愛される「ハイキュー!!」の国です。
 さらに、日本代表男子はまさに「リアル・ハイキュー!!」とも言えるプレーで人々を魅了しています。
 
 四年に一度の真の世界一決定戦。日本のバレーボールの歴史に残る瞬間なのか、伝説になる瞬間なのか。それをみなさんと一緒に見届けたいものです。

(2024年)