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『スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け』守破離させない三部作

「守破離」
最初は教わった型を守り、次に型を破り、そして型から離れて自由になる。
お茶ジェダイ・千利休の、茶道での経験からできた言葉。

スター・ウォーズ7,8,9は
先人が作ったスター・ウォーズを再現したエピソード7『フォースの覚醒』
スター・ウォーズの定番を崩しにいったエピソード8『最後のジェダイ』

と来たので、エピソード9は、過去作っぽさに囚われず新しいスター・ウォーズを創る予感がしていた。

しかし、実際公開された『スカイウォーカーの夜明け』は、そうではなかった。


※以下、映画『スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け』と
『クレヨンしんちゃん 爆盛!カンフーボーイズ~拉麺大乱~』の【ネタバレ】↓↓↓


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よみがえる老害

映画の冒頭のテロップで、旧シリーズの黒幕・パルパティーン皇帝が復活したことが、突然明かされた。
7,8での戦いも全て、彼の影響下だったことになった。

8で「お前は、既出キャラの子供ではない。ぽっと出の血筋だ」と突き付けられた主人公レイは、パルパティーンの孫だと明かされた。

8で悪のトップに立ったカイロ・レン。でも、パルパティーンが現れたことで、改心してレイと共闘するというダース・ベイダーと同じゴールに向けて走ることになった。

「守・破」と来て「離」できるかと思ったら、「離、させないよ」、という先人の呪いと戦う映画だった。


スター・ウォーズを脱ぎ捨てるカイロ・レン

8で自分のボスを殺したカイロ・レンだが、パルパティーンが出現し、表向きは彼の言うことを聞くことに。
先人は図々しくよみがえり、カイロ・レンをトップに立たせてはくれない。

レイを闇落ちさせて仲間にしたいカイロ・レン。しかし、彼はレイと戦っている最中に、母レイアの死を感じる。
ああ。ついに、元々認めてほしかった人は全員、旅立ってしまった。

初代主人公世代からのプレッシャーと偏見のせいで悪になったカイロ・レン。
彼はそもそも、正義になりたかったわけでも悪になりたかったわけでもなく、血筋ではなく自分を認めてほしかった。

今、自分を認めてほしいと思える相手は、レイ。
カイロ・レンであることをやめたベン・ソロは、パルパティーンと戦うレイを助けに行く。

そのときのベンは、今までの服も脱ぎ捨てるが、ジェダイっぽい服を着るでもなく、イケメン俳優の部屋着みたいな恰好で駆けつける。

ジェダイでもダークサイドでもなく、ただのベン・ソロ
スカイウォーカーという主人公属性の家に生まれた彼が、スカイウォーカーの血をひかない自由人な父、ハン・ソロに似た仕草を見せる。

伝統のど真ん中に生まれた人が、最後には自由になった。

伝統に飛び込むレイ

8で「私の親は…名もない人」とぽっと出コンプレックスが発動したレイだが、今度は悪の皇帝の孫だと発覚。

それなら自分も悪に堕ちるのでは…と怖がる。という、ダース・ベイダーが父だと知ったときのルークと同じ悩みを持つことになる。
既存のスター・ウォーズの枠に囚われてしまった。

しかし、彼女を修行してくれたレイアは、レイが皇帝の孫だと知った上で受け入れていたのだと判明する。
自分自身が感じる悪い可能性よりも、他人が期待して見てくれていることを大切にしよう

そして最後にレイは、「レイ・スカイウォーカー」を名乗る。自分が何者であるかは、自分で選ぶ。
彼女は、名跡を襲名してスター・ウォーズの伝統を守ることを、自分の意思で選んだ。

「クレヨンしんちゃん」で理解する最終決戦

レイと皇帝の最終決戦。皇帝は「怒りに任せてわしを斬れば、お前が新しい女帝だ」と言い放つ。
もしレイが憎しみに駆られたら、その時点で皇帝を倒してもバッドエンドというルールに。

そこに部屋着のベンが到着し、二人で共闘。のち、ベンが吹っ飛ばされ、レイが過去のジェダイたちの声を聞き、先人へのリスペクトを込めて皇帝を倒す。

なぜ、この倒し方ならセーフなのか?これだと憎しみを込めて倒したことにはならないのか?

その疑問が、『クレヨンしんちゃん 爆盛!カンフーボーイズ~拉麺大乱~』でちょっと解決した。

カンフーを教わるしんのすけ達は、姉弟子のランちゃんと一緒に修行に励む。
悪の組織を倒すため、しんのすけとランちゃんは最終奥義を手に入れようとする。しかし、奥義を受け継ぐのは、生真面目に正義を志すランではなく、マイペースなしんのすけに決定。
それでもランは、敵を倒したい一心で、奥義を勝手に会得してしまう。

強い力を手に入れたランは、敵のボスを倒したあとも悪を根絶やしにすることをやめない。ランは、少しでも正しくないものを叩き潰すようになる。

正義で町を牛耳るランを元に戻すため、しんのすけ達はフォークダンスを踊る。
ランちゃんの正義をやっつけにきました
正義が厳しすぎるネット社会に刺さるおはなしだった。

レイは、ランちゃんになりかけていたんだ。絶対にこいつが嫌い、という怒りのこもった正義は、結局暴力になる。

そこに、ベンが来た。先人の遺産に縛られる悩みを共感してあげられるベンが、一緒に戦う。
理解者を手に入れたレイ。彼女も、一度は悪に堕ちたベンを認めることで、寛容になった。

それが、スター・ウォーズのエピソード1からの課題「光と闇にバランスをもたらす」こと。
闇=悪ではない。善人の中にも闇はある。だから、闇もある程度受け入れる。

そんなハイブリッドな新生ジェダイのレイだから、怒りではなく誇りをパルパティーンにぶつけて倒すことができた。


エピソード9までの3つの三部作を並べてみると、
1~3が、平和だった銀河が混乱して、支配されていく話。
4~6が、支配された銀河を、反乱によって取り戻す話。
7~9は、戦いの余韻でまだバイ~ンって揺れてる銀河を落ち着かせる話。

レイやベンは、そんな時代に生きながら、後処理で終わることなく先人が到達しなかった生き方をやってみせた。

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