暗号探偵クラブ(2)
こんにちは、俺です。文くんです。
いつもは自分の部屋に置いてあるパソコンを、台所のテーブルまで持ってきて開いたところだった。スーが不思議なことを言い出すものだから、口に入れて食べようとしていたクッキー的なお菓子を、くわえたまま止まる。
「文くん、一番上の紹介文見てよ、20時間コースって書いてあるでしょ?もう、半分以上終わってるの、わかる?」
Code.org - Accelerated Intro to CS Course
https://studio.code.org/s/20-hour
よく見ると、レッスンは全部で20あった。ちなみに。俺の進行状況は現在13の2を示していた。
「文くん、もう2時間以上ぶっ続けだよ。やっと休憩してくれたと思ってついてきたのに、まだ平気でやる気なの?ノンストップじゃない」
「あー、確かにさっき、初めてつまづいたから、小腹に気づいたのかも」
くわえままのお菓子を腹におさめてから答えた。さっきのスーの言葉を聞き返す。
「さっき、俺が『学校の授業も、これぐらい面白くて簡単だったら良かったのに』って言ったら『他の子には大変』的なこと、スー言ったよね」
「言ったよ」
「どういうこと?学校の勉強、こんなに面白くもないし簡単でもないよ」
「面白いか面白くないかは主観だから、文くんが面白くない授業を面白いと思ってる人もいるよね。文くんはそもそもゲームが好きだし、このサイトはゲームが好きな人が楽しめるように作ってあるとは思う。でも、簡単だとは思わない」
「簡単・・・じゃない?」
「ピアノもそうだけど、やったことのある人とない人の差はあるよ」
プログラミングをやったことの、あるかないかの差。俺、今までたいしたものを完成できたこともないのに。
「文くん、夢中だったね。これ、良くできてる。ちゃんと少しずつ難しくなるように組み立てられてるもの」
テーブルに飛び乗ったスーがパソコンの画面をのぞき込む。俺の部屋では普段から机に乗らせているけれど、台所のテーブルは食卓でもあるので、そっとスーの体を持ち上げて俺のひざの上ににおろした。
「ゲーミフィケーションって言葉、知ってる?」
「ゲーミ・・・?知らない」
「やらなきゃいけないこと、習得しないといけない技術を、ゲームみたいな要素を入れて、楽しくできるようになっちゃおう!っていうのが、ゲーミフィケーション。ゲーム化って言ってもいい」
「ゲームするみたいに勉強できるなら最高だよね」
「ウィンドウズのパソコン買うと、トランプゲームが最初から入ってるの知ってる?」
「ソリティアとかな!」
「うん、あれ、マウス操作をゲームで覚えちゃおうって魂胆なの、気づいた?」
「え・・・?こんたん・・・?」
「こういうのを、ゲーミフィケーションっていうんだよ。タイピングだって真面目に我慢して練習することもできるけど、タイピングゲームで遊んだ方が絶対にいい。できていることで下がるハードルはたくさんある」
「なるほどなぁ・・・ゲーミフィケーションって、すごい俺に合ってそう」
「うんうん。自分に合った身につけ方や勉強法を知っておくのは大切だね」
勉強=苦手、嫌いってずっと思ってたけど、ゲームに夢中になるみたいに勉強できるなら・・・そんなうまい話がっていう気持ちと、そうだったらいいのになぁって気持ちが交錯した。
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