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暗号探偵クラブ(10)

こんにちは、俺です。文くんです。
色は、みんなが同じ色で見えてるわけではないらしい。同じ場所で同じものを見ているのに、その色が違うだなんて、不思議なようなロマンティックなような。つか、今まで、そんなの疑ったこともなかったぞ。

「文くんのために、ここまでの画像とデータサイズを一度まとめるよ。元は同じ画像、縦10px(ピクセル)×横20px(ピクセル)を保存する場合ね」

スーが画面上部のメニューから何かをクリックし、画面の中のモザイクのような画像の見た目が変化する。

「まずは2階調化ね。黒か白かの二択で画像データを表示する」

画像1

「ONが1でOFFが0の10×20の200ビットで表現できる。8ビットで1バイトだから、25バイトになるっていうのは大丈夫かな」

「うん。200バイトを8で割ったんだよね」

画像2

「よし。次はグレースケールで保存してみるよ。1つの点(ドット)を1バイトで表現、つまり点の明るさを0~255の数字で表すよ。そうすると200バイトのデータになるっていうのも大丈夫だね」

「うん、大丈夫。点の数と一緒だもんね」

画像3

「はい、フルカラー。1つの点(ドット)をRGB(アールジービー)赤緑青の光の強さをそれぞれ保存するから、1つの点を保存するのに3バイト、200×3で600バイトのデータになる」

「画像データって大きいんだね」

「そうなの。でも、そうすると、パソコンの中がすぐ保存データでいっぱいになっちゃうから、データを圧縮して保存する技術があるのね」

「圧縮?」

「うん。使わない傘を開いたままで家の中に置かないよね。畳んでおきたいよね。使うときだけ広げて、保存するときは小さくしておくのが圧縮」

「ああ、それは便利だ」

広げた傘が家の中にたくさんあったら、邪魔だろうなと想像する。

「圧縮にもいろいろ種類があって、画像データだとjpg(ジェイペグ)png(ピング)gif(ジフ)あたりがよく使われるよ」

「俺、jpgって見たことあるよ。スマホで撮った写真をパソコンで見ると、最後にその名前が入ってる」

「そうなの、その最後に付いているのが拡張子っていうんだ。実際には圧縮して保存してるから、そんなに大きなデータにならないようにしているんだけど、本当は画像って馬鹿正直に保存すると大きいよっていう話」

「画像よりも、音楽や動画はもっとでかいっていうじゃん?みんな、こんな風に全部『0と1』のビットで保存されてて、しかもでっかいから圧縮されてるってことなんだよね」

「そうだよ、圧縮形式が拡張子になってる。コンピュータは拡張子を見て『よし、これは画像でこんな風に圧縮してあるんだな』って判断する」

「元に戻すのにも暗号を解くための鍵がいる・・・ってこと?」

傘の畳み方も、折り畳みだったりビニール傘だったりでやり方が違うよね。圧縮にもそういう種類があるよって感じなのかな。
俺が次の疑問を口に出す前に、スーがマウスから前足を離すと、俺のひざの上から床へ飛び降りた。

「よし!じゃ、私の話はここまで。文くん、宿題の続き頑張ってね」

立てた尻尾をゆらしながら、スーは優雅に台所から出て行った。
その後姿を眺めながら、俺はお菓子を大袋からもう1つ取り出して口にくわえる。テーブル椅子の上であぐらをかいて伸びをした。

「さて、もう少し頑張りますか」

コンピュータの中身は、俺が思ってるよりずっと謎が多くて、データも謎だらけだ。プログラミングと同じで、コンピュータでできることは、全部に理由があるんだろう。
途中だった課題の続きを始めて、そこから1時間ちょっとで最後まで課題は終わったけれど、明日すぐに終わった報告はしないでも大丈夫かな。足並みあわせよう、そんなことを考えていた。

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