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オンライン授業のユニバーサルデザイン♯13 「ハイブリッドは、ご多忙申し上げます」

 第10回でも少し書きましたが、コロナが収束した後にもオンライン授業のノウハウを活用していこうという気運が高まっています。その一つがハイブリッド授業の積極的導入です。同一の授業を対面とオンラインのどちらでも受講できるようにすると、なんらかの事情で対面授業に参加できない人の学びも保障されます。移動が困難な障害のある人や、不登校などの子どもは自宅にて授業に参加することができますし、遠隔地に住んでいて通学までの移動時間がかかる人には有効なソリューションとなり得ます。

 一方で、担当教員の負担という側面からみるとハイブリッド授業には課題が多く、まだまだ実現にはハードルが高いと思われます。
 まずは機材の準備という面での負担が大きいこと。完全オンラインとは違い、受講者のいる教室で配信が可能になるようにカメラやLANを設定するのは様々な制約があり大変です。もともと配信用にセットアップされた機材が揃っている教室でない限り、配信用機材は授業者が準備しなければなりません。長いコードが必要になるなど、研究室から配信していた場合とは異なる機材が必要になります。

 特に気をつけたいのは音声の問題です。教室に備え付けの音響機材を使い、教室内の音声を集音してオンラインに配信するのは避けた方が良いです。教師の声以外の様々な音も拾いますし、第5回でも説明した通り反響した音になりますので聴こえにくくなります。教室備付の音響機材とオンライン配信を接続するか、教室用とオンライン用にそれぞれのマイクを使うことになります。

 さらに授業中には、対面とオンラインそれぞれの受講者に気を配らなければなりません。対面受講者に向かって話しながら無事に配信できているか常に確認しつつ、対面受講者とオンライン受講者それぞれの反応を掴む必要があります。もちろん、手伝ってくれる人がいればオンライン対応を一任することもできますが、その場合、授業のねらいや授業展開などについての綿密な打ち合わせが必要になります。

 また難しいのは受講者同士の相互作用を促す仕組みづくりです。対面同士やオンライン同士では難しくありませんが、対面とオンライン受講者を交流させるのは至難の業です。受講者が少ない場合(10名くらい)ならば、遠隔会議用のスピーカーホンを使って対面・オンライン全体で話し合うことは可能ですが、人数が多い場合(30名以上)はスピーカーホンで一度に話し合うことは難しいでしょう。

 そのような苦労をしてハイブリッド授業を実現したとしても、オンラインの快適さに慣れてしまうと、対面での受講希望者が少なくなり、結果として“ほぼオンライン授業”になってしまうこともあります。私が今年度試行したハイブリッド授業では、50名の受講者のうち対面が4名で残り46名がオンラインという回がありました。大学教員の中には「ハイブリッドにしたら対面を選んだ学生がゼロで、誰もいない広い教室で独りで話した」という話も伝わってきます。

 ハイブリッド授業へのニーズは確かにあると思いますが、実施に係るコストと得られるベネフィットという観点からはまだまだ課題が多いと思います。withコロナの生活が続く中で、ハイブリッド授業のあり方を検討することが急務となっているのです。

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