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日本のポップスはフィラデルフィアソウルをどのように消化したのか?

はじめに、

今回は以下の記事を出発点にして、日本のポップスがフィラデルフィアソウルから影響を受けた一例を紹介します。

フィラデルフィアソウルとはソウルに豪華なストリングスを加えた聞き心地の良いう音楽で70年代に流行したものです。上の記事を要約すると、その影響は筒美京平が作曲し岩崎宏美が歌った『センチメンタル』(1975)に見られ、さらに2013年に大ヒットしたAKB48の『恋するフォーチュンクッキー』にもそれが受け継がれているとのことです。

まず、3曲を聴き比べて見ましょう。

確かに似た雰囲気を持っており、特にストリングスのアレンジは分かりやすく似ています。それでは、以下でさらにこの3曲を深掘りして音楽的な特徴を探っていきましょう。

The Tummps "Penguin at the Big Apple/Zing Went the Strings of My Heart"(1975/02/14)

以下のサイトに基づいてコード進行を度数で表しました。
https://www.doctoruke.com/zing.pdf

A:I VIm IIm VI IIm V7 IV IV6 I VI II7 IIm V7 V7+5
B:I VIm IIm VI IIm V7 IV IV6 I VIm II7 V7 I
C:IIm7 V7 I IIm7 V7 I IV#m7 VII7 IIIm VI7 VIm7 II7 IIm7 V7+5 

ダイアトニックコードセカンダリードミナントのIImとノンダイアトニックコードのVI7を組み合わせたソウルらしいおしゃれな進行です。

岩崎宏美『センチメンタル』(1975/10/25) 詞:阿久悠 曲:筒美京平

同じく以下のサイトに基づいてコード進行を度数で表記しました。

A:I VIm IIm IIIm IV IIm V7 I VIm IIm V7
B:VIm IIIm VIm IIIm IV IIm V7
C:I VIm I VIm IIm VII V7sus4 V7 I VIm IIm V7

コード進行はThe Tummpsのものとさほど変わりません。特徴は、昭和歌謡に共通して見られるものですが、メロディがメジャーとマイナーでメリハリがある点でしょう。つまり、フィラデルフィアソウルに歌謡曲のメロディを乗せた歌と言えるでしょう。

AKB 48 『恋するフォーチュンクッキー』(2013)詞:秋元康 曲:伊藤心太郎

こちらも以下にコード進行を度数で表しました。上の2曲と比べるとシンプルな作りになっています。また、同じマイナーコードでもセブンスを使うことによって目立たなくなっています。さらに、亀田誠治が純情進行と呼ぶカノン進行(Ⅰ→Ⅴ→Ⅵm→Ⅲm→Ⅳ→Ⅰ→Ⅳ→Ⅴ)をI→V/VII→VIm→IIIm/V→IV→I/III→IIm→Vと変形させた進行がCに表されているサビに使われています。純情進行はカノン進行と異なりルートが緩やかに降っていく滑らかな順次進行となっています。つまり、J-Popの王道を行きながら古き良きフィラデルフィアソウルの雰囲気を漂わせているのです。

A:I VIm I VIm IV V I VIm7
B:VM7 V IIIm7 VIm7 x2 II7 II7 Vsus4 V 
C:I V/VII VIm V IVM7 IIIm IIm (-> IV/V V)

おわりに、

この記事では歌謡曲とJ-Popにフィラデルフィアソウルのコード進行やストリングスが組み込まれた一例を見ました。


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