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共用玄関の使い方

スペインはスイカが安い。1玉買っても日本円で300円ぐらいだ。だから時々重いのを承知で丸ごと買う。ちょっとお金持ちになった気分が味わえる。筆ペンや煎茶は手に入らないけど、スイカやトマトは安い。

ところで、私たちの住んでいるピソにも、日本と同じように管理組合や理事会なるものが一応あり、規則らしきものが存在する。例えば、共用玄関内にあるパティオでのボール遊びや自転車に乗るのは禁止、とか。でも、どっちもみんなよくやっているから、あってないような規則なのかもしれない。

パティオにはレモンの木が3本ある。レモンが鈴なりに実り、実に黄色らしい黄色が青空にきらきらと輝く様子は、いかにもアンダルシアという感じがする。

国内封鎖になる前、外出した時に2本のレモンの木のそばに何か緑色のものが生えているのが目に入った。雑草でもなさそうで、誰かが花か何かを植えたのかなぐらいに思っていた。

外出禁止になってからは、朝、窓を開けたときに、ときどき隣のおじさんがパティオで水やりをしているのが見えた。国内封鎖でみんながぴりぴりしているのにもかかわらず、共用スペースの植物に水をやるその心の余裕が素晴らしいなぁと感動し、次は私もやろうと思っていた。

警戒事態宣言が解除になり、こないだ散歩帰りに見たら、レモンの木は変わらず元気だったけど、それ以上に存在感を増しているものがあった。それは、レモンの木の横にどんと植わっているスイカだった。この間から何やら花が咲いているなと思っていたけれど、まさかスイカを玄関で育てているとは思わなかった。
そして、もう1本のレモンの木の横にあったのは玉ねぎだった。

おじさんが一生懸命水やりしていたのはこのためだったのかと合点がいった。共用玄関を家庭菜園として使うなんて、なるほどうまいこと考えたなぁと感心し、もうこのくらいのことでは驚かなくなってしまった。

確か来年か再来年は私たちに理事長がまわってくると言われているけれど、何をどうとらえていいのかわからないでいる。でも、きっと、理事会がどうとか、ピソの景観がどうとか、大体のことはどうでもいいのだ。とりあえず、ご飯が食べられてみんな元気だったらそれでいい。

今日もレモンの木は元気だ。その横でときどき何か育ててみるのもありなのだとしたら、いつか梅など植えたらどうだろうと思っている。


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