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展覧会『やまと絵』着物ファンにはお馴染みの鳥獣戯画を観に行ってみた。

「鳥獣戯画はお好きですか?」

着物スタイリスト・石田節子さんの呉服店で働くりかこ店長は、着物には希少な動物柄の愛好家だ。私も、墨絵風の鳥獣戯画の染め帯を薦めて貰ったことがある。柄のルーツは京都・高山寺にある絵巻物だ。上野の博物館で、本物が見られるというので、ネットでチケット予約(土日祝)して、見に行ってきた。

こちらの記事にあるように、宮中で描かれたやまと絵の系譜を追う展覧会だ。二百数十点の作品が展示されていて、お目当ての『鳥獣戯画』はその中の一作品。甲・乙・丙・丁の巻ごと、四期に展示を分けられていて、見ている時間は動物園のパンダよりも短いが、しっかり、記憶に焼きついたのは『芸能きわみ堂』で、日本舞踊協会の長唄『鳥獣戯画』の放送を見たからだ。絵巻物の中でも、ススキの穂を振り回して追い駆けっこする兎や、がっぷり四つで相撲をとるカエルは、実におおらかで、楽しげだった。

だけれど、私。鳥獣戯画よりも古い、病いをテーマにした巻物に笑ってしまった。なぜかというと「夜眠れない」という病があったの。睡眠の質は大事よね!

さてさて。

人気の『源氏物語』の展示は、光源氏が元カノの乗る牛車と辻でガチンコする場面(「関屋」。ちなみに、24日から「柏木ニ」、11/7から「横笛」、11/21から「夕霧」の展示に変わるそうです)。確かに素晴らしいが、恥ずかしいかな、元の物語を詳しく知らないので、感動できない。別な作品ではイヤフォンガイドの夏木マリさんに「この時代には、目に眼球が描かれるようになり、表情も豊かになりました」と言われてみても、爪の先サイズの小さな顔は混んでいて、じっくり、見る隙がない。ガラス越し、オペラグラスを使って鑑賞するひとを、幾人も見かけた。

実に、私は慣れない。本館の地下に展示されている渡来ものの陶磁器の方に感銘を受けたくらい、慣れていない。帰りに、眼鏡屋さんに寄ってこうかなと思うくらい、慣れない。

それでも、着物で行ったので、あちらこちらで親切にして貰って、面白かった。特に、少女漫画みたいだわぁと感激したのは、イヤフォンガイドの受付のお姉さん。着物で、髪をアップにしている私が博物館のレンタル🎧に困惑していると、お姉さん、両手でイヤフォン🎧を持ち上げて、私の頭にパカッとはめてくれた。なんて、可愛いのだろう。

少数ではあるが、着物で来ている人は、ほとんどがアンティーク派だった。思えば着付けを始めてから、歌舞伎座にも、国立劇場にも、お寺の菊まつりも骨董市にも、迎える側の何割か、和服姿がいた。この日は絵巻物の姫君というわけだ。私達は着物を使いこなす遊びに、興じているのだ。

そんなこんなの興奮冷めやらず、帰宅後は暴飲暴食。恐るべし、やまと絵パワー。こうやって、触れてきた作品が放つ何かが、河口の砂地のように蓄積されていって、オーラの強い人間になるのかなぁと考えた。次はローマ展に行ってみよう!


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