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講師のプロフェッショナル、石井モルナ先生

社会人教育の先生として

TENTOの講師になる前から、講師を仕事にしていたそうですね。

「研修センターで半導体の講師をしていました。販社(半導体を販売する会社)の新入社員の方や、一般の方にたいして、『コンピュータとはこういうしくみで動いています』『半導体とはこういう役割を担っています』というような研修をする仕事です。……でも、自分には向いていなかったと感じています」

というのは?

「この時は講師のお仕事だけを依頼されていたので。この時間で、この内容を教えてくださいという形で依頼されました。その他の決定権はありません。それに、生徒になる方はみな社会人ですから、学ぶ姿勢ができているんです。自分がなぜそこにいるのか、その講義を受けるのはどうしてか、目的もよくわかっています。だから、生徒さんのパーソナリティを知る必要はほとんどないし、そのマインドを探る必要もありません。講師の役割は、決まった内容を正確に『教えること』のみです。もちろん自分の中で色々な知識が整理ができていないとできない、難しいお仕事ですし、失敗も沢山しましたしね。続けているうちに自分が得意なのはそこではないと感じていました」

「多分向いていないこの仕事を続けるのはどうなんだろうか? と思っていたときに……」

TENTOサイトのモルナ先生紹介記事

半導体の先生からTENTOの先生へ

TENTOのワークショップに参加されたのですね。

「結構ショックでした」

ショックだった?

「当たり前ではあるのですが、TENTOにきていた子どもたちはほんとうにいろいろで……。まず、授業に参加するマインドがバラバラです。プログラミングがしたくて来てくれる子ももちろんいますが、まだあまり興味が持てなくて、お家の人に勧められて来てくれる子もいるんです。それぞれが別の事情を持っているわけですから、社会人の方のように同じように教えることはできません。それと、社会人はすくなくとも表面上は全員が同じ知識を持っていることを前提にカリキュラムが組まれます。でも子どもは……わけてもプログラミングは、個人差がすごく大きいんです。教える必要がないほどよく知っている子もいれば、マウスも握ったことさえない子だっています。当然、ふたりに同じことを教えることはできません。求められているゴールさえわからない状況で、はじめはとてもじゃないけど自分には無理だ…とショックでしたね。でも通っているうちに、なんというかコンピュータの知識やプログラミングのテクニックを一方的に教えることが大事なのではなく、子供たちが自分なりの成功や失敗を繰り返しながら、なにかを身につけてゆく、そんな場をつくることが求められているのかなと思うようになり、それならやってみたい! と思いました」

「理想的には、それぞれの子にそれぞれの先生がついて、その子に合ったカリキュラムを提供するのが望ましいんでしょうけど、スケジュールの問題や子供たちの興味も変化しますので、現実的に難しいことが多いんです。では、どうすべきなのか、どうあるべきなのか。いつも考えています。逆にいうと、それがやり甲斐になっているんです。社会人研修みたいに、決まったことがあって、それをただ与えていくのではなく、先生や子供たちと一緒に考えてつくっていくことが大切になってきますから」

よい教室を運営するために

モルナ先生は、じっさいに生徒と対面して授業をするよりも、それぞれの学習に適応した環境を提供することが多いようですね。

「この子にはどんな環境がいいのか。先生としては誰が適当なのか。先生も常任の方ばかりではないですから、そのスケジュールを管理するのも重要な仕事になっています。役職名は決まってないですけど、教室運営全般を見て、総合的に判断するのが私の仕事です」

授業ごとにメモも作成されているそうですね。

「今はその日気がついたことを書いた日誌みたいなものですけど、いずれ学びに来ている子全員の歩みを把握できるようなものにして、皆と共有していきたいと思っています。いつも考えているのは、『教え方はこうあるべきだ』みたいな固定観念……決めごとにこだわってはいけないということです。子どもたちはそれぞれ異なるストーリーを抱えているわけですから、各人に応じたものを提供すべきだと考えています。そこには正解がないわけですからすごく難しいんですけれど、それがこの仕事のおもしろいところでもあるんです」

モルナ先生の出演する動画



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