KANOさん

限りなく子どもに近い男 鹿又広祐(カノマタコウスケ)と申します。 日々あらゆる面で私は…

KANOさん

限りなく子どもに近い男 鹿又広祐(カノマタコウスケ)と申します。 日々あらゆる面で私は真面目に遊ぶように働いています。 どうぞよろしく。http://tentento.com/

マガジン

  • KANOさんの物語りさ

    KANOさんが物語りを書き、絵を描く。 いや絵を描いて、物語を書くか? (厳密には奥さんの描いた絵から聞こえてきた物語りを書き、ついでに絵も描き直したのさ)

  • KANOさんのひとり語りさ

    KANOさんがエッセイを書き、挿絵を描く。 ちょうどいいくらいの独り語りさ。

最近の記事

パンとゴハンと大きなカバン

僕は夢を見たんです。 少し小高い丘が段々に続く道を眺めていました。 丘一面が黄色に見える程たくさんのチューリップ畑です。 男が歩いてきました。背丈は僕と同じくらいの男。 顔はよく見えませんでしたがどうやら困り顔をしているようです。 男が近くを通る時、困った声の独り言が聞こえてきたからです。 「パンゴハン パンゴハン」ブツブツとそう言っています。 パンとゴハンで迷っているのかしら? よおく男の服装を見てみると身なりは整えた様子です。 ピカピカに磨いた革靴に、山高帽子と白いシャツ

    • それでも美味しくなってくれるという事

      この夏僕はコロナになった。その前にはインフルエンザも初めてなったし、娘からウィルス性の胃腸炎ももらった。今年は色々なった。 全てひどく辛かったのだが何故か「よしっ!」と拳を握る自分がいる。 その事実よりも得るものが多かったからだろうか? 昨年より始めた梅仕事が始まる時期にコロナ生活もスタートした。 梅雨の終わりの時期に下準備をして土用の丑の日を目指して、三段にジップロック分けし重ねた梅と他なんちゃらを毎日揉み、段を変えてまた重ねて冷蔵庫に戻す日々。この料理教室森田式の梅干しは

      • 映画を観るようにたんたんと今日

        猫の胴体を持った蛾がベランダに横たわっていた。 右の羽根の三分の一が折れ曲がっているように見える。 これは完全に人間界の見え方、考え方。目の前の生き物の体の部分、大人の男性の親指分位の大きさを支えられる程の羽根なのだから、雨風の激しいこの季節に現れたのだから、普段見ない大きさの蛾だから、と戸惑っている。体は猫のような滑らかな黄金色の毛並みで羽は荘厳な絨毯の見本のようで、この模様一つ一つが手作業で編み込まれているのか?と感心してしまう程の作りをしている。すっかり見惚れてしまうの

        • 川は僕が、水は猫が整えている

          玄関を出るとクワガタムシがいた。 昨日はショウリョウバッタがいた。 その前は妻がトカゲを見たらしい。 百日紅が見事に咲いて、娘の黄色い自転車は今は眠っている。 沢山のモノたちがぐっすりと眠りについているはずの夜、 僕は何度も何度も暑すぎて起きるのだが、はて?僕以外の全ては ぐっすり寝ている。どんなモノたちも。 私が気持ちよく寝続けるには穏やかな風が欲しいと思う。 水を飲みにリビングに行くと猫が喉をグルグル鳴らしながら 暗闇で横たわっている。 玄関まで続く廊下を微かに通る風を感

        パンとゴハンと大きなカバン

        マガジン

        • KANOさんの物語りさ
          1本
        • KANOさんのひとり語りさ
          6本

        記事

          おしゃべりたらず

           夏の暑い最中に、僕は思います。おしゃべりが足りない、と。 いくら話しても足りない。妻に朝少し時間をもらって話しても足りない。 しまいには「あなたとはうまく話せない」と言われる始末。悲しい。 まずおしゃべりについて、上手いとはなんぞや?意思疎通がとれることか? そうだとは思っていなかったから、そうならごめん。 打合せと称したおしゃべりの中で、話しながら問題を転がし両手で触れれる部分を満遍なく触る。全く解決しようとはしていない。違和感や触り心地だけで進む先を決めようとしているの

          おしゃべりたらず

          少年と夏とすべてのこと

          僕はサッカーが上手になりたい。 でもサッカーはそんなに好きじゃない。 やる事が他に思い当たらないからやる。 やる事がないと色んな奴らが話しかけてくるから。 壁の模様や、虫や、下駄箱の靴なんかはすごく話たがっている。 暑い夏は特にサッカーボールを蹴りに出かける。 やる事がないと便器に飲み込まれてしまうから。 家にいるとトイレの方から声が聞こえてくるから。 ひとりでいたくないから。暑い日差しの中喜んで走って出かける。 陽にやける自分からジリジリという音が聞こえる。 ツルツルと汗の

          少年と夏とすべてのこと

          すべて灰色

          急な雨に備えて窓の外ばかり見ている。 洗濯物を取り込むタイミングを見計らっているのだ。 夏の尻尾がそこらじゅうでとぐろを巻いている。 たまに立ち上がっては雲を膨らませて雨を降らしている。 そんなことがあるから外ばかり見ている。 そわそわしながらも退屈な僕は、庭の外壁の向こうを背伸びして 見てみたりしている。道の向こうにカラスが死んでいる。 ついばんでいた気配の木の実がコロリ横で寝ている。 少し考えた後、荷物を揃えて外に出ることにした。 少し先の空き地にスコップを抱えて妻と出か

          すべて灰色