ショートショート「プロのバナナ」
「今日こそ、結論を出そうじゃないか」
「懲りねえやつだな。俺の方が上手いに決まっている」
とある山の狐と狸は、どちらが上手に化けられるかいつも競っていた。熊に化け、兎やリスを怖がらせたり、大岩に化け、山道を塞いだり、いたずらばかりしていた。
「どっちが上手いか、山の主に決めてもらおう」
「勝った方が、化かしのプロだ。負けた方はアマチュアだ」
山には年老いた猿がおり、山の主と呼ばれていた。困った事があると、生き物達は山の主を訪ね、教えを乞うていた。
勝負の日。山の主が言った。
「わしがお題を出そう。まずは、カラス」
ふたりは見事にカラスに化け、ビューンと空を一周して見せた。
「お次は、松の木」
ふたりは立派な松の木に化け、松ぼっくりをポイポイ落とした。
「お次は、バナナ」
ふたりは美味しそうなバナナに化けた。
「さすがじゃ、どちらもプロじゃのう」
そう言うと、山の主は二本のバナナをペロリと食べた。
山はすっかり平和になったそうな。
(完)
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