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ママは気まぐれ

「ぐー、僕が思うに、このあとママは僕らにオヤツをくれるハズさ。だって、きのうもおとといもこのタイミングでオヤツをくれたからね」
「ぐーもそう思うわ。だからさっきからママのそばにベッタリとついていて離れない、ぐーなのであーる」
と、何やら、いぬうた市の、きゅん君と、ぐーちゃんが、
小声で、ひそひそと言い合っていますね。
今は、夕ご飯が終わってママは、
1階のダイニングルームのテーブルを囲んで、
くつろぎながら、テレビを観ています。
そのママの椅子に座った両脇には、がっちりと、
きゅん君と、ぐーちゃんがお座りをして控えております。
これは夕飯後によく見られる光景のひとつで、
おふたり、よくこのタイミングで、
ママからオヤツをもらえるのでしょう。
それが分かっているので、今日も今か今かと、
オヤツを待っているという、
このようなシチュエーションでありました。
しかし、今日はどうでしょうね。
先程からママはテレビに夢中で、両脇のおふたりに、
眼中ないような気配が漂っているのですが、
それでも我慢して、何とかオヤツにありつこうと、
ひたすらに待つ、きゅん君と、ぐーちゃんです。
しかし、そんな時、きゅん君に、
ふとイヤな予感がよぎりました。
「もしかしたら、今日はもらえないのかな。ママって気まぐれなところあるからなあ。きのう、おとといともらえても、だから今日も、とは考えが少し甘かったかも」
途端、急に、きゅん君が一転して弱気になると、
ぐーちゃんもその言葉で、とうとうしびれを、
切らしたようで、
「そうだったわ。ママって気まぐれさんだった!だとしたら、ぐー、今日はオヤツもらえないのね。ここまでがんばってきたのにー」
と、ガックシ顔に変わってしまいました。
「いや、ちょっと待て。ぐー。僕はたった今、気付いたことがある。何故、ママはオヤツをくれないのか?それは現在、テレビに夢中だからだ。したがってこのテレビ番組さえ終われば、ママは一段落して、僕らにオヤツをくれるのでは?」
と、きゅん君、何とか弱気から立ち直って、
このような新たな説を、ぐーちゃんに提示したのです。
この説に、ぐーちゃん、これぞとばかりに乗っかります。
「そうだわね!きゅん。きっとそうだわ。このテレビさんが終わった時が、ぐーがオヤツをもらえる時だわ!」
と、再び目がキラキラしてきた、ぐーちゃんです。
なもんで、おふたり、改めてママの両脇を陣取り、
大人しく、今やっているテレビ番組が、
終わるのを待ちます。
しかしここで更なる異変が起きました。
何ということでしょう。
きゅん君も、ぐーちゃんも、
ママと一緒にテレビを観ているうちに、
そのテレビ番組の面白さに引き込まれて、
気がつくと、ふたりもその番組に、
夢中になっていたのです。
したがって、オヤツをもらうという当初の目的も、
すっかり忘れてしまっていて、ママに負けず劣らず、
気まぐれだった、きゅん君と、
ぐーちゃんなのでありました。

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