テーブルの水がこぼれた
「あっ、冷たーい。こりゃ何だあ?あっ、これはもしかして雨じゃないかあ。雨だあー!雨が降ってきたぞー!」
と、おもむろに声を上げたのは、いぬうた市の、
きゅん君ですが、いやいや、今、きゅん君がいるのは、
ご自宅の中ですよね。
それも1階のダイニングルームにいらっしゃるではないですか。
家の中にいて雨がポツンと、きゅん君に当たったんですか?
2階ならまだ雨漏りとかも考えられますけど、
1階で雨に当たるなんてありえないですよ。
「そんなこと言われたって、当たったもんはしょうがないじゃないか。だったら僕は今、何に当たったとでもいうのかい?」
「それは、ぐーが代わってお答えしたいと思います。きゅんが当たったのは雨さんでなくて水滴さんでございまーす」
と、ぐーちゃんが言った通りでありまして、
きゅん君がいた場所は1階のダイニングルームの、
テーブルの下でして、それもちょうどテーブルのフチのところにおりまして、そこに飼い主が、
水が入ったコップをガタン!と倒したので、
水はテーブルの下にこぼれ、そこにいた、
きゅん君は見事水を浴びたということでありました。
「なるほど。あれはコップの水だったのか。いやあ、それにしても災難。災難。これからは飼い主がテーブルにいる時にはよほど気をつけないとな」
と、いかにも、これで一安心。これにて一件落着!とでも、
いったふうの、きゅん君に対して、
ぐーちゃんが苦言を呈しました。
「きゅん、この問題さんをそんなことで終わらせていいのかしら?ぐーはよくないと思う」
ぐーちゃんが何を言いたいか?よく分からない、
きゅん君は続けて聞きます。
「ぐー、それはどうゆう意味だい?」
ぐーちゃんが答えます。
「いいこと、きゅん。よく考えてみて。もしあのお水がお水でなくて、ギンギンに熱いお茶さんだったら、きゅんはどうなっていたの思うの?」
それを聞いた、きゅん君、実際に想像してみて、
一気に身の毛がよだちました。
「イヤなこというなあ。ぐーは。あんまり想像したくないけど、それはそれは大変なことになっていたと思うよ」
本当にイヤな顔で、きゅん君がそう言うと、
「そうでしょ。でもこれは充分あり得た、きゅんのもうひとつのお未来なんだからね。だからお水で良かったなんて思っちゃダメよ。たまたま、きゅんがお運が良かっただけなんだから、この落とし前さんはきっちりつけないと」
と、いつになく執拗に問題定義をする、ぐーちゃんですね。
これは、何か、ぐーちゃんもあったんでしょうか?
どうやら、あったみたいですね。
なので、ぐーちゃんは続けます。
「だからこれで終わらせてはダメよ。これが、ぐーだったら」
「ぐーだったら?」
「ぐーだったら、こうするわ!」
と、言うなり、ぐーちゃん、テーブルの椅子に座っている、
飼い主のスネをガブリ!と噛みました。
悲鳴を上げた飼い主、ぐーちゃんの復讐は、
これによって達成されたのでありました。
そうなんです。
テーブルの下にいて、こぼれた水を浴びたのは、
きゅん君だけでなく、ぐーちゃんもだったのです。
あっ、また飼い主の悲鳴が聞こえましたね。
これはもしや、きゅん君の復讐?
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