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日陰の雪の黒いかけら

いぬうた市では、先日、雪が降りました。
それも結構な量が積もりました。
しかし、それから数日が経ち、天気も良かったせいか、
今は日陰に若干の雪が残っている程度です。
そんな中、雪のかけらのひとつを、散歩の時に発見した、
きゅん君と、ぐーちゃんなのであります。
「まあ、雪さんのかけらさん、こんなとこにいらしたわね。ずいぶん皆さんとだいぶ離れたことにいらっしゃるわ」
最初にその雪のかけらを見つけたのは、
ぐーちゃんでした。
電柱などの周りに、雪かきで集められた場所とは、
いくぶん離れた所に、ぽつんと、それは落ちていました。
「本当だ。でもだいぶ黒くなってるね。きっと車の排気ガスを浴びたせいだな」
きゅん君の言う通り、その雪は黒く汚れていました。
しかし、ぐーちゃんはそれを汚れだとは捉えません。
「あら、いいことじゃない。黒いことは素晴らしいことよ。ぐー、雪さんを見直したわ。出来ればもっと黒くなると、よりキレイね」
この、ぐーちゃんの発言の真意は、ぐーちゃん自身が、
黒いわんこなので、どうやら黒いモノには、
垣根なくシンパシーを抱くからです。
そんなことがあった、その翌日、
ふたりはまた散歩で同じ道を通りました。
するとそこにはまだあるではありませんか。
きのう見かけた黒くすすけた雪のかけらが。
思わず、ぐーちゃんは感嘆の声をあげます。
「まあ、かけらさん、きのうより、より黒くなられて、よりキレイよー!」
そうなんです。
その雪のかけらはきのうよりも、もっと黒かったのです。
「全く、黒さんはいいわよねえー!かわいいし、かっこいいし、いいところしかないわ」
と、しきりと黒を褒め、
「もしかして、ぐーに憧れて、黒さんになろうとされているのかしら?それはとってもいいことよ。だって、黒さんって、ホント素晴らしいんですもの」
と、自分を含めて、黒を大絶賛する、ぐーちゃんです。
そしてその翌日も、またまた散歩で同じ道を通って、
またまたより黒くなった同じ雪のかけらと会って、
「ますます黒くなられて、その調子よ!がんばって!自信さん持ってね。あなた本当にキレイだから」
と、今度は激励する、ぐーちゃんです。
で、そしてそして、またまたまた次の日のこと。
その道を通ると、例の雪のかけらはありませんでした。
ぐーちゃんはきのうまであった、
雪のかけらの場所を見て言います。
「きっと、あの雪のかけらさん、とうとう真っ黒になられて、それが素晴らしくキレイだったから、どなたかに拾われたんだわ」と。
「よかったわ!真っ黒さんになられて。だって黒さんは素晴らしい色だから。ぜひお幸せになられてね」
と、笑顔で雪のかけらとお別れをした、
ぐーちゃんなのでありました。

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