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楽しいひな祭り

「当たりをつけましょ。ぼんやりと。お鼻で嗅ぎましょ。桃の場所ー」
なんて、先程から、ひな祭りの歌を、
何となくうる覚えで、歌っている、いぬうた市の、
きゅん君と、ぐーちゃんです。
何故、ひな祭りの歌を歌っているかというと、
ママに披露しようと思っているからで、
でも、ママには、たぶん、わんわん!
と吠えているようにしか、聞こえないので、
だから、そこは、うる覚えで、
歌詞が全然間違っていても、問題ないと思いますが、
それでも、ふたりは真剣に練習しているのでした。
では何故、そんな歌の練習をしてるかと、いうと、
今日は、3月3日の、ひな祭りの日なので、
きゅん君は、おだいりさま。
ぐーちゃんは、おひなさま。
のフリをして、ふたりならんで、すまし顔の姿を、
ママに披露しようとしているのでした。
「ママは女の子だから、本当は、おひなさまのお人形を飾りたいハズよ。でもどうやら、この家には、おひなさまの人形がないみたいだから、ぐーがおひなさまのお人形に扮して、ママを喜ばしてあげるの。だから、きゅんも協力しなさいね」
発端は、ぐーちゃんの、そんなママへの思いからでした。
きゅん君も、ママを喜ばせたい気持ちは、
ぐーちゃんと同じくらいありますから、
もちろん!と、このサプライズに参加することにして、
こうやって、ひな祭り当日、朝から歌の練習をして、
何となくの、おひなさま人形姿を、
披露しようとしているのでした。
きゅん君は、冠代わりに、頭に水飲み皿を乗せて、
雰囲気を出そうとがんばっています。
今、ママは2階で洗濯物を干していると思われるので、
それが終わったら、たぶん1階の、ふたりがいる、
ダイニングルームに入ってくることでしょう。
その、ママがドアをバタン!と開けたタイミングで、
ドアに向かって、並んでいる、きゅん君と、ぐーちゃんの、
かわいい、その、ひな人形姿を見て、まあ!
と、
ママをびっくりさせよう!
と、そうゆう、ふたりの作戦でありました。
しかし、予定は未定と言いますか、
段取り通りには上手くいかないもので、
なかなかママが1階に降りて来る様子がありません。
そのうち歌の練習にも飽きてしまって、
自然と歌うのを止めてしまいました。
それでも辛抱強く、ダイニングのドアに向かって、
並んで黙って座り続けている、ふたりです。
そんな時、きゅん君がポツリ言いました。
「ママ、なかなか来ないね。それにしても退屈だな。ヒマだ。ヒマ。これじゃ。ひな祭りじゃなくて、ヒマ祭りだよ。だから、ぐーは、おひなさまじゃなくて、おヒマさまだ」
ぐーちゃんも同じように、退屈を感じていましたが、
がんばって、ママのためを思って耐えていたのに、
よりによって、きゅん君から、こんなタイミングで、
こんなにつまらないダジャレを聞かされて、
ついに、キレてしまう、ぐーちゃんでした。
「誰が、おヒマさまですって!ちょっとはマジメにやりなさいよ!そうやってすぐに根を上げてマイっているんじゃないわよ!そんな、きゅんこそ、おだいりさまじゃなくて、おマイりさまだわ!」
と、ぐーちゃんもまたつまらないダジャレで返し、
きゅん君も「何だって!」と怒り返し、
すぐに、ふたり、口や足が出て、
そのタイミングでママが2階から降りて来て、
待望のダイニングルームのドアをバタン!と開けた時は、
ちょうど、おマイりさまと、おヒマさまの、
バトルの真っ最中でありました。

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