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おウチは大丈夫?

「そういえば、おウチは大丈夫かしら?今って思えば、飼い主ひとりだけなのよね」
と、こんな文言を、いぬうた市の、ぐーちゃんが、
ママと、きゅん君との楽しい楽しい散歩中に、
ふと、急に思って漏らしたのです。
すると、たちまち今まで楽しかった気分が、
するすると逃げるように、どこかに吹っ飛んでしまい、
顔がみるみると濁る、ぐーちゃんです。
というのも、きゅん君、ぐーちゃんの飼い主ときたら、
うかつを大きな大きなキャンバスに絵を描いたような、
人物ですから、飼い主ひとりで家にいたら、
何をしでかすか?何が起こってしまうか?
など、さまざまな不安要素が瞬時に、
ぐーちゃんの頭に思い浮かんで、
家のことが心配でたまらなくなってしまったのです。
「例えばよ、飼い主が玄関ドアさんを開けっぱなしにしたりして、泥棒さんが入りたい放題になってるとか?」
まず、1番に思い付いた、そんな不安を、
隣に並んで歩いている、きゅん君に漏らします。
「確かに。それは充分にありえる疑念だな。これはかなりヤバいかもしれない」
と、ぐーちゃんに同調する、きゅん君です。
それで、ぐーちゃんも頭の中が、
どんどん入られたていの思考になってきて、
「泥棒さんがおウチに入ったら、真っ先に取られてしまうモノは何かしら?もしかしたら、それは、ぐーの、お気に入りの、オモチャかも」
と、心配がつのるばかりです。
さりとて、今は散歩中で、現在地は家から、
だいぶ離れたところまで来てしまっているので、
すぐに戻る訳にもいかず、
「ぐーの、オモチャさんは今頃すでに泥棒さんの手の内にあるわ。ということは、きっともう二度と会えないのね。こんなことなら、お散歩前に、ちゃんと、サヨナラを言えばよかったわ」
と、後悔が嵐のように押し寄せてくる、ぐーちゃんです。
「あんなに素晴らしい嚼みごたえのあるオモチャさんにはもう出会えない。どうかお元気で。せめて泥棒さんに可愛がってもらって下さい」
と、思い込みがどんどん激しくなっていく、ぐーちゃんで、
そうこうしているうちに、散歩もすでに終わりを迎え、
やっとこさで帰宅した、きゅん君と、ぐーちゃんです。
しかしすでにふたり共、もう家には泥棒が入ったと、
思い込んでいるので、諦めムードが漂っていて、
「こんな泥棒に入られたあとのもぬけの空の家に帰って来ても、虚しいばかりだよ。果たして僕たちのご飯も残っているか?どうかも怪しいし」
と、首をうなだれる、きゅん君と、
「前略、ぐーのオモチャさん、お元気にしてますか?ぐーはなんとかやっています。オモチャさんがいなくなって寂しい日々ですが、でも大丈夫よ。ぐーのことは心配せずに、どうか泥棒さんとお元気にお暮らし下さい」
と、心の中で、オモチャに手紙を出した、ぐーちゃんです。
しかし、当たり前といえば当たり前ですが、
泥棒が入っていることはなく、何も盗まれていることもなく、
ちゃんと、ぐーちゃんお気に入りのオモチャは、
家にあって、それを見かけて、
「わー!オモチャさん!帰っていらっしゃって下さったのね!もしや泥棒さんのところがお気に召さなかったのかしら?いずれにしても、ぐー、嬉しいわあ。ありがとう!オモチャさん」
と、何はともあれ、オモチャと感動の再会を果たした、
ぐーちゃんでありました。

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