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泳げないふたり

「くわっ!くわっ!くわっ!くわっ!くわっ!だ、ぐー」
「分かったわ。きゅん。くわくわくわくわくわくわく!って、あら、いつの間にか、わくわくになっちゃったわ?何故かしら?ぐー、不思議ー。でも本当にわくわくさんしてきたわね。楽しいー!ガチョウさんのマネー」
と、先程から、いぬうた市の、きゅん君と、
ぐーちゃんが何故かしら、
鳥の鳴きマネをしているみたいですね。
それも、ガチョウさんのマネですか?
何で、きゅん君、急にガチョウのマネなんかを?
「ガチョウじゃないよ。アヒルだよ!ぐー、間違えるんじゃないよ。このぬいぐるみはアヒルなんだから、そのアヒルのマネを僕が、ぐーに教えていたんだよ」
なるほど。そうゆうことですか。
きゅん君が言った、このぬいぐるみというのは、
わんずボックスという、犬グッズがいろいろ入った宅配便で、
の中に入っていたひとつでして、
ママが毎月注文してくれる中に必ず入っているのが、
それが毎回その季節季節に沿った、
オモチャのぬいぐるみでして、
今回がこのアヒルだった訳です。
「そうゆうこと」
と、何故か上から目線の、きゅん君です。
でも今回は何でアヒルなんですかね?
毎回その季節に沿ったモノなんですよね?
アヒルって、5月を何か象徴してましたっけ?
「それについてはママが説明してくれたわ。5月さんになって、急に暖かくなって、お水遊びが楽しい季節さんになってきたからですって」
と、ママからの又聞きで答えてくれた、ぐーちゃんです。
水遊びですか?それでアヒルねえ。
ちょっと無理くりなような気もしますが、
そこはいいとしましょうか。
「ただアヒルとは僕らとあんまり接点ないからなあ。今後どう接していいか?イマイチ分からないよ」
それはどうゆう意味ですか?きゅん君。
「えっ、それはねえ」っと、ごにょごにょ口に濁す、
きゅん君を見かねて、代わりに、ぐーちゃんが答えます。
「それは、ぐーたちがお水遊びが苦手さんだからよ。きゅん、それを恥ずかしいことだと思って言いたくないのよ。本当、きゅんたらバカみたい」
そう言って、ぐーちゃん、呆れた顔で、
隣の、きゅん君を見ます。
「仕方ないだろ。本当は泳いだりしたいけど、何せ、水のヤツ、あの手この手で僕を怖がらせるんだから」
と、うつむく、きゅん君に、
ぐーちゃんがこんな提案をしました。
「本当は、きゅん、泳ぎたいのね。だったらこのアヒルさんに泳ぎを教えてもらえばいいんじゃない?」
いや、それはどうですかね。ぐーちゃん。
いくらアヒルだからと言って、ぬいぐるみですからね。
泳ぎたくても手足をバタバタ出来ませんし。
それを聞いた、きゅん君。
暗い表情一転、目をパッと輝かせました。
「何だ!君!泳げないの!何だ!何だ!アヒルのくせに。いや、これは失礼。アヒルだからってみんながみんな泳ぐことないよ。たまには泳げないアヒルがいたっていいじゃないか。いやはや、君とは話が合いそうだ。2階のベッドの上で、ゆっくり語り合おうではないか」
そう言って、そのアヒルのぬいぐるみを口にくわえて、
とことこと2階に行ってしまいました。
急な展開にボーゼンとして、
きゅん君の後ろ姿を見送る、ぐーちゃんです。
きゅん君、よかったですね。
いい友達ができて。
もうちょっとしたら、きゅん君とアヒル、ベッドの上で、
一緒に水遊びする夢でも見るのではないでしょうか。

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